主力の数だけでは、3vs3で同じ―――ですが、雑魚の数を入れれば、圧倒的に、あちら側が有利でした。
その比率―――100vs3・・・
けれど、一番、気にしなければならないのは、未だ、向こう側は、真の黒幕を控えたまま・・・
つまり、依然イリス達は、不利な状況のままだったのです。
第七十四話;真打ち登場!
そう、状況は、誰の目から見ても「不利」そのものでした。
「四面皆楚歌ス」の、喩え通り、前後左右の四方を囲み、汚い口調で罵り、イリス達の士気を一気に殺ごうとしたのです。
けれど―――・・・
蓮:フ・・・そうした手に出ずば、拙者達を倒せまい―――と?
甘い、甘い考えよ!
他者・他流派と死合わせること、百有余に余り、その様な手立てで拙者に勝てた者など、一人とて存ぜぬ!
なぜならば、拙者が、今、ここに立っている事こそが、何よりの証しにござろう!!
市:さすがは・・・蓮也殿にございます。
彼らの言葉を逆手にとり、呪詛返しをなさいますとは―――ならば、この私とて、全力を尽くさねばなりますまい。
一見すれば、異国の剣士に、盲目の女―――
けれども、彼らこそは、あのリリアですら一目を置く、強者でもあったのです。
その彼らの、獅子奮迅の活躍を見るに至り、イリスの内にも、また再び、闘志が湧きあがってきました。
そしてその闘気は、次第に「あるモノ」に作用して、き始めたのです。
そう、今現在では、イリス自身が所有する、史上最強の剣―――・・・
イ:蓮也さん・・・市子さん・・・
私―――なにしてるんだろう・・・この国の人間ではない彼らが、頑張っていると云うのに、この国の王族である私が、何も出来ないでいるなんて・・・
それに、決意したじゃない、もう―――迷わない・・・って・・・!
蓮:(!)イリス殿―――終に、その剣を抜きまするか!
市:なんと神々しい―――それに、人を傷つけ、殺める為の道具であるはずなのに・・・こんなにも心休まる感覚は、初めてにございます。
それに・・・どうやら―――
シ:ぬぅおおっ―――! な・・・なんなのだ、この感覚は!!
ク:イリス・・・お前が放っていると云うのか!!
ヒ:な・・・なんと云うふしだらな―――母は、お前をそのように育てた覚えはないぞえ??
「緋刀・貮漣」―――その剣こそは、まさしく、史上最強の剣として存在し、また、退魔の一振りでもありました。
事実、その剣が発する光輝に、母と二人の兄は怯え、イリスを遠巻きにするしか出来ずにいました。
しかし、この時―――
イ:さあ! 覚悟するのです―――!
王:イリスよ・・・
イ:(? この声・・・)―――父様?!
貮漣の神気に中てられたか、玉座の間より奥にある自分の部屋から、ある人物―――
この国、トロイア国の王である、フリードリヒ=セバスチャン=アディエマスが、現れたのです。
しかも、開口一番―――
フ:イリスよ・・・そうか、それが、史上最強と謳われておる、緋刀・貮漣なのだな。
だがな・・・いかん―――いかんぞ、その剣は・・・
その、光り輝ける、聖なる剣はな、私達と、その主なる方の忌み嫌うモノなのだ。
イ:(父・・・様っ!)最早―――議論など無用!
フリードリヒ・・・既にお前は、人間であることを止めてしまった、外道・人外の類・・・
ならば、せめてこの私が葬り去る―――!!
フ:おのれぇ・・・この、親不孝者めが!!
お前など、最早、私の娘でも何でもないわ!!
その剣こそは、善を導き、悪を淘汰する―――はずなのに、その剣の存在自体を否定する言葉が、あろうことか、国王自身から直接なされました。
その言葉に負けじ―――と、イリスも、総ての柵を振り払い、血を分けた肉親達を、滅する宣言をしたのです。
けれど・・・幾らかは辛かろう―――切なかろう―――
その気持ちは、こちらにも、犇と伝わってくるのです。
ですが、既に人の心を喪った者達にしてみれば、そんなイリスの気持ちは通じるはずもなく―――
一人正気のイリスを、返り討ちにすらしようとしていたのです。
フ:さあ―――ヒルダに二人の息子達よ・・・私達の変わらぬ忠誠心を、アレクセイ様にお見せするのだ!
ヒ:フフフ―――御意に・・・
シ:そう云う事だ、イリス・・・今の、この国の、真の支配者に従わないお前は、不要―――
ク:不要な者は、処分せねばなるまい。
最早、狂気の沙汰でした。
トロイア国の、統治者にして支配者であるはずの、王―――
その王自身や、王の血族達の口からは、信じ難い一言―――「今の、この国の、真の支配者」・・・
ならば、自分達の存在とは、何なのか―――・・・
栄光ある、王の血族である、自分達の存在意義とは・・・?
イリスは、兄の一人から、この言葉を聞くなり、なんだか無性に、情けなくなってきました・・・。
得体の知れない何者かに操られ、今やその人物が、王をも凌ぐ権力を有するのだと云う・・・
しかも、血族の一人でもある、自分の姿すら見えていない・・・
そんな、彼らの穢れた刃が―――イリスに振り下ろされようとしていた時・・・
シ:ケヒャヒャヒャヒャ―――死ねぇ〜〜イリ・・・ぃ゛ぐああ〜〜っ!!
イ:(!)兄さ・・・あの剣は、私の―――?
けど・・・あの剣は―――
イリスを殺めようとした、剣とその持ち主は、何者かによって投擲された、イリス自身の剣によって阻まれました。
けれど現在、イリスが持っているのは、さある人物からの提案により、交換されたモノ・・・
では、今まで携帯していた、イリス自身の剣は―――?
それは―――・・・
リ:―――へっへへ〜〜危うく、乗り遅れっちまう処だったなぁ〜・・・
イ:ああっ、あなたは―――!
蓮:リリア殿―――
市:期は、熟したようですね・・・
何十人と、埋め尽くす玉座の間に措いて、入口付近から正確に、イリスを襲わんとしていたシャルンホルストを貫いた剣がありました。
その剣こそは、元は、イリス自身の剣でしたが、ある機会をして、リリアの緋刀・貮漣と交換し、
そしてその剣は、嘗ての主を護るかのように、リリアの手から投じられたのです。
リ:ぃよう〜♪ 盛り上がってるようじゃないの―――こんなにも愉しい事を、この私抜き・・・ってなことは、ねェよなぁ〜〜
し:な・・・なんだか、ボク達が、悪役の様だよ・・・。
た:ふむ―――じゃが、相手もそうは変わらんぞ。
し:たぁまちゃ〜〜ん・・・
リ:―――ヘッ、悪役上等!
ならあとは、どちらが強いか・・・決めるってのが筋―――だよなぁ・・・
類稀なる覇気を纏う者は、少しくらいの野次では、動じはしない・・・
現にリリアの、色彩が変わった眸は、一層の紅味を帯び、
燃え盛る闘気の如くか―――果ては、屍山血河を築き征く、修羅・羅刹のようにも見えたのです。
=続く=