<X>
〔その一方で―――――
この状況を見ていたAは・・・・彼女達二人を、お互いの事を、もっとよく知り合えたほうがよいと思い、しばらくそのままにする事にしたのです。
そして、自分自身は、本来自分がいるべき処――――
―――ケネメア――――
そこにある
―――パレス;=ヴェルフィオーレ=―――
に、戻ったのです。
そこには、このAと、その存在を等しくする二人が―――・・・
ひとりを――G――
と
もう一人を――N――
と、そう称する事にいたしましょう・・・。
そして、この三人の・・・会話をよく注意して、御覧頂きたい・・・。〕
G:おお――― 姉君、ようやく戻られましたので―――?
A:ああ、それよりも、お前のほうは、体の方は、大丈夫なのかい?
G:はは――― 手前の事は、心配めさるるな、これ、この通り―――
A:余り・・・やせ我慢をするな・・・。
生来より、体の丈夫でないお前が産気づいて、一人子を産んだんだ・・・・お前の活力も、その稚児に大半を採られて・・・
G:申し訳・・・・ありませぬ・・・・。
だが、自分の体の事は、自分がよう心得ておる、たとい、子を生まずとも、あと余命10世紀も持てまいて・・・。
A:だから・・・お前の、その能力を胎内に凝縮し、次世代に託したのか・・・
G:そうですとも―――。
〔これは、そのうちのGとAとの会話。
その一部によると、Gは生まれつき体が弱く、余り永く生きられない・・・・とか、
そして、自分のもてる強大な能力を、次世代の・・・・――我が子に託するの法――とは・・・
そう、これが、古えの秘術『イデアル・ヒュージー』の“遺伝”だったのです。〕
A:そちらのほうは・・・・どうだい?
N:お姉様・・・・ええ、とてもよく眠っております。
A:そうかい――― どれ、私にもよく見せておくれ・・・。
フフ、本当だ・・・生まれたころの、Gを思い出すよ・・・・。
G:おや?そんなによく似ておりますか?
A:ああ、本当さ―――。
父なる、我等が創造主神様が、最初に私を“炎”から取り上げ、そしてその“灰”と“塵”と“土”とでGを・・・
“水”と“光”と“樹”からNを、お創り給うたのだから・・・。
〔そう・・・Gばかりではなく、もう一人のNまでも、Aの事を“お姉様”と、そう呼んだのです。
つまり、Aは、GとNの『姉』であり、Gは、Aを『姉』、Nを『妹』に持ち・・・Nは、AとG、そのどちらをも『姉』に持つ・・・・
この三人は、『姉妹』だったのです。
それにしても、この姉妹達の父は、その妻より、この三人を・・・・と、いったようなことではなく、
Aを
“炎”から・・・
Gを
Aの“灰”と、“塵”と、“土”から・・・
Nを
“水”と“光”と“樹”から・・・
取り上げた―――― と、いうことなのです。
これは、つまるところの、『神』と、その『御使い』の関係そのもの・・・・
そう――― 彼女達は、“神”の『申し子』、Aをその筆頭とし、GとNをその補佐・監視役とする・・・・
それこそが、『理想』だったのです――――。
――――・・・・が、しかし、現実とは、そう甘くはないもの・・・・
一つの糸の絡まりが、こののちの、世界の破綻につながっていこうとは・・・・・(とはいえ、今回は、そこまでは語られないのです。)
―――閑話休題―――
そしてその後、AはGの稚児をNより譲り受け・・・・あやすようです。〕
A:(おお―――― よしよし・・・・) ――――・・・そういえば・・・。
G:(ぅん?)いかが・・・・なされましたかな?姉君。
A:まだ・・・・この子の名前、決まっていなかったねぇ・・・。
G:おぉ――― 言われてみれば・・・では、姉君が付けて下され。
A:おや、いいのかい? じゃあ――― そうだね――――
ヱルメス=ヴァーユ=ジェニセス
ではどうだろう?
N:・・・・よいお名前です。
その名に“風”を冠するとは・・・・この子に、良き風の吹かん事を・・・。
〔その稚児は、Aよりその名を授かり、名を・・・・
ヱルメス=ヴァーユ=ジェニセス
<Yelmeth=Vearju=Genuiceth>
と、したようです。
(この・・・稚児が、この三人姉妹の女神の運命を握っていこうとは・・・・)〕