その人物が、常磐へと現れた本来の目的とはなんだったのか・・・真実が解明しないまま、時間だけが過ぎ行き、

仇敵(か た き)を討ち滅ぼす為に、結集した仲間達は、その決意を新たに、その時の為に鋭気を養うのでした。

 

 

第九十八話;真実の吐露

 

 

そして―――決戦()の時が来ました・・・。

亡父の仇を討つ為、永年追っていた者を、ようやく眼下に収める事が出来た、しのを始め―――

彼女とは、知らない間柄ではなくなっていたリリアに、リリアと常に行動を共にしていた蓮也に市子までもが加わり、

また新たに、常磐にて、妖物を退治する密命を受けている、秋定(ときさだ)も、この仲間に加わりました。

 

そして・・・永らくの間、仇敵「塊閻(かいえん)」―――「崇徳上皇」と、同類と思われていた、「玉藻前(た  ま  も)」も、彼らの仲間に加わる事により、

ここに、愈々(いよいよ)もって、六名もの戦士が、「崇徳上皇」が巣食う、「洛中・太極殿」の前に、集結したのでした。

 

 

それにしても、そこには何者もいなかった―――・・・

この・・・常磐の都である「洛中」には、実に多くの住人達が、暮らしていたはず・・・なのに―――

それが、「崇徳上皇」が、既に「太極殿」を占拠して、自分の根城に変えてしまったからなのか・・・

とは云っても、()の者を取り巻く、手下の下級妖物が詰めていても、おかしくはなかったのに―――・・・

その(いず)れも、いなかったのです。

 

そうした「謎」を解明していくのに、もしかすると「崇徳上皇」は、(おのれ)の強さに(おご)り溺れ、手下を必要としなくなったのではないか―――と、思われたのですが・・・

また、もう一つの予測として、ジョカリーヌが既に、彼女の云う「本懐」を遂げてしまったのでは・・・と、云う、見方もあるのです。

 

それはそれで困る―――いくら手に余るとは云え、亡父の仇の最期を見届けないままでは、今まで自分がしてきたこと総てが無駄になると思ったしのは・・・

 

 

 

リ:あっ―――待て! しの!!

 

 

 

長年、「塊閻(かいえん)」を追い続けてきた彼女にとって、自分が亡父の仇を討てないまでも、せめてその最期を見届けなければ・・・

そう思ったしのは、焦りを隠しきれず、リリアが制止する声も聞かずに、太極殿の奥へと進んで()きました。

 

そんなしのを、大事な仲間を、「大魔障」の餌食にしてはならないと、リリア達はしのを追ったモノでしたが、

しのに追いついた先で、彼女達が見たモノとは―――・・・

 

 

 

秋:ち・・・やべえ方の予感が、当たっちまったようだな―――

  野郎は、常磐なんか、一人で十分だ・・・そう思っていやがったんだ。

市:しかし、これでは・・・私達だけで、大丈夫なのでしょうか―――

 

 

 

太極殿―――いや、そもそも洛中に、他の存在のいなかった理由とは、

「崇徳上皇」は、この常磐を、私物化にしようとしていたのです。

 

それにしても・・・意味深な言葉だけを残し、リリア達と別れたジョカリーヌは―――?

 

しかし、それは、次第に判明してくるのです。

 

 

そんな事よりも、周囲(ま わ)りから聞こえる雑音に、目覚めた者は・・・

 

 

 

崇:ぬうぅぅ・・・小五月蝿(こ う る さ)い虫どもが・・・オレの眠りを妨げるではないわ―――!

  まあいい・・・まとめて始末してくれる。

 

 

 

「大魔障」が目覚めた瞬間、世界は様変わりしました。

 

かつては、常磐独自の、文化結集の地であり、まさに「華の都」と讃えられていた程の、絢爛豪華な場所―――

そして、「太極殿」を含める「京洛御殿」は、その事を象徴するかのような建物であった・・・筈なのに―――

いつの間にか、御殿内の壁や天井は、生き物の臓腑が(うごめ)く、まさしく、「大魔障」の棲み処に相応しい場所と成り果ててしまっていたのです。

 

そんな・・・かつての、華やかりし頃の、御殿の形容(す が た)を知っていただけに、たまもの落胆は尋常(よのつね)ではありませんでした・・・。

 

 

 

た:おお・・・おおお! なんということじゃ・・・崇徳よ、なぜにお主は―――

 

 

 

しかし、「崇徳上皇」は、そんなたまもを一瞥(いちべつ)すると、魔宮の玉座から腰を上げ、(おもむろ)に、彼女達に近付こうとした処・・・

 

 

 

崇:(!)ぅぬう! なんだ・・・これは!どうしたことだ!!

 

 

 

「復活」した自分に、どうせ(あらが)える者などいない―――そうした余裕があったからこそ、たまもの存在を軽く無視する事が出来た・・・

恐らくは―――何者の協力も得られないままの、リリア達ならば、以前の・・・ストゥク=カイエン=グワゴゼウスが、「崇徳上皇」の名を借りて、

常磐を荒らしまわった時の様に、傍若無人に振る舞えたモノだった事でしょう・・・。

 

しかし―――彼が、仮初(かりそめ)の姿ではない・・・本来の姿に戻った処で、何者かによって、戒めを施されてしまったのです。

そのことに、焦るあまりに、先程の余裕が失せてしまった、「崇徳上皇」に・・・

 

 

 

声:フ・フ・フ―――ようやく、捕まえたよ・・・グワゴゼウス・・・

グ:(!)何者だ―――姿を見せろ!!

