自分の仲間達が、多勢に囲まれ窮していた時―――

この国の王族であるイリスに襲いかかろうとしていた者に対し、手にしていた剣を投げつけて、イリス殺害を阻止した者がいました。

 

けれど、依然、(よう)として形勢は変わらず、するとここで、リリアは、大胆な行動に出たのです。

 

 

 

リ:今そっちへ行くからな、待ってな―――!

 

兵:ぐへっ―――

兵:あぐっ―――

兵:こ・・・こいつ、オレ達を踏み台にして―――?!

 

 

 

玉座の間は、トロイア兵で所狭しと埋め尽くされていました。

 

これでは、イリスや蓮也、市子達の下に向かおうとも、邪魔立てが多くて無理と云った処でしたが・・・

 

「上空」―――つまり、兵達の頭上ならば、いかがなものであろうか・・・

 

早い話し、リリアは、誰しもが思いつかなかった盲点を突き、最短・最速のコースで、自分の仲間達の下に寄ったのです。

 

 

第七十五話;破綻とその前触れ

 

 

リ:へっへ〜〜到着ぅ♪

 

イ:なんと、無茶な―――

 

蓮:しかし、発想の奇抜さは、リリア殿ならではですかな。

リ:いっやぁ〜ん、照れるなあ〜〜もっと褒めてよ―――蓮也v

 

市:惚気(の ろ け)ている場合ですか・・・それよりも、状況は一向に変わってはいないのですよ。

  それに、これからどうするつもりだったのです・・・。

 

リ:あっ、御免〜何も考えてないやw

 

し:やっぱり・・・

た:とは云え、このまま見過ごすわけにもいくまい、どれ・・・――=縮地=――

 

し:―――あっ?!

タ:これはまた便利な・・・して、何かのお考えがあって・・・

た:なはははw い〜や、な〜んも考えとりゃせんww

 

市:玉藻前様まで・・・なんと軽率な―――

た:ふむ? じゃが・・・志を一つとしておる者、集まったぞ―――

 

 

 

しかし・・・ここで重大な発表が―――

なんとリリアは、後先考えず・・・取り敢えず、仲間達の下に駆け寄った―――「だけ」だったのです。

 

しかも、策謀に長けているたまもでさえも、自前の術式を行使して、一瞬の内に、リリアとイリス達の下に、参じた「だけ」・・・

このことには、就中(なかんずく)、外部よりの後方支援を期待していた、市子を落胆させたものでしたが、

それよりも、たまもは、志を一つにする者達との、集結を重きに置いていた・・・

 

多勢に、無勢のまま分断をされていては、いかに優れているとは云え、そうした能力を如何なく発揮できないのではないか―――と、した、

たまもの深慮遠謀でもあったのです。

 

 

ですが・・・しかし―――・・・

 

 

 

呪:フォフォフォ―――どうやら、集まったようだな・・・

 

フ:おお―――これは、アレクセイ様・・・

  お出ましになられるのは、(いささ)かお早いのでは・・・?

 

ア:フォフォフォ―――そうも行くまい・・・

  なにしろ―――南の評議員、直々のお出ましとあっては・・・な。

 

リ:ケッ―――なんだか、変な処で有名になってやがるなぁ・・・

  それよりも、おい―――お前か、この国を乱している、ヘンチクリンは。

 

ア:フォフォ―――どうやら、口の利き方を知らぬようだな・・・この痴れ者が。

 

リ:ヘンっ―――お褒めに預かり、結構至極!

  その前にだなぁ・・・デイドリヒとか抜かしてた野郎が、そっちに尻尾を巻いて逃げ帰ったと思うんだが・・・

 

ア:ナニ? デイドリヒだと? 何者だ、そ奴は・・・

 

リ:すっとぼけんじゃねえ! この野郎・・・お前の大事な、仲間の一人じゃねえのかよ!

 

 

 

ここで、トロイア国を、陰で操る黒幕の登場―――

そして、彼の出現によって、リリアやイリス達の、進退が窮まったか―――に、見えたのですが、

なんとここで、リリアが、気にしていたある事を聞いてきたのです。

 

そう―――この城下にて、自分達と火花を散らし合い、寸での処で撤退した、あの存在・・・

複数の腕を持ち、術式にも通じている―――デイドリヒ(なにがし)の存在を・・・

 

ところが、アレクセイは、デイドリヒを庇う為に(しら)を切ろうとしているのか・・・

いやしかし、どうも彼の口調からは、そんな感じは垣間見る事が出来なかったのです。

 

・・・と、云う事は―――アレクセイは、デイドリヒのことを知らない・・・

 

ではなぜ、デイドリヒ(なにがし)は、リリア達の行く手を阻んだのか―――その事は、今もって尚、謎に包まれたままだったのです。

 

それよりも、今や現場は、必殺の地となり、そんな考えを巡らせる余地すらもなくなり始めたのです。

 

 

 

イ:おのれ・・・アレクセイ―――よくも、私の家族を!!

