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〔奇妙な事に、少年と組む事になったタルタロス。
今日は遅いということもあるので、近くの手頃な洞穴を見つけ、二人で野宿をする事になったようです。〕
ゼ:へぇ〜〜、あんたあの ラー・レイ を?
タ:ああ、古風だが、技の一撃一撃に、魂を込めなくちゃならんからな・・・。
それに、一撃必殺の技をはずしちまったら、自分の命が危うくなる、そういう駆け引きは、闘(や)りあうほどに病み付きになっちまってな。
ゼ:へへへ、あんたも、かなりな好きモンなんだな。
そういやァ・・・ここに来る途中に泉があったな、ちょっと・・・・水浴びをしてきても・・・・いいかな?
タ:(フ・・・)なんだ、お前男のクセに、案外ときれいズキなんだなァ?
ま、いいぜ、行ってきても。
ゼ:へへへ・・・・悪りィのな。
〔男のクセに、水浴びがしたいというゼクスに、妙な違和感を抱きながらも、彼の帰りを待つタルタロス。
すると・・・ゼクスが出てから、そう経たないでいる間に、辺りに妙な霧が発生し・・・それに、人に非ざる者も動き出してきたようなのです。〕
タ:(ピク) ・・・・・この匂いに・・・この気・・・・ついに件の者が現われたか・・・。
あいつも、一介の剣士だから、既に察しているとは思うが・・・・行ってみてやるか・・・・。
〔一応、相棒という事もあるのか、ゼクスを心配し、泉の方へ行ってみることにするタルタロス。
しかし・・・意外にも、その道中で、件の襲撃者と出くわしてしまう事となったのです。〕
タ:・・・・・・この、オレに・・・・なんか用か・・・?
魔:ンクククク・・・・古流剣術ラー・レイの継承者とお見受けする・・・・。
不憫だが、その命、貰い受ける・・・・・・。
タ:(クル)・・・・・な・・・っ! お、お前は・・・?!!
〔その襲撃者の正体とは、
腕を六本生やし、その一本一本には、様々な武器を携えており、
顔は常に憤怒の形相、身の丈は優に3mはあろうかという魔物
レリクス
だったのです。〕
タ:(れ・・・レリクス・・・どうしてこんなヤツがこんなところに・・・)
こいつはまずッたな・・・オレ一人ではどうにもなりそうもない・・・撤退も立派な戦術の一つだ!
レ:フハハぁ―――逃すかぁ!!
〔一対一とは言っても、相手は六本もの腕を自在に操れる魔物、二本しかない自分とでは戦力差がある事を痛感しながらも、
この時に選んだ選択は、決して間違えてはいなかったのです。
それよりも、素早さで勝る自分のスキルを生かし、この魔物レリクスを撒いたようなのです。
そして、どうにか泉のほとりまで来るタルタロス、するとそこには・・・・〕
ガサ・・・・・ガサガサ・・・・
ガサッ!
ゼ:え・・・? きゃっ!
タ:え・・・?な・・・・お、お前・・・・
ゼ:バ、バカヤロウ!! なに見てやがんだ!このド変態!!!
タ:お・・・・お前・・・女??
〔そう、なんとゼクスは女の子だったのです。
その事実に突き当たり、頭が少々混乱してしまうタルタロス。〕
ゼ:そ、そうだよ!なんか文句でもあんのか!!
タ:い、いや・・・・別に・・・・。 (はっ!)そ、それより早く服を着ろ!件の襲撃者の正体が割れたんだ!
あれはオレ一人じゃどうにもならない。
ゼ:え・・・・?!
〔すると、今まで息を潜め、タルタロスの後をついてきた、襲撃者レリクスが現われたのです。〕
レ:グハハハァ! ラー・レイの継承者よ!その命貰い受ける!!
ゼ:(あいつは・・・・)
ザパァ・・・・
(今まで水に漬かっていたゼクス、いきなり立つ)
タ:わ・・・わッ! バ、バカ!前を隠せ!!
ゼ:(フフフフ・・・)そうか・・・・キサマが例の・・・・成る程なぁ、これで全て合点がいったぜ。
今度は俺が相手をしてやろう。
レ:ふ。 キサマのような小娘如きに、遅れをとる我レではないわあぁ!!
ゼ:(フフフ・・・・ククク・・・・)この姿をしてるのには、ちょい事情があってなぁ・・・すまねエが、とっとと終わらせてもらうぜぇ・・・。
レ:ぬかしやがれ!小娘めえェ!!
ゼ:(フッ!) いでよ!わが剣、デュランダル!! そして・・・・我が炎と共に・・・・散れ!!
龍炎覇~剣!!
〔炎を纏ったその斬撃は、ラー・レイの・・・自分の剣技によく似たそれであり。 かの、魔皇ソロンのモノを、遥かに凌駕する威力のモノだったのです。〕
タ:んな・・・・あ、あれは・・・我がラー・レイの・・・?(そ、それにあの剣・・・)
ゼ:(へへ・・・)どーにか終わったな。
やれれ・・・・と、ぅん?どうしたタルタロス、オレの方じろじろ見・・・(はっっ!!) こっ、このバカ!あっち向いてろ!!
タ:おぉッと、すまん、つい夢中になっちまってな・・・。
ゼ:(あぁ〜〜あ・・・・ヤレヤレ・・・しくじったぜ・・・) こんな・・・ハズじゃあなかったのによぅ・・・。(ぐし)
タ:うん?なんか言ったか?
ゼ:ぅんにゃ、何でもね・・・独り言だ、独り言・・・と、 さ、もういいぜ。
タ:あ・・・あぁ・・・・すまなかったな。
ゼ:いいんだよ、別に。
タ:なぁ・・・・ゼクスよ・・・
ゼ:うん?なんだ。
タ:お前・・・・一体何もんなんだ?
ゼ:・・・・・。
タ:その・・・・姿にしろ、聖剣“デュランダル”にしろ・・・・それに、あの技・・・。
ゼ:・・・・・・。
タ:オレの・・・ラー・レイと型が一緒とはどういう・・・
ゼ:違うんだ。
タ:・・・・ナニ?
ゼ:違うんだ、オレの修めているのは『羅・零』、一見似ちゃあいるが、全くの別モンなんだよ。
タ:そう・・・・なのか・・・・。 いや、あまりに似ているから、てっきりそうなのか・・・と、思っちまってな。
こっちこそ下手に勘繰って、すまない事をしちまったな。
ゼ:いや、いいのさ。 それに、そいつをあんたが別に謝る事もないだろ?
タ:そうだな・・・・。
ゼ:そうだよ・・・。(・・・・ッへ、にしても、まさかオレの技を、きっちりと受け継いでるヤツがいたなんてな・・・。)
〔気になるこの少女の一言、一体この少女―――ゼクス―――は、一体何者なのでしょうか。
それはさておき、しばらく経ってから・・・・〕
ゼ:なぁ・・・これからどうする?
タ:ぅん?ああ・・・・一区切りついたから、帰ろうと思っている。
ゼ:どこへ?
タ:どこ・・・って、フレンス・ブルグだが?
ゼ:フぅ〜ん・・・じゃさ、このオレもついて行ってもいいか?
タ:あ?ああ、別に構わんが?
ゼ:へへッ、悪りぃな。
〔ミッションを受けて、この襲撃者の一件を片したわけではないので、報告をする義務などなかったのですが、
やはり懐かしさ故か、皆の顔が急に見たくなったタルタロス。
その足を、一路フレンス・ブルグへと、向かわせたようです。〕