 

 

 

姿は見えないのに・・・声だけがしてきた―――

けれど、リリア達は、この「声」の主の事を、知っていました・・・。

 

なにしろ、この「声」の持ち主は、「本来の目的」を―――「グワゴゼウス」を「捕縛」する為に、常磐へと現れた・・・

そう―――あの「茶会」でも、申していたのですから・・・。

 

それにしても、「内的宇宙空間(イ ン ナ ー ・ ス ペ ー ス)」に近いこの空間で、自分自身に干渉できる存在が、この(なか)にいようとは・・・

だからこそ、「グワゴゼウス」は、焦りを隠しきれませんでした・・・余裕も失せてしまいました・・・

 

けれど、そのことが―――個人が創る「限定空間」で、彼に戒めを施せられる事こそが、

ジョカリーヌが、グワゴゼウスを凌ぐ、実力を有している証しともなっていたのです。

 

 

そして・・・満を持して、ジョカリーヌは、姿を現わせました。

しかし―――その表情には、いつもの彼女のモノとは違う、或る感情が現れていたのです。

その感情に、思わず後退(あとずさ)りをしてしまう、リリア達―――

 

 

 

リ:(ジョカリーヌ・・・さん??)

蓮:(この・・・御仁―――)

市:(ひどく、怒っていらっしゃる? でも・・・なぜ―――)

秋:(こいつは・・・ヤベぇ所の話しじゃねえぜ―――どーなってやがんだ??)

し:(この人が・・・ここまで憤れる理由が―――)

た:(ぬうっ?! いかん―――)ジョカリーヌ殿ぉ!

 

ジ:・・・判っているよ―――殺したりはしない・・・

  こちらとしても、色々と聞かなければならない事が、あるからね・・・

 

  だけど、本当は―――この場で八つ裂きにしてやりたい!!

  そんな衝動を抑えるので、今は精一杯なんだよ・・・

 

 

 

今、確かに―――耳を疑いたくなるような発言が、ジョカリーヌ自身の口からあった事を、その場にいた全員は聞き逃しませんでした・・・。

 

なぜ、これほどの人物が―――・・・

 

自分達に、「存在の意義」を説く時にも、「個々の生命(い の ち)は大切に・・・」と、教えてくれた人物が―――

まるで、初見であるはずの個人に対して、「生命の剥奪」を臭わせるような言動をしたのか・・・

いや―――それに、そうした感じを臭わせたのは、ジョカリーヌだけではなかった・・・

自分達を、窮地から救ってくれた、ユリアもまた―――・・・

 

けれど、彼女達が、グワゴゼウスに対して、そうしたい理由など―――現代を生きるリリア達にとって、全く知る術などなかったのです。

 

しかし―――これから知ることとなるのです・・・

現在から、500年前・・・「ある人物」に降りかかった、不幸な事件の顛末を―――

 

ですが、グワゴゼウスにしてみれば、全く身に覚えのないことだったのです。

それもそのはず、彼は―――その事件を起こした「当事者」の、「仲間」・・・だったのですから。

 

だから、これからグワゴゼウスの身に降りかかるのは―――

 

 

 

グ:な―――なんだ!お前は・・・オレは、お前の事など知らんぞ!!

 

ジ:・・・「知らない」?

  ―――ああ、当然だろうね・・・私も、お前を見るのは、今日が初めてになる・・・。

 

グ:なんだと?? では、なぜ―――・・・

 

ジ:だがお前は、この名前ならば知っているはずだ・・・

  広域指定犯罪組織「グリフォン」―――その、上級幹部だった、シュトゥルム=ドミチェリ=ナグゾスサール・・・

  その男と、「義兄弟」の契りを交わしている、お前ならばな!!

 

グ:ナグゾスサールの・・・兄貴を、知っているお前は、一体―――

 

ジ:もういい!喋るな!!

  どの道・・・お前がその事を知った処で、お前に自由はない!!

  だが・・・現在、自分がこうなってしまった事の経緯は、知る権利があるから教えてやろう―――

 

  確かに、現在のお前が、こうなってしまったそもそもの原因を作ったのは、ナグゾスサールが起こした「ある事件」が、そのきっかけとなっている・・・。

  だが、それは、直接お前には、なんの関係もない・・・だから―――半ば、「八つ当たり」と、思ってくれてもいい・・・

 

 

 

そう―――総ては「八つ当たり」・・・その一語に尽きたのでした。

 

それにしても、驚くべきは、ジョカリーヌが挙げた、ジョカリーヌ憤怒の原因ともなっている、その「名前」・・・

 

「ナグゾスサール」―――

 

だから、同じ姓名を持つ、この人物が反応をしない道理などなく、慌ててジョカリーヌに、事の真偽を確かめたのです。

 

 

 

リ:え・え? え・え・え?? ちょ―――ちょっと待って・・・

  わ・・・私?? いや・・・私の家に連なる誰かが、ジョカリーヌさんの怒りを??

  でも・・・それじゃ―――

 

 

 

そう・・・その人物とは、リリア=デイジイ=ナグゾスサール。

彼女もまた、ジョカリーヌからの怒りを買ってしまう対象になり得たモノか―――と、そう思われたのですが・・・

 

更にジョカリーヌは、驚愕の真実を、述べるに至るのでした。

 

 

 

ジ:―――そうだね・・・リリア・・・

  確かに、今の私の述べ様では、君も、私の怒りの対象に触れてしまう処となる・・・。

 

  けれども、違うんだ―――なぜなら、君は・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと