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(そして、その翌日、雷鳳高校には、生徒会長、婀陀那の顔も見える、どうやら、喪が明けたようである)

婀:ふむ・・・、すっかり、妾が休んでおる間に、招待状やら、各校からの手紙やらがたまっておるようじゃのう。
  うんっ?! ・・・・・これは・・・。

(それは、何の変哲もない手紙であったが、書いてある内容は興味をそそられるものだった・・・・、その内容とは、こうである)

“昼休み、図書室で会いたし、・・・・・・・昨夜の一件にて・・・・・・”


―――昼休み―――雷鳳高校、図書室にて

 

婀:うん?! 妾一人のようじゃな・・・。   申し訳ないが司書殿、もう一人、ここに誰か来られませなんだか?
司:さぁねぇ・・・・、ここに来たのは、婀陀那様だけですよ。
婀:そうか・・・・、では、奥の方で待つとしよう。  申し訳ないが、誰か来ましたなら、妾なら奥の方におる・・・と、そう申し伝えて下さらぬか。
司:はぃはぃ、分かりました・・・・・、奥の方ですね・・・。

(しかし、ここで、婀陀那が奥の方に、二・三歩進んだところで、何を思ったのか、司書の老女、入り口に鍵をかける)

カシャ・・・・・ン!

 

婀:な・・・・っ! 司書殿! それでは、誰も入って・・・・・
団:申し訳ありやせんが、後ろを振りむかねぇでくだせぇ、公主様。 裏方の者は、顔を見られるのを忌み嫌うもんでしてね。
婀:な・・・っ!!? お・・・お主のその声・・・・。 昨晩の柾木の姫君の使いの者ではないな? ひょっとして・・・・・

団:ほぅ、これは、これは、声だけで判断なされるとは・・・・。 いかにも、ワシは、柾木の手の者じゃありやせん、お察しの通り、杜下の者です。
婀:な・・・・っ?! 杜下の?! なぜ・・・あの家が・・・属下の家の小さな事件に関わり合いが・・・・。
団:それがおおありなんッすよ、御前が徹底的に調べ上げた結果、どうやら、意外な事実が分かりやしてね。

それで、一席設けさせてもらった・・・って寸法ですよ。

婀:“御前”? 善三郎殿か?                                        団:いいえ、ちがいやす、別の方・・・、ワシがお仕えしている方です。
婀:何?! 妾と同じ年代の者が? そうか!! 一年の・・・!!!                    団:察しの通りでやす。
婀:うむ、そなたの主上は分かった。 それで? 分かった意外な事とは?

団:オヤジの奴・・・いや、忠兵衛を殺傷した得物はご存知ですな?                 婀:あぁ、確か、柾木の者が使っているクナイであったな・・・・
団:ええ、そうです、ですが、ヤったのは柾木じゃあ、ありやせん。                 婀:なんと? これは異な事を・・・・・。

団:公主様、“睦”(ロック)という名に聞き覚えは?
婀:うん? そのような名は知らぬが。 似たような名の“睦朗”(むつろう)なら、先月、妾の家の医師団に入っておったな・・・よもや??!
団:いえ、奴は単なる“ツナギ”役でしかありやせん、が、奴が忠兵衛に柾木の姫君のプライベートな写真を、撮るよう依頼をしたのは確かです。
婀:な・・・・、森野の家でそのような、いかがわしい事が?!!

団:時に公主様、“紫怨”(しおん)という名に覚えは?
婀:“紫音”(しおん)ならば、樹雷の生徒会長、つまり、柾木の姫君の率いる執行部に、一人いることはいるが・・・・
団:そう、そいつが、クナイの持ち主です。                                       婀:な・・・なんと! それでは、やはり、柾木の者では・・・・
団:いいえ、所有者と、実行者が同じとは限らんでしょう? ヤッたのは“波流狗”(はるく)この名は?
婀:雷鳳の一年に、“波留雄”(はるお)というのが一人・・・・                     団:やはりそうですか、で、この者が実は杜下の配下なのです。
婀:な・・・・に? では、杜下・森野・柾木の三家が共謀して??