 

ア:フォフォ―――イリス姫・・・お前一人が藻掻(も が)き、また足掻(あ が)いた処で、最早どうにもならぬのだ!

  それに・・・赤の他人に(たす)けを求めるなど―――恥の上塗りもいい処だな・・・。

  しかも、頭の弱そうな奴ばかりとは・・・これでは、(かえ)って同情してしまうわ!

 

リ:ん・だとぉ〜? ん・にゃろう〜〜云いたい放題云ってくれやがって―――

た:いいから云わせておけ―――

 

リ:けどなあ〜〜たま、お前・・・あんな事云われて、悔しくないのかよ!

た:別に?w

  第一、悪党の親玉とは、必ずやああした口上(こうじょう)を述べたモノでな―――

  おうおう、そうそう―――わしにもあったよなぁ〜〜悪の華として栄えた、華やかりし頃がw

 

市:玉藻前様・・・最早、自慢にすらなっておりませぬ―――

 

た:おほw まあまあ〜よいでわないかww

  現に・・・あ奴の考えとりそうな事、わしには手に取るように判るでな―――

  ほれ・・・例えば――――――=反閇(へんばい)=――

 

 

 

黒幕の登場で、頭に血が一気に上るイリス―――その事を知った上で、さらにアレクセイは、挑発の一手を打ってきたのです。

 

けれど、たまもは、その手法を、悪党独特の常套手段だとし、この上、更なる混沌を招こうとしていたアレクセイの企みを、看破するどころか阻止して見せたのです。

 

それが「反閇(へんばい)」―――陰陽道に伝わる、「歩行呪術」・・・

しかもたまもは、アレクセイの奸計(わ な)看破(み や ぶ)っただけではなく、自身の豊富な知識・経験を(もと)に、更なる「式」をも組み込んでおいたのです。

 

 

 

蓮:おおっ―――なんと・・・邪霊共が・・・

イ:私達が気付かない間に、こんなモノを・・・

 

た:(いたずら)に「(おそれ)」を抱かせ、わしらが存在を信じたその時―――その存在は産まれ出ずる・・・

  今昔(こんじゃく)、東西を問はず、人の「闇」に対しての畏怖が呪力と成り、「怨霊」と化すものと心得よ。

  それに―――ぬしが仕組んでおいたモノ、利子をつけて返してくれようぞ・・・

 

市:これは―――「呪詛返し」・・・やはり、侮れませんね。

 

 

 

「悪」のことをよく知るのは、やはり「悪」でしかない。

嘗て、悪の限りを尽くした玉藻前だからこそ、アレクセイが、次の一手をどう打ってくるのかを、(わきま)えていたのでした。

 

だから、アレクセイが、イリスやリリア達が、目の前の兵士達に躍起になっている一方で、

尋常(よのつね)ならば目に見えない―――「怨霊」「邪霊」と云った類の霊障によって、更なる追加攻撃の手段を目論んでいたのです。

 

けれど、そうした(わ な)は、アレクセイより奸智に長けた、たまもの予測する処と成り、

たまもは、奸計(わ な)看破(み や ぶ)った上に、アレクセイの仕掛けていた「霊」よりも、更なる強い「霊」を呼び込み、術者に返す―――「呪詛返し」を行ったのです。

 

ですが、相手も()る者・・・

 

 

 

ア:ぅぬうう〜〜味な真似を―――ならば!

 

イ:あっ?! リリアさん―――危ない!!

 

 

 

奸計・策略の類では、優位に立てないと思ったのか、ここでアレクセイは、標的を・・・トロイア国の王族であるイリスから、南の評議員であるリリアへと変更したのです。

 

なぜ―――彼の目的の第一には、エグゼビア大陸を牛耳る為ではなかったのか・・・

だからこそ、弱小国の当時であった、トロイア国の王に取り入り、イリスを除く王族達を、徐々に自分の下僕と化してきたのではなかったのか・・・

それが、なぜ今をして、地球の未来の方向性を決める、「評議員」の一人に、標的の変換をしてきたのか―――・・・

 

しかし、その異変に、いち早く気付いたイリスが、身を(てい)して・・・それも、貮漣(に れ ん)の「晄剣」を出して、対抗したのです。

 

 

 

リ:イリス―――あんた・・・

イ:大丈夫ですか―――

 

リ:あ・・・ああ―――

イ:それは良かった・・・。

  (それにしても、なんと云う威力―――あの術をまともに喰らうと、流石に無事には・・・・・・っ?!!

  こっ―――これは・・・!!)

 

 

 

(うま)く、一撃目は、「晄剣」によって(さば)き切り、リリアを護る事が出来ましたが―――

イリスが、剣に異状(いじょう)を感じ、自身が手にしている柄に目を落とすと―――そこには・・・

今の術の衝撃によるモノなのか、亀裂の様な(ひび)が入っているのが、眼に飛び込んできたのです。

 

そしてそれは―――これから起こる、破綻の前触れでもあったのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと