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〔そう―――― 確かに、彼女達はそう言ったのです。

――性別を超えた、特別な存在――

と・・・。

 

ナゼ―――彼女達は、そんなことが言えたのでしょうか―――?

やはり、それにはそれなりのわけが存在したのです。

 

では・・・・その断片を・・・・これから詳らかにして行く事にいたしましょう・・・・。

 

 

そう、それは――― 今ある地上界が出来る頃より、ほんの少し前――― ほんの・・・一億と、五千万年位、前の事です・・・。

そこは――― 地上界ではない――― 或る処―――  この世界が創造された刻に、その主たる者が住まわれた処―――

=ケネメア=

そこでのお話となるのです・・・。

<その前に――― この場所の地理などは、また後のほうでやりますので、割愛させていただきたいと存じます>

 

 

ここは、そんな『天上界』とも云える、この場所にある或る一角。

その或る場所で、今まさに、迫害をその身に受けんとしている者が一人―――  では、その者の容姿―――とは、

『ピーチ・ピンク』の長髪に・・・『ショッキング・ピンク』の瞳・・・

そう・・・・誰あろう、若かりし頃の―――〕

 

 

へ:(ヘルネリア=カーリナハールト=テシュラーハンヌフォルト;推定年齢・5,015歳;女性;

この頃は、まだ駆け出し中の彼女、でも、この5,000歳というのも、この中ではまだまだ若い方、

龍族は、10,000歳を経て、ようやく一人前とされる・・・。

でも、ナゼ彼女が、同じ処の住人達に、迫害を受けるのかは、不明。)

 

うっ―――ううっ―――お・・・お許しを・・・

 

 

バ:ナニを言ってんだい!! ここはね!あんたみたいな、穢れた血を持つ者が、入っていい処じゃあないんだよ!?

バ:そうだ! お前達のような――― 暗黒の血を持ちし者が、この地ケネメアに留まれる事を・・・あのお方に感謝するがいい!

バ:そのご恩を忘れて―― 我等の庄に、何しに来た!!

 

へ:ああ―――っ! ご尤(もっと)も―――ご尤もでございます―――!!

 

 

〔この――― 一人の女性を取り囲むようにして、飛び交う、ありとあらゆる罵詈と罵倒・・・

――穢れた血――

――暗黒の血を持ちし者――

 

そして、それを浴びせかける者達――― この者達は一体―――? 何の権利があって、この一人の女性を、こうまでして迫害することが出来たのでしようか?

それは――― やはり、彼等の云う、血の関係にあったのです。

 

 

そう・・・・彼等こそ、この地、ケネメアに住まう者の一種―――

バハムート族

だったのです・・・。

この、 バハムート という一族は、その血統を遡れば、この 一億五千万年前 という時間よりもっと前・・・

その神格性でいうならば、頂点に立つ『ディバイン・ドラゴン』の、血を引くという・・・・由緒正しき一族だったのです。

 

では――― 彼女・・・・ヘルネリアは、違うのでしようか・・・?

結論だけを先に述べると、 違う のです。   ナゼ―――?

それは・・・・先程の、彼等の言葉にもあったように、『穢れた血』『暗黒の血を持つ者』に起因していたのです。

 

なぜなら・・・・彼女の一族こそ――― その昔、背徳と知りながら、暗黒の―――魔界の者と、契りを交わし、出来てしまった、その末裔だったからなのです。

その一族とは―――

ティアマット族

・・・・。

 

 

ですが――― 彼女には何の罪もない、でも、彼等には、そうと知りながらも、当たらずにはおれなかったのです。

 

そんな折――― この庄での警備全般を、一手に受け持っている若者が、この騒ぎを聞きつけ、やってきたようです。

その若者の容姿は―――

 

髪の毛は、まるで何かの樹液で、固めたように逆立たせ

また、背負っている剣も、大層なモノ

そして何より、一番目を引くのが

その全身に施された、対魔術防御用の

『呪紋』

と呼ばれる刺青・・・

 

『ダーク・ブラウン』の髪の色に・・・『ゴールド・イエロー』の瞳・・・

 

その名を――――〕

 

 

ゼ:(ゼピュロス=クルーガー=スルゥドリクジュ;推定年齢・5,018歳;男性;

  この者も、得てして若い――― ただ、その全身に施された刺青のせいで、好んで近付く者は、誰一人としていない―――

  そして――― いうなれば、本編での、あのあどけない少女こそが、彼なのである・・・)

  

  いよう―――どうしたってンでぇ。 この女―――なんかやらかしたのか。

 

バ:おお―――! ゼピュロス、まあ聞いておくれよ! この・・・穢れた血を持つ女が、この庄に足を踏み入れたんだよ!

 

ゼ:ああん―――?! そんなことか?

 

バ:そんなことじゃねぇ!!お前も知ってるだろ?!! この・・・穢れた血の奴等・・・ティアマットの血を引く者は、

  何人(なんぴと)たりとも、この聖なる場所に、足を踏み入れてはならない・・・ってことをよ!?

 

ゼ:ああ―――そうかい、分かったよ―――。 それから先は、この俺の仕事・・・あんた等は、帰って作業の続きでもしててくれ・・・・。

 

バ:そうかい――― 頼んだよ?

バ:ヤレヤレ――― これで一安心だ・・・・

 

 

ゼ:・・・・・。(さぁ―――て・・・と、どうしたもんかねぇ、実際・・・)  ――――ん?

へ:あ―――・あの・・・私を処断する前に、話を聞いて――― お願い・・・。

 

ゼ:・・・・・なんだ。

へ:(あ・・・良かった・・・)

  私――― 実は、魔導の勉強をしてて・・・それで、『万能薬』≪エリクサー≫を作るために、必要な薬草を採ろうとしていたの・・・

そしたら、知らない間に、この庄の入り口まで来ていて・・・禁忌の事なら、私でも知っています―――でも・・・気付いたときにはもう遅くて・・・

軽率だったとは思います・・・・ですから―――今回だけは、見逃して―――!?

 

ゼ:・・・・・。

へ:だ・・・ダメ・・・・なんです・・・か?

 

ゼ:(クル・・・)  この俺が―――後ろを向いている間に・・・・消えな。

へ:あ―――っ! そ・・・それでは?!

 

ゼ:別に・・・あんたなんかに、同情しているわけじゃあない・・・ただ、この俺の剣は、その手にかける者を選ぶんでなぁ・・・

へ:(あ・・・)ありがとう―――ありがとうございます―――! このご恩は決して―――

 

ゼ:忘れてくれて結構よ――― 第一、あんたを見逃した事が、庄の皆に知れたら、大罰くらいだかんな・・・・

  いいから――― さっさと消えなッ!!

 

へ:は・・・・はいっ!

 

 

ゼ:(・・・・・行ったか・・・・)

  はあ゛〜〜〜――――ヤレヤレ・・・誰が好き好んで、女形を手にかけれっかよ・・・俺の・・・デュランダルが錆っちまわァ・・・

 

 

〔そう・・・・これが、彼と彼女の初対面≪ファースト・コンタクト≫だったのです。

 

かたや―――― 足を踏み入れてはいけないという、禁忌を犯してしまった咎人―――

かたや―――― それを罰する、刑吏―――

だったのです。

 

 

そして―――― この経緯を・・・・まるで見守るかのように存在した視線が・・・・三つ・・・・〕

 

 

誰:――――お方様・・・いかがなものでしょう―――?

誰:・・・・そうね。 禁忌を・・・タブーを破ってしまったのは、いけない事だけれど・・・たったそれだけで、弑してしまうのも酷いものだわ・・・

誰:あら・・・あなた、まだそんな甘ちゃんな事を? 折角あの方がおつくりした、法を破るのは、いけないことだわ?

 

誰:だからといって・・・生き永らえている命を絶つというのは、忍びないわ・・・。

誰:はいはい――― 分かったわ。 一度そうと決めてしまったら、梃子でも動きそうにないんだから・・・・あなたは。

 

誰:うふふ――― ごめんなさいね?

誰:まあったく――― 誰に似たんだか・・・・

 

誰:さてと――― そろそろお時間のようですぞ・・・。

誰:あら、もう?? まだこの後の経緯・・・見ていたいわ―――

誰:コラコラ・・・まぁたへンに首突っ込んじゃって、あの方にお仕置きうけることになるわよ?

 

誰:ふふふ――― それなら、私が一番に望むところだわ??

誰:(あちゃ――――・・・・そうだった・・・) バカ言ってないで、帰りますわよっ!!

 

 

〔この・・・・三者三様のセリフを吐く者達。

未だ、その名を出してはいませんが・・・・そのやり取りを見ているだけで、誰のものか・・・は、あへて言及はいたしません。

但し――― 少し分かりやすくするなら・・・

 

一人は・・・・・男

背には、身の丈(約250cm)ほどあるような大斧を背負い

言葉少なではあるが、どこか威厳の漂っていそうな感じのする者

推定年齢は、20,028歳

 

もう一人は・・・・・女

上記の男より『お方様』と呼ばれる。

言葉遣いも至極丁寧で、どこか嫋(たおや)かそうな印象すら与える

推定年齢、10,018歳

 

最後の一人も・・・・女

この『お方様』と、タメ口を利いているようではあるが、

それは、二人の仲が親密であるから・・・と、いえよう。

ただ、その言葉の端々には、油断のならないことが、見え隠れしているようだが・・・?

推定年齢、10,018歳

 

 

さて――――この三人・・・後のほうで、ゆっくりと詳らかにしたいので、これはこの辺で・・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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