その時、ジョカリーヌが語った「真実」に、リリアのみならず、その場にいた誰もが、驚きの声を上げるのでした。

なぜならば―――

 

 

第九十九話;降臨

 

 

ジョカリーヌが知る「ある人物」こそ、現在から500年程前に、ジョカリーヌ自身と親しい関係にあった、「友」―――

その「友」の名も、奇しくも、その場にいる「ある人物」と、深い関わり合いがあるのでした。

 

そう・・・「Odysseia(こ  の  お  話  し)」の、「主人公(中 心 人 物)」―――・・・

 

 

 

リ:わ―――私と同じ名前?? いや・・・それに―――

 

ジ:そう・・・私の「友」だった、リリア=クレシェント=メリアドールが、こいつの仲間であった、シュトゥルム=ドミチェリ=ナグゾスサールに、殺されてしまったんだ。

 

 

 

リリアの、「ファースト・ネーム」である、『リリア』に、「ラスト・ネーム」である、『ナグゾスサール』・・・

その、二つが持ち合わせる意味は、ジョカリーヌが語った今にしてみれば、全くの正反対の性格を持ち合わせていました。

 

それに聞けば、500年程前の、『リリア』と名乗った人物は、事の経緯はどうであれ、

やはり、同年代にいた、『ナグゾスサール』と云う人物によって、殺害をされていたと云うのです。

 

その事実を聞いて、歓喜に沸く、この人物は―――

 

 

 

グ:ハハハ―――! そうか、そう云う事だったのか!

  ナグゾスサールの兄貴から、連絡がないとは思っていたが、まさかそんな事になっていようとはなぁ!?

  だが、流石は兄貴だ、只でくたばるわけがなかったようだ。

  それは、お前の、醜く崩された表情に、よく表され・・・ぐごほぉっ!!

 

ジ:ああ・・・そうさ―――醜いだろう!!

  こんな私を・・・他の誰もが、出来た人間だと云うけれど・・・一皮剥けば、所詮はこんなもんさ・・・

  未だに、500年前に失った「友」の事を悼み、彼女をそんな目に遭わせた者を、憎んでいる・・・

 

  どうだ・・・このまま、いっそのこと―――!

 

 

 

400年ほど前に、常磐で猛威を振るっていた「崇徳上皇」であるグワゴゼウスも、義兄弟のナグゾスサールの事を慕っていました。

 

それは、「悪」と「悪」とが、互いの利害関係が一致していたばかりではなく、互いの「理想」も、同じ処にあったから・・・。

 

けれど、ジョカリーヌの怒りは、結局はそんな処にはなく、「大事な友を喪ってしまった―――」、(ただ)、その事にのみ言及していたのです。

 

でも・・・それはつまり―――「私憤」・・・

大義名分のない、ただの、私的な憤り・・・

而してそれは、全く「小さな」事でもあったのです。

 

そんなモノを・・・「大志」を抱く、ジョカリーヌほどの人物が、持ち合わせていようなどとは・・・

 

けれどその時、ジョカリーヌの「友」を害した、自分の義兄弟を讃えたグワゴゼウスを、

憎々しさ余って、絞め殺そうとした―――その瞬間・・・

一体いつからそこにいたのか、グワゴゼウスの頸部を絞め、あと一息力を込めれば、殺せる状態にいたジョカリーヌの手を、

優しく手を差し伸べ―――囁くように(なだ)めた人物がいたのです。

 

 

 

ユ:ジョカリーヌ・・・あなたが、今そうした処で、あの子はもう、帰ってはこないのですよ―――

ジ:ユリア・・・判っている―――判っているが、私は・・・

 

 

 

いつの間に、そんな処に―――・・・

 

その場に居合わせたリリア達でさえ、ジョカリーヌの怒りの渦中に巻き込まれまいと、遠巻きにしていたのに・・・

 

「東」の評議員でもあるユリアは、そんな彼女に、恐ろしいまでに接近をしていたのです。

 

けれどそれは、ユリアのみが成し得た事―――

何しろユリアは、ジョカリーヌの「相互共有者(ア レ ロ パ シ ー)」なのですから。

 

とは云っても、ユリアは、ジョカリーヌを(なだ)める為だけに、ジョカリーヌに近付いていたわけではなく・・・

 

 

 

ユ:フフフ・・・いかがです、怖いでしょう?

  これであなた達も、判り得た筈・・・なにもなければ、この方もここまで怒りませんもの。

  それに・・・ウフフフ―――「グリフォン(あ な た 達)」も、この惑星(地 球)に目を付けたのが、運の尽きなのです。

  だから、もうお終い・・・なにしろ、この方の「お姉様」達は・・・

 

 

 

ユリアが、それとなくその存在を仄めかせると、その場に居合わせた全員が、異様なまでの「プレッシャー」を感じました。

 

けれど、それは仕方のなかった事なのです。

 

なぜならば・・・

 

 

「地球」は、「太陽」を中心とする「太陽系」を構成する、「一惑星」に過ぎない・・・

また、その「太陽系」ですら、「銀河」を構成する、「一星系」に過ぎない・・・

 

そう・・・その場には、「銀河」にある、数多(あ ま た)の「星系」「宙域」「天体」の運営を任されている、「ある人物」が、降臨(お り た)っていたのです。

 

 

 

ジ:ね・・・姉さん?! な・・・なぜこんな処に―――

 

ガ:お〜やおや、ご挨拶だこと―――

  折角私が、久方ぶりに、可愛い妹の顔を、拝みに来た〜〜ってのに、そいつはあんまりじゃないのかねぇ〜。

 

  ・・・と、まあ? 小姑みたいな事は、この際小さく折り畳んで、隅っこの方に()いてやるとしといて―――

 

  ほほう〜この子か・・・ど〜も♪初めまして―――

 

リ:(い゛??)わ―――私??