(しかし、ここで団蔵、何も言わずに、なにやら懐中より一通の紙を見せる)

婀:あ・・・・・、こ、これは・・・・、そうか、そういう事じゃったのか。              団:それから、公主様に、今一度確認していただきたい事が・・・
婀:うむ、なんじゃ。
団:ようく、ワシの口元だけを見ていてくだせぇ。 (パクパクパクパク・・・・)
婀:(う・・・・・・ん・・・?)

団:今一度、今度は、声を出して見せますよ。                “あっしをこんな目に遭わせたのは・・・・・”
婀:(な・・・・、口にしていることと、その動きがまるで違うではないか??! 待てよ・・・・、そう言えば、あのときの忠兵衛もこんな感じじゃったな・・・・。)
団:お気付きですか? では、この口の動きと、声を一緒にしてさしあげやしょう・・・。
  
『お・・・、オレは違う!!忠兵衛なんかじゃあねえ!! オレは・・・“睦”だ!! ち・・・、畜生! あいつめ・・・・裏切りやがって!!』
婀:(な・・・・?? “睦”じゃと?! でも、あの者はあの時、あの場所にいたではないか・・・!!? すると・・・あの時のは偽者というわけか??!)
  そ・・・・・それでは忠兵衛は、本物の忠兵衛は??
団:申し上げにくいこってですが、おそらくオヤジは、あの三人を束ねる者、つまりは、杜下の現当主の“暗部”だった・・・という事です。
  そこで、ここで御前よりの提案でやす、ちとお耳を・・・・
(ごにょ・ごにょ・・・・)

婀:なにっ!? 妾と姫君が『果し合い』?!! 冗談も・・・・
団:いえ、これは冗談なんかじゃあねぇです。こうすることで、内外より欺けやす。その為のエサ・・・と考えてもらって結構です。
婀:ううむ、
“敵を欺くなら、先ず味方から・・・”か、じゃが・・・・しかし、気が引けるものよの・・・
団:いえ、これは、あやつらをおびき寄せるためのワナです、なにとぞご考察の程を・・・・
婀:う・・・・うむ、よし、分かった、考えておこう。 して、そなたの名は?

団:『桐賀団蔵』と申しやす、以後お見知りおきの程を。                         婀:何? 『団蔵』とな? も・・・・、もしや、そなたはあの??
団:いえいえ、似たような名はこの世にゴマンとおりやす、それにワシは単なる、けちな下忍ですよ、“伝説の忍”に間違われるのは光栄ですが・・・
  恥ずかしくもありやす。
婀:そ、そうか、人違い・・・・であったか、それはすまぬことをしたな。
団:いえ、こちらも公主様にお目にかかれて、光栄の至りにござるよ、では、ご免!!

(さて、その一方、樹雷学園、生徒会長阿恵華の帰宅路に、菅笠を被った、僧形の男が見える)

?:そなた、柾木殿にございますな?                                             阿:はい、柾木はわたくしですが・・・あの、何か?
?:それがしは、ステラーバスターと申す者、以後お見知りおきを・・・
阿:は・・・はぁ、そうですか。 (何? この人、少し・・・・気味悪いわね・・・・)                 何か、わたくしに御用でも?
ス:実は、これを見て頂きたいのです・・・・

(ステラーバスターと名乗る男、なにやら人名を書いた紙を渡す)

阿:え〜っと? “睦”に“紫怨”に“波流狗”・・・・あの、何なのですか? これは?
ス:それが、今回の一件に深く関わりあう者達の “ウラ”の名前です。              阿:えぇっ?! 今回の一件・・・って・・・・あなた一体何者?!
ス:・・・・・・・・・・・・、そして、その者達の正体は、杜下の“暗部”! それを束ねる者が『忠兵衛』と名乗る男です。
阿:・・・・・・・・。 (・・・・こ、この人・・・・・)
ス:そうです、その男、『忠兵衛』は今回の一件で命を落とした者・・・・
阿:・・・・・・・・・・・・・・・。

ス:ですが、実は生きております。                                               阿:あの、それは一体どういう事?
ス:今は、仲間にも気取られぬよう、摩り替わっております。 そして、それを暴くため、まもなく、森野の次期当主が動くことでしょう。
阿:ええっ? 公主様が?
ス:左様、おそらく、『果し合い』という形をとってきましょうが、あなたにはこれに乗って頂きたい。

阿:ど・・・どうして??                                                 ス:敵を欺くために必要な事です。
阿:て、敵を?                                                           ス:・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
阿:・・・・・・。 分かりました、何かは、分かりませんが・・・そうした方がよろしいのでしょう?
ス:はい、そして、それは、それがしも見届けさせていただきます。           阿:なぜ? 部外者のあなたが?

ス:あながち、部外者・・・・・とも言い切れません、何しろ、森野の次期当主と、それがしは、幼なじみでしたゆえ・・・
阿:そ、そうだったの・・・・ですか・・・。 それは気付きませんで・・・ (それにしても、公主様にこの人のような幼なじみがいたなんて)
ス:それと今一つ、三人のうちの一人は、あなたに非常に近いところに居ります、努々油断召されるな。
阿:ええっ?! 三人のうちの一人が・・・・わたくしの近くに? だ・・・誰のことですの?
ス:いずれ分かります。 それから、『果し合い』の連絡の方、それがしの『窓口』になっている者に知らせて下さい。 それでは・・・・・。
阿:あ・・・・・・・・・・。
(その男、そう言い残し、その場を立ち去る)

(そして、翌日、樹雷学園の生徒会長室に一通の手紙が届いていた。その内容は以下の通りである。)

“本日、果し合いを申し込まれたし、犀河原にて待つ
               雷鳳高校
                      森野 婀陀那”


阿:とうとう来てしまいましたわね、これ、真沙螺、彼の者に伝えよ、時刻は “pm03:00” にと・・・・。
真:はっ! かしこまりました!!

(阿恵華、その手紙をすぐにくずかごに入れる)

紫:会長、くずかご、処分いたします。                                                阿:えぇ、頼みましたよ
紫:・・・・・・・・。

(紫音、捨てられた手紙を見つけ、何食わぬ顔で、すぐさま懐に入れる、この間、阿恵華、気付いていながら、わざと気付かぬ振りをする)

紫:失礼いたします。                                          阿:(やはり、そうでしたか、これで、こちら側は確認できましたわね・・・)

(真沙螺、雷鳳高校の制服を着込み、『窓口』の男を探す)
団:ふふふ、真沙螺よ、ここの生徒になりきっておるようじゃが、“馬子にも衣装”とはこの事じゃのぅ。
真:な・・・っ!? 団蔵兄ィ?? 『窓口の男』・・・って兄ィの事だったのかい??

(ここで団蔵、真沙螺を抱き寄せる)
真:な・・・・・あ、兄ィ??!(かあッ(//。//)                               団:無駄口をたたくな、姫君の伝言だけを伝えろ・・・・

(そして、有無を言わさず口付けをする団蔵)
真:う・・・・ム・・・・んー! んー! 
(たしたしたし・・・・) ぷあっ!

バッシィ〜ー〜ン!!

 

真:何すんのよ! バカッ! あんたなんかだいッ嫌いよっ!!
(このまま、真沙螺走り去る)
団:ふふっ、あいつめ、一丁前に芝居だけは上手くなりやがって・・・・・(オー、いて・・・)                pm03:00か。

(これを物陰より見ていた者あり、よく見てみると、驍と同学年の“波留雄”である・・・・)
波:なる・・・・pm03:00か。

(ところ変わって、柾木家)
我:どうした? 真沙螺、真っ赤な目をして・・・・                               真:・・・・・・に唇奪われた・・・・
(グスッ)
我:はぁ? んな事、いつも訓練でしてるじゃないか、何をそんなに泣く必要があるんだ?
真:うぇ〜〜ン! 団蔵兄ィに奪われたんだよう!!

