第五話 痛みに耐へし者
<Ⅰ>
〔さて・・・意外な成り行きから、ここの住人になる事になった、エリアの親衛騎士団 “エーデルリッター”『紅焔』 の四人。
特に、その中でも、強烈な印象を与えたのが、かの“団長”である、
キシリア=リヒトブレム=エルダーナリシュヴァアラ
だったのです。
(印象が強い・・・・って、何せ『伝説のM』ですから・・・^^;;A)
では、どうして、彼女がそんな存在になってしまったのか、エリアとの馴れ初めも併せて、綴って行きたいと思います。〕
―――時機(とき)は―――
―――この世が出来―――
この世に残る、最古の歴史を記した文献
―――『アルメセラ紀』―――
その、『史記』とも呼ぶべき書物の
一番最初に記されている出来事
―――『大禍刻』―――
(おおまがとき)
それよりも、ずっとずっと前のお話となるのです。
{*ナゼにこういう書き出しになるかというと、この『アルメセラ紀』の、“大禍刻”の項目より、以前(まえ)の出来事は、記されていないから。
いわゆる、この“大禍刻”以前が『有史前』であり、以後を『有史』と呼ぶ。
ちなみに、“大禍刻”とは、天意に背いた或る者が、かの地を追われる際、かの地の一部の崩落を起こさせ、地上の各地に魔導災害を誘発させた事象の事を言う。}
〔或るところに――― 薄暗い牢獄で――― 首を、鎖でつながれた少女が――――
何か悪いことをしたのでしょうか、数人から、仕置きを受けているのが、見受けられます。
そして―――・・・それを じっ・・・ と見つめている視線が――――
どうやら、そちらも同じく少女のようですが、その表情は、どことなく虚ろで―――― 何も感情を持ち合わせていない・・・・
まるで、『人形』のような存在であるようです・・・。
(この・・・・光景、ようく覚えていて頂きたい・・・・)
そして――――― 刻は流れ―――― 現在。
新しい顔ぶれが加わったところ、その喧騒ぶりは、相も変わらず――――・・・と、言ったところのようです。〕
ア:おぉ~~―――い! どいたどいた――――!! 大事な書類が、通過すっぞぉ~~―――!!
〔どうやらアダナが、ギルドの大事な資料を搬送中のようです。
――――が! しかし・・・・なぜか、その足元には、あってはならない 『ヒモ』 が???〕
ガッッ――――☆
ア:ぉうわっ??!!
ずっ・・・ ででぇぇ~~ん☆
ア:あ・・・・っ、あたたた・・・・
ありゃ? な、なんでこんなトコに紐がぁ?! (って)・・・・ぁ゛あ゛~~~っ!!
だっ、ダメぇぇ~~~っ!! それ、ヱルムのヤツに渡す、大事なしりょ・・・・
掃:(単なる、お掃除オバサン) えっ?! ぁんだってぇ?!!
し ゅ ご ご ご ゴ ・ ・ ・ ・ ・
〔当然の如く・・・足元の見えてないアダナ、その紐に脚を引っ掛けてしまい、大転倒。
大事な資料を床の上に―――と!その時、通りかかった掃除係の操る、最新式のクリーナーが・・・・(嗚呼ァ・・・・無常)〕
ア:(え゛・・・??) ――――・・っッそぉお~~~!?
〔何の、抵抗らしい抵抗も見せないまま、そのクリーナーの餌食になってしまった、大事な資料の数々。
(まあ・・・それが当然といえば、当全の結果なのでしょうが・・・)
すると、まるでそれを狙い済ましたかのように、このお子が・・・・〕
キ:ぁああら! これはまた、とぉほほんでもない大失態ですわねぇ~? アルディナさぁん?
ア:(ンげっ―――!) キっ・・・キリエ!! なっ、なんでお前が・・・・ここに?!
キ:あぁら、ご挨拶ですわねぇ~? それよりも・・・見ましたわよ?
ヱルム様に渡すべき、大事な資料の数々を・・・こともあろうに、ゴミくずにしてしまった瞬間をねぇ?!!
ア:うっ・・・――――ぐっ・・・くく・・・
キ:ぉお―――――っほっほっほっほ!
今更ながらに、ご自分の犯した罪に、苛(さいな)まれるコトねぇ? お――――っほっほっほっほ!!(ちらり)
ア:(っきしょ~、まったくイヤなヤツに見られたもん・・・って、ありゃ??)
―――・・・なんだ?こいつわ・・・ 紐ぉ??
おい、キリエ、なんでお前が、私が脚を引っ掛けた紐を・・・・・
キ:“こつぜん”
ア:にっ・・・・逃げやがったなぁ~?!
あんのガっキゃああぁ~~~! 今度見つけたら、タダじゃ済まさんっ―――!###
〔そう~、この失態を、コトもあろうに、エーデルリッターの団長である、キリエに見られ・・・
しかも、痛いところ突かれ三昧になってしまったようです。
ですが・・・・ふとしたきっかけで、自分が脚を引っ掛けてしまった紐と、同じようなものを、キリエが持っていたことに疑問を抱くアダナ。
そして、そのコトの正誤を質すべく、キリエに聞こうとしたところ・・・なんと、彼女は 霧・霞 の如く、姿を晦(くら)ませていたのであります。
~~――・・・と、いうことはぁ? そう! 見事、この“イケナイ少女”に謀られた、『死せる賢者』殿がいたわけであり・・・
しかも、間の悪いことには。〕
コ:(あっ、ここにいた・・・) ちょっと―――! アダナ―――! ヱルムが・・・長老様がお呼びよぉ―――!?
ア:(ンげっ――!) コ・・・コーディ・・・。(やっばぁ~~)
コ:早く、早く―――! 長老様、待ってんのよ―――?!
ア:あ゛・・・・は、はひ。
〔そう、タイミング・サイアクで、五人の支柱<フィフスメント・ピラーズ>の筆頭である、彼女・・・
コーデリアさんに見つかってしまい、逃げるにも逃げられなくなってしまったアダナ・・・
仕方なく、手ブラで長老室に・・・〕