今は昔―――常磐の国に、「崇徳天皇」と云ふ、「(てん)上人(じょうびと)」ありき・・・

(しか)る後、当代の天皇は、次期天皇に位を譲り、「上皇(じょうこう)」になり給ふ。

 

なれど、(まつりごと)の実権は、上皇の父君であらせらるる「法皇(ほうおう)」が握り、

また、法皇身罷(み ま か)りし後、(まつりごと)の実権を巡りて、「兄」である上皇と、「弟」である天皇との間にて、骨肉の争ひを生じさせり。

 

人―――それを・・・

 

 

第九十四話之壱;保元の乱

 

 

・・・と、呼び給へり。

 

乱、「摂関家」の、跡目争ひも交え、愈々(いよいよ)(もっ)て、「天下争乱」の様相を為し得たり。

さりとて、乱、収まりし時、上皇率ゐる軍、敗れて―――上皇、「讃岐」の地に流されり。

 

上皇、讃岐へと流されし後、たまゆらにて、和歌などを詠みにけりて、悠久を過ぐせり。

 

されど、上皇の(とが)は、年を経ようとも、決して赦されることなく、

程なくして、上皇、憤りて御隠れせり。

 

(しか)らば、御隠れする時、大いなる怨恨を抱き、上皇の御霊(み た ま)、「大怨霊」「大魔障」となりて、常磐の都「洛中」を襲へり。

 

 

こうした一連の・・・崇徳上皇が関わった「政変」を、後の世の人々は「保元の乱」と云い、

その後の、「戦乱」や「天災」「飢饉」などの出来事は、皆一様にして、常磐の朝廷に恨みを遺して死んで逝った、崇徳上皇の「祟り」だとして、畏れたモノだったのです。

 

しかし―――このお話しに措いては、「崇徳上皇」はまた、「ストゥク=カイエン=グワゴゼウス」・・・などと云う、地球上にはない、少し珍しい名前を持つ人物として知られているのです。

 

ですが、そうした事を突き詰めて行くと、「大怨霊」「大魔障」と畏れられた「崇徳上皇」の所業は、

当時の、「地球」と云う、未開の惑星に住む人間では、到底、太刀打ちできるはずもなかったのです。

 

そして、ここで疑問となってくるのは、そんな存在を・・・退けた存在がいた―――と、云う事。

 

いや・・・その前に、いつ―――グワゴゼウスは、「本物の」崇徳上皇とすり替わったのか・・・

 

 

あれは―――・・・現在から400年前、当時、上皇が流された讃岐の地に・・・

一つの、禍々しい星が、流れ落ちてきた―――・・・

 

 

 

崇:(!!)な―――なにごとぞ!! ま・・・まさか・・・後白河のヤツめが、まろを??

  な・・・なぜじゃ・・・まろはもう、その様な事は考えておらぬと云うに―――・・・

  それを・・・打ちひしがれておるまろを、()甚振(い た ぶ)ると(のたまう)か!!

 

 

 

上皇流刑の地より、約数10km離れた地点に、天空より舞い降りた、謎の落下物あり―――

 

その「事実」は、ガルバディア大陸のパライソ国を治めている大皇(おおきみ)も、知る「事実」ではありましたが、

当時は、また別の深い事件に関与しており、とてもそれどころの事情ではなかったのです。

 

しかし・・・その―――「天空よりの落下物」が、憔悴しきっている自分を、まだこの上、甚振るモノである・・・と、そう解釈した上皇は、

自分を護衛している供周りを割き、至急、その地点へ、何事があったのかを調査させる為に派遣したのです。

 

が・・・調査の為に派遣させた者は、誰一人として戻ってくる者はいませんでした。

 

その事に、愈々進退窮まったかと思ってしまった上皇は、流されてきた時に、密かに持ち出してきた、なけなしの財で、

讃岐土着の地侍や、野盗・山賊の類を雇い、(きた)る―――自分討伐の為に派遣されてくるであろう、官軍に対抗する為の(ぜい)を築いたのです。

 

 

一方―――同じ頃・・・数十年前に起きた、友の不審な死の真相を探るべく、

ヴァンパイアの「子爵」―――サヤ=ゲオルグ=ヴァルノフスクと、その(サーヴァント)である「トウテツ」のマダラが、

今回のお話しの中心舞台である「常磐」のある、「エクステナー大陸」に入っていたのです・・・。

 

 

 

マ:『子爵様―――・・・』

サ:ああ―――判ってるよ・・・

  今回の事は、誰からの(めい)で動いているわけじゃない・・・

  だけどな―――私ゃ、リリアを呪い殺してくれた、「ナグゾスサール」って奴の事が、どうしても赦せねえんだ!!

  しかも・・・奴はもう・・・リリアによって、殺されちまっている―――

  このやり場のない怒りは、ジョカリーヌ様だって同じことさ・・・

 

  見たかよ―――あの人の、あんな顔・・・

  自分と志を同じにし、同じ道を邁進してくれた人が、あんな下衆な奴に殺されちまったんだぜ?!

 

  幸い、今の私は自由に動ける―――リリアが、ナグゾスサールから呪いを受けた経緯(いきさつ)・・・調べるのにはうってつけだろ・・・。

 

 

 

この度、エクステナー大陸へと入って来たサヤとマダラ・・・ではありましたが、誰かの命令を受けて―――と、云うワケではなかったようでした。

 

では・・・その動機は―――と、云うと、

数十年前に起こった、リリア=クレシェント=メリアドールの、不審過ぎる死・・・その死の謎を解明していく内、

以前リリアが討伐した、「ナグゾスサール」と云う「賊」から「呪い」を貰い、そうした呪いの効力によって、死に至らしめられた事が判って来たのです。

 

それに、「そうした協力者」・・・リリアの死は、殊の外、ジョカリーヌに深い哀しみを与え、しばらくは政治に手がつけられない程の重症になってしまっていたのです。

 

そうした事を(かんが)み、当時としては、そんなに重要な役職を与えられていなかった(・・・と、云うより、サヤ自身が固辞した傾向が見られる)サヤが―――

自らの意志で、リリアの死の真相を探るべく、リリア終焉の地でもある、エクステナー大陸を訪ねに来ていたのです。

 

 

そして・・・リリアとナグゾスサールの接点を調べて行く内―――

なんと偶然にも、同じ大陸の「東の最果て」にある常磐に、凶星が墜ちて行くのを見たのです。

 

 

 

サ:(!!)―――あれは・・・小型の偵察艇じゃないのか?!

マ:『ヤレヤレ・・・また、躾のなっていない連中が、この美しき惑星に、土足で踏み上がろうとしているのですか。』

 

サ:とは云え・・・放っておくわけにもいかないだろ。

  一応、どんな奴か調べてみるか・・・

 

 

 

サヤとマダラが見たモノとは、云うまでもなく・・・崇徳上皇も見ていた「天空からの落下物」―――

しかし、それをサヤとマダラは、自分達が所属している組織の都合上、何者かの所有物である宇宙艦・・・それに備わっている、「小型偵察艇」ではないかと推測したのです。

 

それにしても、この「小型偵察艇」・・・正式な許可もなく、降下をしてきたとは―――

そうした行為をしてくる連中と云うのは、大概(たいがい)、ロクな連中がいない・・・

このサヤの予想は、寸分の違いもなく的中しているのでした。

 

それと云うのも、この小型偵察艇のすぐ(そば)には、この地域の住人―――それも、軽武装をしている者達の、無惨な姿・・・

サヤとマダラは、そうした者達の亡骸を慰霊してやると、この小型偵察艇の(なか)に入り、「誰」の所有物なのかを調べていた時・・・

 

 

 

サ:(・・・?!)

  ―――ぬおっ!? この偵察艇の持ち主・・・「グリフォン」の一員だ!

  名前は・・・え〜〜と―――・・・

マ:『(!)なんですと・・・「グリフォン」!?』

 

サ:(・・・。)なんだマダラ・・・心当たりでもあるのか・・・。

マ:『あ・・・あ、いえ・・・しかし―――』

 

サ:・・・云え、「口が裂けても云えない」―――なんて云う、冗談は通じないと思え・・・

 

 

 

この「小型偵察艇」及び、「宇宙艦」の持ち主と、その「所属」は、立ち所に判ってしまいました。

 

持ち主の名は―――「ストゥク=カイエン=グワゴゼウス」・・・

所属する組織は―――「グリフォン」・・・

 

そして、この―――「グリフォン」と云う、組織名を聞くに及び、マダラは「ある事実」に突き当たってしまったのです。

それは、恐らくサヤも―――・・・

 

ですがサヤは、敢えてそのコトを、マダラの口から云わせようとしました。

するとマダラは・・・

 

 

 

マ:『・・・リリア様に、呪いを与えた―――シュトロム=ドミチェリ=ナグゾスサール・・・

  ()の者は、「グリフォン」の上級幹部・・・だそうです・・・。

  しかも・・・奴めは・・・』

 

サ:グワゴゼウスと、義兄弟の契りを結んでいる―――・・・

  フッ―――フ・フ・フ・・・ハッハハハ・・・アッハハハ!

  ああ〜そうさ・・・ここにそう書いてある! 全く・・・グワゴゼウス様々だよ!!

  この私の、虫の居所・・・晴らせる奴がいて、願ったりもないねぇ!!

 

 

 

自分一人が、抗ったところで、どうにもなるわけではない・・・

どちらにせよ、この方は、この艦のパーソナル・データを覗き、真相に至ってしまったのだ・・・。

 

そして、嗤う―――

 

それが、友の無念を晴らせることができることへの、「歓喜の」嗤いなのか・・・

この方の種族の、「嗜好」の根底をくすぐってしまったことへの、「悦楽の」嗤いなのか・・・

 

ただ―――その表情を垣間見る限りでは、「どちら」とも云えた・・・

 

この方も、やはり―――「ヴァンパイアの一族」・・・

 

日頃は、そんな性格すら、面に出さない方なのに・・・

 

 

サヤの忠実なる下僕(サーヴァント)―――マダラは思う・・・

これから、サヤの相手になる者の事が、可哀相でならないと・・・

なにより、そう云った場合では、「八つ当たり」に等しいのだから。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと