国内の騒動を治まらせ、やがて、人心が鎮まりかけた頃を見計らい、イリス戴冠の儀式は、滞りなく行われました。
また、この行事に伴って、新体制も発足し、国内を纏めると共に、ある対外問題にも、目を背けたままではいられないモノだとしたのです。
では―――その、「対外問題」とは・・・
イ:あの、先生―――御相談したい事が・・・
タ:「北西部落」の事ですね、そろそろ来る頃合いだと思っていました。
国政の官に、悪い事だとは知りながらも、イリスは、当面の問題を、相談・解決にまで導いてくれるのは、タケル以外にはいないモノだとしていました。
それに、イリスは当初から―――・・・
自らが、トロイア国の王となって、治めると云う、新体制の発足当初から、タケルに内政を診てもらえるよう、礼を尽くすのですが、
なぜかタケルは、その事を「善し」とはせず・・・ただ、こうした「相談事」には、耳を傾けてあげていたのです。
そして今回、父の代でも、解決には至らなかった、「北西部落」の問題を、
一挙に解決し―――トロイアを、揺るぎない盤石の態勢に持っていこうとしていたのです。
それに、この問題は、タケル自身も、抱えている事情に関わり合いが深かった為か、敢えてイリスからの相談に、進んで乗っていたのです。
その前に、気になるのは・・・その「問題」―――なのですが・・・
タ:無事、戴冠の儀に、新体制を発足させたこと―――先ずは、お祝いの辞を述べさせて下さい。
イ:いえ・・・そのことはいいです。
今回の事も、元はと云えば、先生の助言を、素直に受け止めていただけですから・・・
タ:そうですか・・・。
ところで、トロイア国も、「北西」の問題を解決できれば、愈々もってエグゼビア大陸の覇者となれます。
そのお気持ちは、いかがなものでしょうか―――
この現在に措いて、エグゼビア大陸の殆どの地域を領有し、あとを残すは、「北西部落」と云う、一部の地域のみ・・・
しかも、イリスの代にまで、その問題が先送りにされたと云うのも、「地の利」が、その部落に味方をしていたから・・・
だから、中々、武力で云う事を聞かせようと思っても、そうはならなかったのです。
その事を知っていたからこそ、イリスも、徒に武力を行使せず、この問題を、一気に解決できる策を、タケルに求めていたのです。
しかし、その前に―――タケルは、今の心境を、イリスに問うてみたのでした。
その質問内容は、甚だ簡単なように聞こえていても、その実、奥が深い―――
そして、それは同時に、イリスに備わっている、或る特性を見極める為、発せられたモノでもあったのです。
そのことを、知ってか―――知らずか―――
イリスは、少しばかり考えると、今現在の、自分の心境を、語り始めるのでした・・・。
イ:「気持ち」・・・ですか―――
正直、余り私には、実感が湧いてきません・・・。
それは確かに、私の父ならば、喜ぶでしょうが―――現在の私の立場は、相次ぐ身内の不幸によって、得られた・・・
所詮は、「お為ごかし」の様なモノでしかないと、私はそう思えるのです。
それに・・・未だ自覚がないモノだから、戴冠の儀を終えさせても、どこか浮ついた感じすらあるのです。
そんな私が・・・これから、この大陸の覇者に―――?
悪い冗談なら・・・早く醒めて貰いたい―――それが、今の私の心境です・・・。
イリスは、今現在の、自分の心境と云うモノを、嘘偽ることなく、正直に述べました。
そんなイリスからの返答を聴く最中でも、タケルはイリスの正面を向き、至極真面目に聞き入っていたのです。
第八十一話;エグゼビア統一への動向
それからしばらくして、手頃な策が思い浮かんだら、伺うモノとし、イリスを王宮へと帰したあと―――
タケルは、居住の、とある一室で、この国や、この当時の時代背景を鑑みても、滅多と見かけない機器施設の前に立ち、
自身で設定したと思われる、「認識番号」や、「暗証番号」を、口頭で入力し、どこかまた、別の端末に接続する手続きを行ったのです。
すると―――超空間回線で繋げられた事を、証明するかのように、タケルの目の前に設置された、大型画面のモニターには、ある人物の映像が投影されたのです。
しかも、この人物とは―――・・・
べ:『おや―――どなたかと思いましたら・・・どうやら、計画の方は、順調に進行中の様ですね。』
タ:これは、ベェンダー殿、実は、マイ・マスターに、急ぎ取り次いで頂きたい案件があるのですが・・・
べ:『あなたほどの方が、「急ぎ」―――とは、余程の、良い知らせの様ですね。』
『伺いましょう・・・』
タ:では―――「先頃まで、決めかねていた案件・・・その総て―――」
べ:『おお―――?! それは本当ですか!』
『ならば、創主様も、お喜びになられることでしょう。』
タ:そればかりか、とんだ「お土産」も、ついてきております―――
この程、決まったばかりの、「南の評議員」と、「その方」とが、芽出度く「義姉妹」の契りを・・・
べ:『それは、益々もって、創主様にご報告せねばならない事ではありませんか―――!!』
『ならば、高弟の筆頭格である、あなたご自身が、創主様にご報告申し上げれば、よろしいではございませんか。』
タ:いえいえ―――それには及びません・・・。
それに、ワシ自身、もう少し成り行きなどを、窺っていたいのですが・・・
べ:『フフ―――それは、叶わぬ願いだと思いますよ・・・』
『なにしろ、創主様は、「折角、いい晩酌の相手を見つけたって云うのにねぇ〜〜」・・・と、荒れます一方で―――』
タ:やはりそうですか・・・何事も、巧くはいかぬモノの様ですね―――・・・
それでは、「エグゼビア大陸統一に係わる案件」と、「北の評議員選定」の案件、まとまり次第、またご報告に上げたいと思いますので・・・
それでは―――・・・
タケルとその時、会話をしていたのは、「ある人物」の麾下であり、高弟の一人でもあった、ベンダーだったのです。
しかも、このベェンダーとタケルとは、互いをよく知る間柄の様で、タケルが今回報告した内容でも、二人が共通している、自分達の「師」のことを鏤めたりする等、
彼ら二人が、その「ある人物」の、「同門」である事が判ってくるのです。
そして、自分達が推し進めている「計画」を、実行に移す為―――そこで回線は閉じられたのです。
それにしても・・・武力行使による従属が、困難を極めていたにも拘らず、ならばどのようにして、タケルは、エクゼピア大陸を、トロイア国一色にしようとしていたのでしょうか。
そしてまた、彼の計画の内では、イリスを、「北の評議員」に、仕立て上げようともしていた・・・
その事に併せるかのように、「南の評議員」である、リリアと―――その人物、イリスとの、「義姉妹の契り」・・・
タケルが所属している、「ある組織」が抱えていた諸問題が、この時をして、一挙に解決の方向に導かれようとしている・・・
その事は同時に、「大皇」が、古くから提唱している、「ある事」・・・
『地球の意思を、一つに纏める事』―――
その願いが、成就されつつある事でもあったのです。
=続く=