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〔その一方――― こちら紅焔では・・・〕
ゼ:団長――― こいつァ一体・・・
キ:見たようね、ゼクス・・・。
ゼ:『見たか』じゃねぇーだろ? これ・・・って、もしかして、アレ・・・なのか??
キ:ええ――――そうよ、それにね、私たち、これで今日二度目なの。
ゼ:“二度目”・・・って・・・ことは??!
グ:そう――― かくいう、それがしもだ。
ゼ:おヤッさんまで――― するってぇコトは、猊下は?!!
キ:あの子なら・・・もうあの人のあとを、ついて行ってるわ―――
グ:ジョカリーヌ・・・・か。
キ:ええ・・・・。
さぁて、ひと働きしてもらうわよ、ゼクス。
ゼ:ああ、あいつンとこに行くんだろ。
〔この三人は・・・・どうやら、今回偶然にも起こってしまった事象に、心当たりがあるようです。
それにしても、この時キリエが言っていたように、エリアも何かを相談しに、ジョカリーヌのいる奥の院に向かっていたようです。〕
ジ:これは―――・・・エリア殿。
エ:ジョカリーヌ・・・どうやらあなたは、感じてしまったようね、
だから私はここにいるの・・・早速で悪いけど、もう一度これを御覧になって頂戴―――
〔エリアの腕(かいな)の中にあったのは―――先程の一輪の花・・・・〕
ジ:(うぅ〜〜む・・・)説明がつかぬ・・・・。
この花の活力が、ヱルミナールの気に触れて、しおれてしまったのは、妾の目でも見させてもろうたこと―――・・・・
じゃが、あの後のアルディナの呪ハ、全くといっていいほど・・・・
エ:そう―――でしょうね・・・。
ジ:(ぅん?)
エ:だって、これは『ドルイド』ですもの。
ジ:な―――なんと?!! ドルイドですと?!!
エ:やはり・・・その存在自体は、存じ上げていたようね・・・。
ジ:存じ上げるも何も・・・その術式は、『禁忌の術』として知られており、
しかも・・・『魔女』が得意としていたというものではないですか??
〔そして、そこで明かされた衝撃の事実。
なんと、エリアがあのときに起きた現象の種を明かしたのです。
そして―――それが何であるかを知っていたジョカリーヌ様・・・〕
エ:――――かつて、天に内乱ありき――――
ジ:(え―――・・・・?)
エ:―――天意に背きしその者は、己が術に心酔し、かの禁忌の術をして『大禍刻』(おおまがとき)と呼べる大厄災をおこせり・・・
そして、天意を汲みし『次元の調停者』により、その悉(ことごと)くを封ぜられしめん―――
ジ:その―――文言は・・・・
エ:そう――― この世界に現存する、最古の歴史書『アルメセラ紀』の“大禍刻”の一節よ・・・
ジ:なんと・・・・そ、それでは、創り話とばかり思われておったあれは―――
エ:そう、紛れもなく事実あったことよ。
でもね、ジョカリーヌ・・・その『アルメセラ紀』、かの大厄災があったときより、数世紀ものちに編纂されたものなのよ・・・
そんな・・・そんな、ほぼ創り話に近しいことを、後の世に伝える・・・だ、なんて・・・全くもって愚かしいことだわ――!!
ジ:エ――― エリア殿・・・。
エ:ごめんなさい・・・少しグチっぽくなってしまったわね・・・。
ところで、あなたも非常に興味を持ってしまったみたいだから、これから私がお願いすることに、耳を傾けて下さらない?
ジ:うむ・・・・それは構いませぬが―――
エ:そう・・・・ありがとう。
では、これから『樹海』の中心部に赴いてもらって、そこに記されている、ある石碑の碑文を書き写してもらいたいの・・・
ジ:なんっ―――・・・・と?? じ・・・樹海??
あの・・・神聖なる地を・・・不浄の存在である妾が・・・差し支えありませぬのか??
エ:その事なら心配ご無用。(ゴソゴソ)
これを身に付けていさえすれば、大丈夫よ。
ジ:これは・・・・“寡黙の珠”と伝えられる・・・『グレアー・オーブ』ではございませぬか?!
エ:そうよ、それを持ってさえいれば、あらゆる結界をすり抜ける事ができるわ・・・
今回の一件・・・あそこを荒らそうとしていた連中も、これを使った形跡もあるようだけど・・・
その前に、あの二人の手によって、須らく掃討された・・・・と、いうところみたいね。
ジ:あの二人―――― キリエ殿とグルカ殿・・・と、いうことは―――
エ:後・・・・頼みましたよ、ジョカリーヌ・・・。
ジ:は―――。
〔そこで語られたのは、『史書』の一部と、その書物が出来上がったところの背景・・・・
しかし、そこには、“ある歴史の事実が曲げられて伝えられている―――”とのことに、
エリアは内心憤りを感じている・・・と、いったところのようです。
それ故に、ジョカリーヌ様に、『聖地』を訪問し、その中心にある、とある石碑の碑文を、読み取らせて来させようとしているようです。
でも・・・ジョカリーヌ様も危惧している通り、彼女の身は『不浄』であるがゆえに、自分の身体―――
あるいは、その神聖なる地に、悪しき影響を及ぼすのでは・・・と、思っていたようです・・・・が。
そこでエリアが、ジョカリーヌ様に手渡したのが、総ての結界の力場を中和せしむるという、『グレアー・オーブ』(別称;寡黙の珠)だったのです。
しかし―――ここでエリアは、とある事を嘯いていたのです。
それは、今回のこの一件、何者かが企て、たまたまそこにいた紅焔の二人に掃討されてしまった――――と、言う事・・・。
(それをジョカリーヌ様は、“ならばあの者達も知っている事?”といったようですが、それはどことなくはぐらかされたようです。)〕