 

ガ:そだよぉ〜ん、一体誰に話しかけてると思ってたんだろね。

  私は―――ガラティア=ヤドランカ=イグレイシャス・・・この子、ジョカリーヌの、本当の「姉」さ。

 

  今回はね、うちんとこの「弟子君」からの報告で、あんたを見に来たのさ。

 

  そしたら偶々(たまたま)・・・あいつも、運がないったらないよね〜w

  あんたもそう思うだろう―――リリア=デイジイ=ナグゾスサール殿・・・。

 

リ:わ・・・私の名前を? どうして―――・・・云った覚えもないのに・・・

 

ガ:ああ〜私はね、色んな事を知ってるよ。

  例えば―――500年前にいた、あんたのご先祖さん・・・リリア=クレシェント=メリアドールの事とか・・・ね。

 

ジ:姉さんっ―――!

 

ガ:ま・・・それも、この際は関係ないんだけども―――ね・・・

  ほれほれ、それよりいいのかい? あいつを、そのままにしといて―――

 

ジ:(・・・えっ?)

  ・・・まさか―――?!!

 

 

 

自分とその人とは、話しをしたことすらないのに・・・向こうはなぜか、自分の事を何もかも知っているように感じた・・・

それこそが、その人物の特性―――「総てを()りし者」としての・・・

 

そして又、その人物は、リリアも先程から気になっていた、500年前の『リリア』・・・

その人物の事に関しても、どこか知っている感じでしたが、ジョカリーヌからの制止により、言葉を濁し始めたのです。

 

しかし―――ガラティアが、何者かの存在を仄めかし、ジョカリーヌも、その存在の事に、気付き始めた時・・・

今までにない、凄まじいまでの「プレッシャー」が、ガラティアが降臨してきた以上に、感じてきたモノだったのです。

 

それはまるで―――天空に在る「太陽」が、丸ごとそのまま落下してきたかのように、熱さも伴っていました。

しかしそれは、仕方のないこと・・・

それと云うのも、その存在が所有する、「アーティファクト・ヴァーミリオン」が、その原因でもあったからなのです。

 

ですが・・・危険なのは、寧ろそんな事ではなく―――

 

 

 

ジ:(い゛・・・っ! やば―――・・・)ジィルガ姉さんまで?? 一体、誰が―――・・・

ガ:ああ〜この際だから云っといてあげるけど―――私じゃないよ〜?

 

ジ:・・・だ・と・す・る・と―――?

 

ユ:あらあら、ジルったら―――今回の事は、あの人に直接関わりのない事ですのに。

ジ:やはり君か―――ユリア!!

  あの人に、この事が知れたら、どんなことになるかくらい・・

 

ユ:ですが―――まあ―――仲良し三人姉妹、揃い踏みした事ですし・・・

 

リ:ン・な―――悠長なことやってる場合かって!

  おいおい・・・あのままにしといたら―――

 

ガ:おっ、そだね〜。

  おお〜い! 好き勝手するのは良いけどさぁ―――私らの分まで、きっちり残しといてくれよ〜い!

 

ジ:姉さん・・・そこ、違います―――って・・・

ユ:そうですよねぇ、そこは止めないと―――・・・

 

ガ:だ〜ったら、あの手負いの獅子を止めるの、あんたらがやったがいいだろ。

  私ゃ、()だよ―――なにしろ、一張羅を仕立てたばっかなんだからさぁ〜。

 

 

 

なにやら、世界危急の出来事とは、まるで無関係のやり取りが、そこでなされていた―――

でも、リリア達「地球人」にしてみれば、そこまでの危機は感じていなかったのです。

 

それもそのはず・・・「第七銀河系」―――そこの「管理」「管轄」を任されている、代表の三人が、その場に集結していたのですから・・・

 

 

それよりも、このまま黙っていたら、いつまでもグワゴゼウスに罰を与え続けていたか、(きり)がなかったので、

ここは敢えて、ジョカリーヌとユリアの二人が、力を合わせてジィルガを説得した処・・・

 

 

 

デ:いぃ〜い―――今回は、ジョカリーヌちゃんからの頼みだったから、これくらいにしといたげるけど・・・

  金輪際、私の視界に入った時は、こんなモンじゃ済まさないんだからね―――覚悟しときなさいよ・・・。

 

  それにしても、ゴメンねぇ〜〜?ジョカリーヌちゃ〜ん・・・

  私もぉ、ここに来るまでは、なんともなかったんだけどさぁ〜・・・こいつの顔見たら、急にムカついてきちゃって・・・

  ―――ねぇ、あとも一発だけ、いぃ〜い?

 

ガ:止めときな―――って・・・あんたがこれ以上やっちまったら、「倫理委員会」から、なに云われるか判ったもんじゃないよ。

 

 

 

「私以上に、喧嘩っ早い人がいたもんだ―――」

 

ジィルガの、格好の暴力の捌け口にされ、顔面も、原型を留めないまでに変形し、満足に話すことすらできないでいる・・・

それが―――現在の、「塊閻(かいえん)」「崇徳上皇」と呼ばれた、「ストゥク=カイエン=グワゴゼウス」の、なれの果てだったのです。

 

悪業の限りを尽し、その地域の歴史にまで刻まれた恐怖の代名詞も、所詮、()の者より実力のある者の前に立たされると、どんな風になるのか・・・

 

哀れなる末路を、網膜に焼き付けた時、リリア達全員の溜飲(りゅういん)が、一気に下げられたものなのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと