ここは・・・広大に広がる宇宙に在る、「銀河」の一つ・・・
「第七銀河系」―――
そして、その「第七銀河系」に在る、「太陽」と云う、「恒星」を中心にした、「太陽系」と云う、惑星系列・・・
その宙域に漂うのは、見る者の目を惹く、白く―――巨大な―――艦影・・・
第九十七話;ソレイユ
而して、この巨大艦の所有者は、云われるまでもなく、この太陽系を管轄下に置く、「ある個人」の所有物でもありました。
豊富な知識量―――頭脳の明晰さ―――的確な判断力―――
誰に対してでも公平である包容力―――鋭く研ぎ澄まされた感性―――・・・
他者が、羨ましくなる様な、優れた特性を持ち、誰が云うとでもなく、その人物の事を、「マエストロ」と、呼んだモノでした。
今も、「マエストロ」が、先般、自分が管轄している、太陽系の惑星の一つである、「第三惑星」で起こっている事態を知る為に、派遣させておいた自分の部下の報告を、
艦長室の椅子に腰を下ろしながら、静かに聴いていたのです・・・。
マ:それ・・・で? 地球に措いての進捗状況は・・・?
部:は―――北の大陸である「エグゼビア大陸」は、「アビス」に所属する、「アレクセイ=セルゲイビッチ=クドリャフカ」によって、統一が妨げられてきましたが、
「リッチー」様のご配慮によって、「ハイ・ディスクリプト」殿が、近日中に目的を達して下さることでしょう・・・。
部:そして、これで・・・長年の念願でもあった、この惑星の統一が現実のモノに・・・。
その事に関しましては、心より御礼を申し上げます―――マエストロ・デルフィーネ様。
「マエストロ・デルフィーネ」・・・そう呼ばれた人物こそが、この巨大艦の所有者であり、また、「第七銀河系太陽圏方面管区取締統括責任者」でもあったのです。
しかし、本来からして、「マエストロ」が有する優れた特性は、その管区では、あまりにも狭すぎた嫌いがありました。
その事は、マエストロの部下達にしても、また・・・上司でもある、「第七銀河系統括理事長」ご本人の苦言からも、判る処だったのですが・・・
マエストロが持つ難点―――マエストロ自身が、溺愛して已まない、マエストロ自身の妹の近くでなければ、仕事はしない・・・
こう云った「我が儘」を、渋々ながらも認めてしまった処に、「第七銀河系統括理事長」の、苦悩が伺えるのではないでしょうか。
しかも、マエストロが持つ難点は、それだけには留まらず・・・
今も、言祝ぎを述べた筈の、自分の部下に対しても・・・
マ:あぁ〜ら、ゴドノフ―――その結論、まだ少し早いんじゃなくて?
ゴ:・・・は?
マ:現在、私の手元に在る情報と、少々食い違いが認められる―――と、云う事なのよ・・・。
ゴ:は・・・はあ―――では、一体何が・・・
大筋で、地球は、自分の「妹」が管轄し、「妹」自身が選定した者達と、それに係わる勢力によって、意思を一つに纏められる事が出来るようになった・・・
それはそれで良かったのですが、マエストロ自身の手元に在った情報―――・・・
南の大陸である、「エクステナー大陸」を、近年に於いて統一できた国家、「テラ国」の支配が及ばない、云うなれば「行政特区」とも云うべき地域にて、
少しばかり懸念されるべき事態が、進行しつつある・・・との情報が、何者かの存在によって、齎されていたのです。
しかも、ある特定の組織の名称を挙げられるに至り、ここ500年余り、「タヴー」とされていた、「ある事件」の概要が、
またこの時に、持ちあがろうとしていたのです。
では、マエストロが挙げた、「ある特定の組織の名称」とは―――・・・
マ:「グリフォン」・・・この組織の名―――「あの子」が知ったら、さぞや穏やかじゃなくなるでしょうねぇ・・・
部:(!)マエストロ・・・様―――
マ:デイドリヒ―――あなた、この事実を知っておきながら、私に報告をしなかった・・・
部下としては、実に怠慢・・・よ、ねえ―――
デ:うっ・・・く・く・く―――
マ:でも・・・「個人」としては、ベストな判断だと思うわ。
だって、「あの子」が、「グリフォン」の名を聞いただけで穏やかじゃなくなるのに、
「あの子」を愛して已まない、この私が、知ってしまってそうならないわけがない・・・そう思ったから―――なんでしょう?
