リリア達からの、心強い後押しを受け、イリスは、新たなトロイア国の王になる決意を固めました。

 

ところで・・・お気付きになられたでしょうか。

実は、あの場に、仲間の一人が、欠けていた事を・・・。

 

 

 

リ:あいつも、これから大変だなぁ〜。

  他人事ながら、同情しちまうよw

市:リリアさん、笑い事では―――

蓮:それより、拙者達の、当初の目的は遂げられたのでござるから、そろそろ帰らねば・・・。

 

リ:うん・・・そだな―――

  あっ、それより、しのはどうしたんだ、しのは。

 

 

 

誰もが、忘れていたわけではありませんでした。

ただ、この旅は、自己責任でもあったがため・・・でしたが、

そもの原因の一つに、リリア達各自は、所属している処が違っていたからなのです。

 

リリアと蓮也は―――元・オデッセイア国の所属で、現在はテラ国の住人・・・

市子は―――そんな彼らの、監視・お目付け役・・・として、テラ国の所属。

しのとたまもは―――ロマリア共和国所属の、さある「評議員」の「身内」と云う事でした。

 

とどのつまり、彼ら彼女は、互いが知り、また目的も同じであったがため、一緒に行動していただけに過ぎなかったのです。

 

その上で、目的もほぼ遂げられたのだから、帰郷をしよう―――と、云う事なのですが、ここで一つの問題が浮上してきたのです。

 

そう、しのが本来の目的へと動き出し―――だから、その場にはいなかった・・・

そのことを、しのと共に行動をしていた、たまもから諭され・・・

 

 

 

た:・・・あ奴はな、探しておるのじゃ―――あ奴の父の命を奪った、仇敵(か た き)を・・・

 

第八十話;未だ掴めぬ手掛かり

 

リ:そう云えば―――そうだったな・・・あいつやお前が、この大陸に来たの・・・って、結局の処はそうだもんな。

た:まあ・・・そう簡単に見つかるモノでは、ないと判っておったからな・・・。

  そう云うお主たちには、色々と世話になりっぱなしじゃったな。

  それに、そなたらの目的が、遂げられたのであったらば、早々に、(くに)へと帰るがよい。

  わしらは、もうしばらくこの地に留まり、本懐を遂げさせて貰おうぞ。

 

 

 

しのとたまもの「本懐」―――しのの父、加東段蔵を殺害した、「カイエン」なる者を追い続け、

いつしか、地球の北方の大陸に在る、「トロイア国」へと入国した・・・

しかし、未だに、その仇敵(か た き)の足取りを掴めないでいる今となっては、しのも焦るばかりとなり、

闇雲に見つけ出そうとして、躍起になっているのも、事情としては判らなくも有りませんでした。

 

とは云え・・・仲間だと思っている者達の、そうした事情を知ってしまった以上は、

そのまま帰ると云うのは、リリアとしても「善し」とはしない処・・・

 

だからなのか―――

 

 

 

リ:なに云ってやがんだよ、水臭いw

  もう私達は、一蓮托生―――仲間が困っているのを見て、見逃す程、私の情は浅くないってよ。

 

 

 

殊更「仲間」を強調し、中々テラ国へと戻ろうとしないリリア―――

けれども、リリアからの云い分も、判ってくるだけに、蓮也に市子は、疑いの眼差しを向けながらも、二の句は告げずに()いたのです。

 

しかしたまもは、豊富な経験からか、自身が疑っていた事を訊いてきたのです。

 

 

 

た:ふぅ〜〜む・・・どこかウソ臭いのう―――お主が述べると、特に。

  本当は、(くに)へ帰ると、厄介な事を押し付けられるのが面倒だから、帰りとうはないと云うのではないのか。

リ:〜〜るっせいなあ・・・お前には、関係ねいだろうが!

 

た:(図星か・・・)やれやれ、ウソが()けぬと云うのも、考えものよのぅ。

  だがの、その気持ち・・・有り難く受け取っておくだけに、しておこうぞ。

 

市:しかし―――玉藻前様!

 

た:市子殿・・・少しは、しのの気持ちも、判ってやって下さらんか。

  あ奴の仇敵(か た き)は、あ奴自身が討たねばならぬのじゃ。

 

 

 

たまもから、そう諭されると、市子も口を(つぐ)むざるを得ませんでした。

仇討ちとは云うけれど、物事はそう単純ではない・・・

仇敵(か た き)を討てば、その者に連なる者の怨みを買うことになり、結果、悪循環して行く事になる・・・

 

その事を知り得ていたがため、市子や蓮也は、それ以上、その事に関しては、口を差し挟まないでいたのです。

 

するとリリアは、そうした事情を、ようやく呑み込んでくれたのか、しのによろしく云ってくれるように、たまもに伝えると、

蓮也と市子を伴って、たまもの(もと)から去って行ったのでした。

 

 

その数時間後―――いずこからか戻ってきたしのは・・・

 

 

 

し:ただいま―――あれ?あの人達は・・・

た:帰って貰った―――わしらの事情に、付き合わせてしまうのも、なんじゃからな・・・

 

し:うん・・・そうだね・・・。

  ありがとね、たまちゃん・・・。

た:ふふ―――よせ・・・

  ところで、成果の方は、どうであった?

