<U>
〔その一方―――
『紅焔』のメンバー、グルカとキリエが、フレンス・ブルグから北北西にある、ひときわ深い杜――――通称『樹海』に、
訪れているようです・・・〕
グ:フゥム・・・ここは、なんら変わりはないよう・・・・だな。
キ:えぇ―――― そのようね。
――――・・・・あら?
グ:どうした、キシリア。
キ:あれ・・・。
獣:フシュルルル・・・・
グ:ほう、レギオンか、余り・・・・この杜には似つかわしくない存在・・・・だな。
キ:(にィ)そのようね・・・・
グ:キシリア・・・・ここで待っていろ、すぐに終わらせる。
キ:あら、そう? なら・・・・任せるわ。(うふ♡ 相変わらず頼りになるヒト♡♡)
レ:グルルル・・・・・ゴルルル・・・・
グ:出会って―――・・・そう間もなく、心苦しい限りなのだが・・・な。
滅ッさせてもらうとしよう・・・・出でよ!!『ヒューペリオン』!!
ぬぅぉおお!!
=クリムゾン・ノート=
〔この二人が、この地を訪れているというのは、定期の巡回か何かなのでしょうか・・・
――――と、そう思うまもなく、そこに出てきたのは、ベヒーモスの上位種である『レギオン』だったようで、
しかし、グルカが、今、言っていたように、古えから“聖地”とも崇められているこの地に、こういう魔物が出るとは、考えられない事だったのです。
それ故に、早々に滅っするのですが・・・・
実は、このレギオンという種、通常のギルドのミッションでも、“ハイ・マスタークラス”に、属するくらいに、高難度とされているものだけに、
相当に倒すのに、苦労するようなのですが・・・・それを、グルカ一人で―――とは・・・
ですが、彼一人で十分という、背景の裏側には、裏打ちされる彼自身の 武 にもあったようで・・・・
その証拠に、グルカは自分の背丈(250cm)ほどもある“紅蓮の大斧”を創造し、それを一振りすると、その刀身からは逆巻く炎が―――!!
そう―――・・・この『大斧』こそ、彼自身の武器であるところの――――
“フレアー・ターフー”『ヒューペリオン』
だったのです。
(しかも、この時のこの技は、この武器の固有のモノ)
そして――― この魔なるモノを討滅した―――― と、そう思われた時!!〕
レ:グギャァァ――――オ!(ズズ―――・・・)
グ:ぬっ?!!(し―――しまった、仲魔の陰にひそんで、まだ隠れておったか―――)
キ・・・キシリア!!
〔そう、たった一匹だけだと思われていたその魔獣、実は、仲魔の陰に潜んでいたようなのです。
いや――― それどころか、未確認ながらも、『樹海』の樹々より、数十匹とは下らずも、現われ出でたのです。
しかも、その数が、キリエに向かい一斉に――――!! と、ところが―――・・・〕
キ:(フ―――フフフ・・・)哀れな・・・まだ、グラディウスの手にかかっておれば、楽に死ねたものを――――・・・・
=キリエ・エレイソン=
〜主よ、憐れみ給え〜
出で来たれ!! ヴェンティシュカ!!
ヴ:キシュルル・・・・・
キ:さ―――・・・お食事の時間よ
ヴ:キシィャアァ――――――ン!
〔キリエ、何もうろたえることなく、召喚したる魔獣が一匹・・・・
その魔獣―――― 身をクリスタルか何かで造形されているらしく、無色透明・・・・なのですが、
その眼は、まるで、慈悲のかけらさえ持ち合わせていない、サメの様・・・
しかも、剰(あまつさ)え、その獣の身からは、常に凍気が噴出していたようで―――・・・・
すると、その魔獣、キリエの下した号令一つで、レギオン達の群れに踊りこみ・・・・・
その牙で――――・・・・
その爪で――――・・・・
かの者達を、貪りだしたのです。
そして――――〕
キ:よし―――― そこまでよ・・・・ヴェンティシュカ。
私の下に、戻ってきなさい。
ヴ:キュルル――――・・・・グゥルル・・・・・
グ:お―――おィ、キシリア・・・・
キ:あら、どうしたの・・・・グラディウス。
グ:お前―――まさか、アレをする・・・・
キ:(フフ―――・・・)ええ――――そうよ・・・・と、言ったら?
グ:すまんな――――・・・
キ:どうして・・・・謝るの?
グ:いや――― 今のは、お前ではなく、こ奴等・・・・に、だ。
それがしが、須らく討滅しておれば・・・・
キ:これから、無惨な死に目には、遭わなかった―――・・・・と?
まぁ、いいじゃない・・・・どうせ、このような奴らは、この子の腹に収まるか・・・・
これから私が行う、刑の執行で滅びるしか、遺されていないのだから・・・・
グ:ヤレヤレ――――・・・・(だからこそ・・・・だ)
〔この時―――キリエ、ナニを思ったか、狂える魔獣の“食事”も中程に、自分の下に、戻るように促したのです。
すると―――・・・自分の慾求も満足に満たされぬまま、呼び戻される事に憤慨するもの・・・・かと思いきや、
なんと、かの魔獣は、素直に主の命を聞いたのです。
(――――に、しても、キリエの今までのこの言動・・・・普段、ヱルムやアダナに、ちょっかいかけているものとは少し違う――――ようです・・・が?)
そして――― 怯える魔物たちを尻目に、『狂獣』ヴェンティシュカは、主キリエの側に侍したところ・・・・〕
キ:さぁ――― 我が、忠実なる下僕よ! 今こそ、真の姿を見せるがいい―――!!
ヴ:キュゴォオオオオオ−−−−−−・・・・・・
ド ・ ・ ・
ザ ス ン!
〔そして、またもキリエの号令一つで、今度はその姿容を変形させる魔獣・・・・
それは―――
“常にその穂先より、凍気を纏いし、一つの長柄”
に・・・・
そう、それこそは、エリアの持ちたる
『真紅の飛槍』≪スカーレット・ブリューナク≫“ゲイフォルグ”
と、並び称される
『凍てつきの画戟』≪フローズン・ハープーン≫“ヴェンティシュカ”
だったのです。〕
キ:(フ―――・・・)逝く・・・・わよ!!
レ:(ビクっ――!!)ギャウゥ・・・・
キ:遅いっ―――!!
=リヒト・ゾイレ=
〔その・・・・畏るるべきモノを見・・・・一目散に逃げようとするレギオン達・・・
―――――が、しかし、 凍てつきの画戟 を、持ちたるキリエが一跳躍した刹那・・・・
彼女達の身体より、眩いばかりの『凍てつきの閃光』を意味する波動が繰り出され・・・
そして、それが通った後は、総てが――――・・・・木っ端微塵・・・・ただ、それだけが遺されていたのです。〕