デ:かっ・・・かはぁっ! か・格別のご配慮に・・・ご高察までして頂き―――かっ・・・感謝・・・感激の極み・・・に、ございます・・・。
先に結論だけを述べると、「マエストロ・デルフィーネ」―――つまり、ジィルガ=エスペラント=デルフィーネに、地球の事態を報告していたのは、
先頃、エグゼビア大陸に措いて、偶然にもリリア達と遭遇し、少しばかりの小競り合いを生じさせてしまった、デイドリヒ=アスラーシャ=クズィールフなのでした。
そのデイドリヒが―――リリア達を向こうに回し、圧倒的優位にありながらも、早々に自ら退き下がった程の実力を持つ者が、
穏やかに話しかける、自分の女上司の前で、畏れをなして震えていた・・・
けれど、それは仕方のなかった事なのです―――
確かに、部下に対しての一言目は、穏やかな「感じ」には聞こえましたが・・・
デイドリヒには、どこか、この部屋全体にかけられている「G」が、増した様な気がしたのです。
しかしそれは、「気がした」だけであり、「ソレイユ」で働く、全乗組員には、そんな「感じ」さえしなかったのでした。
では、なぜ・・・デイドリヒが、そう「感じ」てしまったのか―――
それは、ジィルガが、彼に対してのみ、プレッシャーを与えていたからに、過ぎなかったからなのです。
それでもジィルガは、重要な報告を怠った部下に対しても、ある程度の評価はしたのです。
それが、現在―――「常磐」に措いて、起こりつつある事態・・・
けれどもそれは、500年余りも前から、「タヴー」とされてきた、「ある事件」の概要と、
その「当事者」ではないにしても、「関係者」を追っている、自身が溺愛して已まない「妹」―――ジョカリーヌ・・・
そう、今まさに、ジィルガの手元に在った情報とは、前回のお話しで、玉藻前からの要請を断り、
常磐に現れていたジョカリーヌの、本来の目的「そのもの」があったのです。
では・・・ジィルガも知り、穏やかならぬ境地にさせる「存在」と・・・
同じくして、ジョカリーヌが、常磐へと現れた「本来の目的」とは・・・
而してそれは、紛れもなく―――
ゴ:あの・・・マエストロ様―――
ジ:ねぇ・・・ゴドノフ、お姉さまは当然、この事実を知っていらっしゃるのでしょうね。
では、参ると致しましょうか―――それに・・・久方ぶりに、姉妹三人が、一同に会することなのですし・・・ね。
その時のジィルガの、表情を垣間見た部下の一人は、それから96時間もの間、本来の職務に支障をきたせたそうです―――
それほど、その時、ジィルガが浮かべた表情には、云い知れない・・・えも云われぬ様な「恐怖」を、その部下は感じ取っていたのです。
それよりも―――気になってくるのは、何者が、ジィルガに、この情報の提供をしてきたのか・・・
余人は、知るべくもないのですが、ただ―――次のジィルガの一言が、その「何者」かを、仄めかせていたのには、間違いはなかったようです。
ジ:(フフフ・・・それにしても、あの女―――心憎い事を・・・。
何をまた、企んでいるのかは知らないけれど、あの子に会わせてくれる機会を作ってくれた事には、感謝をしなくては・・・。
それにしても―――フフ・・・あの子のお友達だった、「リリアちゃん」に、害意を加えた者の「仲間」が、「グワゴゼウス」だったとは―――
「臭いモノ」に、「蓋」は欠かせないけれど・・・まさか、「蓋」を開けたら、こんなにも熟成していたとは・・・判らないモノよ―――ねぇ〜♪)
=続く=