 

し:・・・うん、もうこの地には、あいつはいないのかもしれない―――

  それよりも、たまちゃんの方は・・・

た:わしも、八方手を尽くし、式に探らせておるが・・・

  こうなると、やはりあそこへと行ってみるしか、他はないのやも知れんの・・・。

 

 

 

トロイア国中を巡り、なんとかして、「カイエン」の足取りを、掴もうとはしていたのですが、

中々、思うようには、成果は上がらずじまい・・・

 

それに、たまもの方でも、居住にて、しのの留守を預かるだけではなく、得意としている「陰陽道」を駆使し、

「式神」に捜索を当たらせるなどして、「カイエン」の行方を追っていたのです。

 

けれど・・・ここまでで、二人が辿り着いた見解とは―――

 

もう「カイエン」は、トロイア国には留まっておらず、この、エグゼビア大陸の、未開発の土地へと逃げ込んで、

自分達が諦めてくれるのを、伺っているかもしれない・・・と、したのです。

 

 

それはそうと―――テラ国への、帰途へと付いているはずの、リリア達と云えば・・・

 

 

 

リ:ぬっふっふ―――ぶぁ〜かめい・・・この私が、「はいそうですか」と云って、素直にテラに戻ると思ったら、大きな間違いなんだってばヨww

 

市:・・・とは云え、なんだか少し、心が痛いです―――

 

リ:お綺麗なんだよ、市子は・・・

  なんだったら―――先に帰ってて、ソフィアに云っといてくれればいいんだぜ?

 

市:それはなりません―――! あなたを野放しにしていては、いずれ・・・

 

リ:やっぱ、そいつが本音か―――

市:(!)あっ・・・しまっ―――

 

リ:まっ、いいんだけどさ・・・ど〜せ、そんなこったろうとは、思っていた事なんだし―――

  それにしても、あいつも云ってくれるよな〜「私を野放しにして―――」って、私ゃ、どんだけ「危険人物」なんだよ・・・!

 

 

 

しのとたまもが、仇敵探索の為、拠点として居住として定めている建物より、やや離れた位置にて、

(てい)よく協力を断られたのだから、一旦、その者達とは袂を分かちながらも、今度からは、自分達の判断に基づき、協力をしてやろうとしている、リリア達の姿があったのです。

 

けれど、その手口と云うモノが、嘗ての仲間を騙すにも似たりだった為、市子の胸の内が痛くなってきたのです。

 

それならば―――と、云う事で、市子のみをテラへと戻して、自分達はこの地へと留まり、その報告だけはしよう―――と、云う案も出されはしたのですが、

思わずも、本音を漏らしてしまった事に、市子も内心、焦りを隠しきれなかったようです。

 

 

しかし―――忍である、しのの捜索能力をしても、その足取りでさえも掴めずにいた「カイエン」・・・

このまま、何の進展もなければ、半永久的に、自分達は、この凍土の上で暮さなければならない・・・

そのことを覚悟していた時―――

一体いつから、自分達のやり取りを聞き届けていたのか・・・この人物が―――

 

 

 

マ:そ〜んな事気にしてたら、この先やってけねいぜいっ―――と☆

 

リ:あっ?? 誰かと思ったら―――マキさん・・・一体いつからそこに・・・

 

マ:ん〜〜と、ね、リリアちゃんが・・・「ぬっふっふ―――ぶぁ〜かめい・・・」と、云ってた辺りからw

  〜と、まあ、お冗談はさておいてw

  ぬっふっふ―――おねいサン、おねいサン・・・ちょいと好い話があるんだがねい? 一口乗っかんない?w

リ:「好い話し」?

 

マ:実はだねい―――・・・

 

 

 

なんと、侯爵のマキが現れ、リリアの悪巧(わるだく)みの、一部始終を聴いていたのです。

 

しかも、マキ自身、リリア達に「好い話し」を、持ち込んできた・・・と、云うのですが―――

果たして、マキの性分や、こうしたお話しの流れ上、どこか「リリアの悪巧(わるだく)み」に、似たモノではないだろうか―――と、した、蓮也や市子の予測は、就中(なかんずく)、当たっていました。

 

その予測通り―――マキからの提案を、耳打ちされたリリアは・・・

悪人特有の、薄笑いを浮かべ始めたのです。

 

その薄笑いを見た、蓮也に市子は、何やら背筋が寒くなるのを、覚えたそうです・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと