第0講“  ”番外編“ 〜おひぃと婀陀那〜  ――其の参――

 

<いち>

阿恵華と婀陀那が初めて顔をあわせてから、やがて、二年の歳月が経とうとしていた。

彼女達は、彼女達の両親の知らない所で密会を重ねていたが、
悲劇の幕が切って落とされたのは、丁度、婀陀那高3、阿重霞高2の、初夏の出来事であった・・・。

 

(それは・・・、とある、雨の降りしきる夜半の出来事である・・・・。)

 

 森野邸 ―――公主、婀陀那の部屋――― 

(静かに読書に読み耽る婀陀那の姿がある・・・・、と、そこへ・・・・・)

ポタリ・・・・ポタリ・・・・・

婀:・・・・・。どうした、忠兵衛、中に入れ。                     ・・・・・(うん?) どうした、中に入れというておろ・・・・・

ドサッ!!

婀:な・・・!! ち、忠兵衛!! どうしたのじゃ! その傷は!!
忠:も・・・・、申し訳ありませぬ・・・、公主様、ち、忠兵衛・・・・・一生のふか・・・・・く・・・・・。

婀:もうよい! 何も喋るな・・・・(あぁ・・・・) これ! たれかある!! 妾の手の者が重傷ぞ!!
忠:よ・・・・よいのです、公主様・・・・、あっしは・・・も、もうそんなに長くありやせん・・・・・、そ・・・それよりも・・・・

婀:何じゃ! 何が言いたいのじゃ! 忠兵衛!!
忠:お・・・・お気をつけくだ・・・さいま・・・せ、・・・う・・・裏でなにや・・・・らわ・・・・グ・・・が・・・!
  あ、あっしをこんな目に遭わせたのは・・・・、柾木の手の者・・・・、お気をつけ下さり・・・・まわ・・・・
婀:何を・・・・・何を言うておるのじゃ?! お前をこんな目に遭わせたのは、柾木の手の者と申すのか?

(首を横に振る忠兵衛、だが、そのすぐ後、縦に振り始める)
婀:どっちじゃ・・・・、一体どっちなのじゃ・・・・、柾木の手の者なのじゃな・・・? どうなのじゃ、返事をせよ!!

(忠兵衛、最後に首を縦に振った直後に全く動かなくなる)
婀:忠兵衛! 忠兵衛!!
(ガクガク)

医:申し訳ありません! 公主様、遅くなりまして・・・、で、患者はどこに??!
婀:おぉ! 遅かったではないか!! ここじゃ! 早よういたせ!!

 

医:・・・・・・・こっ・・・これは・・・・・。                           婀:どうしたのじゃ! 早よう、見て下されよ!!
医:ダメです・・・・、もう・・・・事切れております。
婀:な・・・・・う・・・ウソじゃ・・・そうじゃろ? ウソじゃと申されよ・・・・!!                      医:いえ・・・・残念ですが・・・・

婀:う・・・ウソじゃ・・・・! 妾は信じぬ・・・・信じぬぞ!!!               ぉぉぉおおおおおお・・・・!!!(婀陀那激しい嗚咽)

医:(公主様・・・・)おィ、お体を悪くされるとまずい、ご寝所にお連れしろ・・・・。

(丁度その時、忠兵衛が最初に倒れた場所にて、医師の助手、何かを見つけて)
睦:・・・・・・・・・・。(グシグシ・・・・  ニャ・・・・・)                           医:おい! そこのお前! 何をしている?!

(医師の助手、そそくさとその場を離れる)
医:(何だ? あいつは・・・・、うん? ここの敷物・・・・忠兵衛の・・・血・・・?)
(しかし、医師、それ以上の詮索をすることなく、医務室に戻る)


同刻、―――柾木家―――

我:またしてやられたのか・・・・・。                                                真:はァ・・・・、申し訳ありませぬ・・・・・。
我:ふ・・・・、しかし、さすがは我らが師、侵入した痕跡すら残さんとは・・・・・。                 真:兄さんよ、感心している場合じゃないぞ?
我:そうだな・・・、ま、どやしつけられるのは・・・・。                               真:あたい達だからねぇ・・・・・。(はぁ・・・・)

(阿恵華の部屋にて・・・・・)
阿:どうしたの! まだ不届き者は見つからぬのですか!!                              我:は・・・・はぁ・・・、申し訳ありません。
阿:まったく!!  このわたくしの清らかな裸体を風呂場にて盗撮するとは!! 不届きも度が過ぎておろうに!!

我:(ツ・・・・・・) あ・・・ま、まずい・・・・ (ズズズッ!!・・・)

阿:し、しかも三度も!!(泣)

我:(ツツ〜〜〜―――)・・・・・・・・・。                                             真:(プッ! くっくくく・・・・・)
阿:これ! 我矛羅! お前は・・・・何を想像しておるのか!! いやらしい・・・!!# 真沙螺も、これは笑い事では済まされませんよッ!!

我・真:も・・・・申し訳ありません。

(と、こってり、阿恵華に小一時間しぼられて退室する我矛羅と真沙螺)

我:しっかし・・・、師匠にも容赦願いたいなァ。                                      真:ですよなぁ・・・、三度も・・・・(プッ・・・くくく)
我:おィ・・・・笑い事じゃあねぇぞ? どーにかして対策ねらにゃ。
真:なぁ、兄ィ、こういうのはどうだろ? あたいが姫様の身代わりになるってーのは?

我:お前が? 止めとけ止めとけ、第一、姫様とは体型からして違うじゃあねぇか、お前みたいなチンチクリン、師匠ならすぐ見破るぜ?
真:チンチクリンだけ余計じゃわ##                              我:はぁ〜〜、こんな時、団蔵の兄ィなら、もう少し旨い手を考えるんじゃろうになァ。

真:だね、しかし、因果なものですよなぁ、あたい達師弟同士、三家に分かれてバカし合いだなんて。
我:ホントだよなぁ、お互い手の内を知ってるだけに・・・・やりにくいったらありゃしないぜ? 実際。

(しかし、こういうバカ話が出来たのも、これ限りだったのです。   一夜明けて、衝撃の事実が発覚したのだから・・・)

 

我:何!? 忠兵衛のおやっさんが?  師匠が、亡くなっただって?!! なんかの間違いじゃあないのか??
真:あぁ、最初は、あたいも、何か性質の悪いジョークか、何かと思ってたさ、でもさぁ、あそこの公主の部屋には弔旗が掲げてあったし・・・、
  公主自身も、喪に服しているらしくてね。
我:ふぅむ、こりゃあ、事の真相を確かめにゃならんな。


(所変わって、樹雷学園)
阿:なんですって? 今日の雷鳳との会合は取り止めですって?? 一体、どうしたというのです。
紫:はぁ、それが・・・、向こうの生徒会長の身内に不幸があったらしくて、会長自身も、学園に出られていないらしいんですよ。
阿:そ、そうですの・・・。(それにしても・・・・公主様の身内に不幸?? そんな情報は、入ってきてませんけど・・・)
  分かりました、では、今回のこの件に関しては、一時見送ることにしましょう・・・。
  (しかし・・・、この事は見過ごす訳には行きませんわね、一度、公主様に会ってみない事には・・・)

(一方、雷鳳高校では・・・・)
驍:あれ? なぁ波留雄、生徒会長今日学校休みなの?                       波:おい、驍、お前知らんのか? 会長の身内に不幸があったんだとさ。
驍:へぇ・・・・(森野の公主の身内に不幸? そんなことは聞いた事がないな・・・・・)


 

(我矛羅、真沙螺、一通り調べ終え、待ち合わせの喫茶店に、それぞれが向かう)
我:おぅ、遅かったな、そっちの首尾の方はどうだった?

真:あぁ、有力なのは幾つか入ってきてるよ、ま、中にでも入って話そう。                      我:あぁ、そうしよう。

(ここで、我矛羅、真沙螺、入店。 店内には、若いカップル2組と、カウンター席に帽子を目深に被った男がいるのみである)

真:いやぁ〜〜、しかし、実際驚いたね、あんな簡単な任務で命を落とすなんざ・・・                     

我:あぁ、あの人じゃあ考えられねぇよなァ・・・・・。

(と、ここで、カウンター席の男、おもむろに、二人に近づき)

男:・・・・、どうしてだか分かるか・・・・?

真:ぅん? 誰だいあんた・・・・、あ! ・・・・あんたは!!                        我:ぅん?! あ・・・・!! 団蔵兄ィ!!
団:久しぶりだのぅ、二人とも、んで、成果の方は上がったか・・・・うん?
我:あ・・・・いや・・・・その・・・・

団:まぁ〜ったく、あんのすけべぃジジィも、とうとうくたばりゃあがったか。

まぁ、せいぜい、あの世で、キレ〜なねぇちゃんの尻を追っかけ回してる・・・・ってーのが、関の山だろーがな。

真:団蔵兄ィ・・・・、やっぱし、あんた・・・・破門にされた時の事を根に持ってんのかぃ?
団:はっ! ワシゃあ、もうそんな昔の事はキレイさっぱり忘れたよ! むしろ、破門にされてせいせいしちまってるところだがねぇ。

我:だ・・・・団蔵兄ィ・・・・
団:ま、そんなしけたツラぁすんな・・・って!! 仕事の邪魔はしねぇーからよッ! ほんじゃ、またな!!

ぽんぽんっ!

(ここで、団蔵、真沙螺の肩を叩きつつ、去っていく)

 

真:なぁ・・・・兄さん、団蔵兄ィ、一体何しにここへ?
我:さぁてな、あの人の考えてる事自体、オレらには謀り知れん所があるからな・・・。 まぁいい、早速、報告の方を聞こう。
真:あ、ああ・・・、まずは、お師さんのあの仕事・・・、趣味じゃあないらしく、依頼でやってた事が分かったんだ。
  確か・・・・、“睦”(ロック)とか言っていたな・・・その依頼人。 それで、現物を渡した直後を不意打ち・・・・だったらしいよ。
我:ふぅむ・・・・現場がそうなっていた・・・・と?
真:あぁ、無駄に争った形跡はまるでなし、あっ! それからね、遺体解剖の結果じゃあ、背中に大きなXの字の傷・・・・、これが致命傷だったようだね。

我:ふぅ・・・・む、それで? 凶器の方は?
真:う〜〜ん・・・、これがさぁ・・・・、  刃渡り15cm、全体で約25cm内外・・・・・
我:す・・・すると・・・・クナイ?!                                           真:あぁ・・・・、らしいんだ、しかもねぇ・・・・・
我:なんだ?! もったいぶらずに早く言え。              真:いゃ、実はね・・・・、それ、あたいたちが使っているヤツと同じ・・・みたいなんだよ。
我:何?! 本当か? それは??!
真:あ・・・ああ、いや、まだ聞いただけで、はっきりとは、しちゃあいないけどさ。

我:ふぅ〜〜、ちょっと、こりゃあ・・・ヤバイ事になってきたぞ??! 考えても見ろ、森野のところの“中間”を、柾木の“影”がヤッたとなりゃあ・・・。

真:なぁ、兄さん、こういうことは考えられないかい? その実行犯、極めて、お師さんと顔見知りだった・・・って事も。
我:じ、じゃあ・・・ヤッたのは・・・・団蔵兄ィ??                真:いや、あたいの勘としちゃあ、あの人は違うと思うけどな・・・・。
我:ふぅ〜〜、そうか・・・、ま、お前の、その勘はよく当たるからな、当てにはしちゃあいるが。
  ふぅん〜〜、これだけじゃあ、決め手に欠けるな、よし、もう一度洗い直してみるか。
真:あいよっ!!

(こうして、我矛羅・真沙螺、思い思いの方向に散っていく、しかし、今までのこの二人の会話を一言一句聞き漏らさずに聞いていた人物がいた・・・・
そう・・・・団蔵である)

団:ふぅむ、あの二人にしちゃあ、上出来じゃ。 恐らくはオヤジの遺体はあの場所に保管されてる事じゃろう。

それに、気になることも二・三ある事だしな。          決行するなら、今夜しかないな・・・。


 

(草むら・・・・・忠兵衛が倒れた(らしい)場所にて)
団:ここか、オヤジが後ろからバッサリやられた・・・ってとこは。 しっかし、ものの見事に証拠を消されとるなァ。
  じゃが、血の一滴、髪の一条でも見つけりゃ、こっちの勝ちじゃ。

(そして、探すこと一時間・・・・・)

団:おっ! あった! あったぞ!! たったこれっぱかしじゃが・・・・、これを御前にでも見てもらいさえすれば・・・。

(同日、夜半―――森野邸―――、保管室)
団:ここが、オヤジがやられたとか言う、クナイの保管場所じゃな?  おっ! あった・・・、上手く・・・・すり替えて・・・・・と・・・、
  これでよし。
(忠兵衛の遺体のある場所・・・・霊安室)

団:さて、ここか・・・・・、うん? これじゃな・・・・・(ナム・・・・)さてと、あいつらの調べでは、背中に大きな傷があるはずじゃが、

  これか・・・・。

(ふぅ〜ん・・・、確かにこいつは、素人目からしてみりゃあ、これが死因みたいに見えるが・・・、こいつは殺された後につけられたもんじゃねぇのか??)

  何か他に外傷はねぇのか? うん? 耳の後ろ・・・・、この穴はなんじゃ・・・?(クンクン・・・・ペロ)

(ベッ!) こっ・・・・こいつは毒じゃ!! 恐らく、直接の死因はこれじゃろな。

 

 

ぅん? 何じゃ? この皮のたるみ・・・・・(ペリ・・・)

なっ!! こっ・・・こいつは!! 成る程、そういうことか・・・、なんとなくだが、この一件の裏の裏・・・・読めてきたぜ。

(公主、婀陀那の部屋)
団:ふふ、相変わらず、セキュリティあめ〜の〜。           さてと、ここが公主の部屋じゃな? 

 ふ〜・・・・に、しても、今いなくて幸いじゃったなぁ。
 

 ・・・・・・・・・、ここか、オヤジが最初に倒れた場所ってーのは・・・・、ふむぅ、不自然だな、まるで、何者かに踏み消されたようじゃわぃ。
  ・・・・・・・・・、まさか・・・・・

(団蔵、何か思い当たる節があるらしく、その部分の敷物をめくってみる・・・・・すると)

団:(やはり、オヤジのやつ、万が一を思って、事切れた時、忍び文字を使って、何か書いてやがったな? だが、それを一味の者に見つけられ、
  消された・・・ってわけか)
  じゃが、甘い、甘い、にじみを利用して、床の方までとは、気が回らなかったと見えるのぅ。

  どれ・・・・、『紫怨』に『睦』・・・・、後は・・・・擦れて良く見えねぇな・・・・『波流狗』・・・・・か?

パッ!

(と、ここでいきなり、部屋の明かりがつけられる)

婀:たれじゃ! そこに居るのは・・・・・何者か!       おのれ・・・・、曲者じゃ!! たれかある! 出会えぃ!!
団:(ち・・・・、面倒な事になってきやがったな・・・、ひとまず引き上げじゃ!!)

フヒュ・・・・・・・   ・・・・・・・     ・・・・・ン

婀:な・・・・・・・っ!! (き、消えた??!) それに、あそこは忠兵衛が倒れてあった場所・・・・、一体、あの者、何をしに?

団:ふぃ〜〜〜〜〜っ! あぶねーとこじゃったのぅ! さぁて、あらかた証拠は出揃ったことじゃし、早速、御前に報告じゃ!!

 

 

(そして、杜下家)
驍:どうだった・・・・・・                                                     団:はっ! これに・・・・・
驍:うむ、ご苦労、早速解析に回そう。  うん? どうした、浮かない顔をして。
団:えぇ・・・、実は、もう一つ、極秘裏に調べてもらいたいものが・・・・・
驍:うん? なんだ?                                                           団:人を三人ばかり・・・・
驍:それで?                                                                   団:お父上に見つかりますとまずいので・・・・・
驍:それで、極秘裏に・・・・か、分かった何とかやってみよう。                   団:恩にきやす。

(さて、一方で、我矛羅と真沙螺の報告を受ける阿恵華)


阿:ふむ、よく調べてくれました、有り難う、ところで、急いでその足で、行ってもらいたい所があるのだけど、いいかしら?
我:はっ! なんなりと!!                                        阿:実は、公主様にわたくしがぜひ会いたいと伝えてほしいの、お願いね?

我・真:はっ! かしこまりました!!

(我矛羅と真沙螺、森野邸に向かう道中にて)
我:しっかし、姫様も、思い切ったことを考えるよなぁ。                     真:そうだよねぇ、今、あそこじゃ、厳戒態勢布かれているだろうし。

(そして、同日の森野邸、そこで、我矛羅・真沙螺が目にしたものは?)
我:お・・・・おィ、こりゃ、思ってたより、厳重だぜ??                                    真:何かあったのかな?
我:はは・・・、これ以上、何かあって、オレらの仕事増やしてほしくねぇ〜んだけどなぁ・・・・。

 

 

(公主、婀陀那の部屋)
我:フ〜〜、ヤレヤレ・・・どうにか潜入できたぜ、おっと、ここだな?

婀:・・・・・、たれじゃ! そこに居る者は!!                           我:はっ! 我等、柾木の使いの者です。

婀:何? 姫君の? と、言う事は、先程の者とは違うのじゃな? 用件は何か、申してみよ。
我:はぁ? はぁ・・・(やはり、オレ達より先に忍び込んだ奴がいたのか・・・)実は、阿恵華様が是非とも会いたい・・・・と申しております。
  ご返答はいかほどに?
婀:そうか・・・、だが、今は、表立って会うのは非常にまずい、日を改めて・・・・、超極秘裏に会う事にいたそう、そう伝えてはもらえぬか?
我:承知しました・・・。 ところで、公主様、“先程・・・”と申されておりましたが、何者かが忍び込んだのですか?

婀:うむ、そうなのじゃ。 じゃが・・・・一瞬にして、煙のように消えてしもうた・・・・まるで、“霧”や“霞”のようにな。
我:(な・・・それじゃあ、団蔵の兄ィが既にここへ??) な、成る程、そうでしたか・・・それでは、何分にも物騒ですので、気をつけて下さいませ、
  では・・・・。

(我矛羅と真沙螺、森野邸を離れ、柾木家に向かう道中にて)
我:しっかし、驚いたな・・・兄ィのヤツ、既にあすこに忍び込んでいたとは。
真:ひょっとして、サテンでのあたいらの会話、盗み聞きしてたのかもな?                我:ありえるな、全く、抜け目のないお人だ。

 

 

 

 

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