我:はぁ?? なら別にかまやしないじゃないか、お前、昔っから兄ィの事好きだったんだろ?
真:あたいだって、雰囲気ってーのがいるよ!! チッキショ〜、兄ィのヤツ、 あたいのジュンジョ〜もてあそびやがって〜〜!!
(大泣(^^;;)
我:・・・・・・・・・・バカ(-フ-;;)

 

 

 

 

(そして、阿重霞、婀陀那、直接対峙の刻)
婀:また、この様な事になろうとは、思うてもおりませなんだよ、  姫君。
阿:悪循環というものは、上手く断ち切れないものですのね、  公主様。                           婀:く・・・・ッ! 参る!!

バシィーーーン!  ジ・・・  ジ・・・・   ・・・・ジ・・・・

婀:フッ・・・また一つ覚えの結界ですか! ならば、あの時のようにこうしてくれる!!

『重ね当て・衝』!!

 

バチィッ!

婀:な・・・・・に?!
阿:く・・・・ッ!(お、重い・・・) ふふ、わたくしとて、この二年間遊んでいたわけではないのですよ。
婀:
『二重結界』か、味な真似を、(ならば!!)            うおおおぉぉぉ!!

バシィ〜ン!ガシィ〜ン!

阿:・・・・・っ、(お、重いっ・・・、一つ一つがまるで岩のよう・・・・)   くッ!!

バッシィーーーン!!

婀:く・・・・ッ!!

ザッ!

 

阿:はぁはぁ・・・・。

(し、しかし・・・・それにしてもなんて哀しい目を。 まるで今回の責がご自分にあるように、ならば、わたくしに出来る事はたった一つ・・・)

フッ・・・(阿恵華の結界消失・・・)   ・・・・・・

婀:はああぁぁぁっ!!

バキィッ!!

婀:え・・・・・?                                                             阿:あうっ!

ドシャアッ!

婀:な・・・・・ッ、えぇ?? な、なぜ結界を解かれた?! どうしてなのじゃ!!?
阿:ふふ、そうよね・・・自分でもバカな事を・・・と思いますわ。 でも、公主様にだけに痛く苦しい思いをさせたくない・・・。
  ならば、せめて、その痛みだけでも分かち合いたい・・・そう思ったのです。
婀:・・・・・・・・・!! (姫君、そこまでお考えに・・・敵わぬ、妾は・・・・この方には・・・・・勝てぬ・・・・)
  
ふ・・・、ならば、派手に負ける・・・というのも一興よな。           でぃゃぁぁあああああ!!
阿:!! (ハッ! 殺気!! い・・・・いけない・・・体が勝手に反応!!)

〔見事に決まった・・・、かに見えた婀陀那の『中段の突き』・・・・・だが、体に届く寸前で阿恵華に受け止められ、

空いた手で逆に自分の鳩尾に『掌底』をたたきこまれる。 それは、紛れもなく、柾木流体術の一つ“当て身打ち”『旋龍』であった。
そしてそのまま、

打ち上げ式掌底『翔破』投げ技『乱墜陵』止め技『禍神崩し』

・・・・・まで入るかに思われた・・・・・・が、しかし・・・・〕

婀:ぐぶっ!!                                                                 阿:・・・・・・・・・・・・・・。
婀:ひ、姫君。 なぜ・・・・妾の身ではなく・・・・地面を?                     阿:・・・・ならば、公主様こそ、なぜ、あの一瞬殺気を?
婀:ふふ、どうせ、負けを認めるならば、潔く、派手に・・・・と思いましてな。

阿:(・・・・・・公主様・・・) さ、お手を・・・・・貸して差し上げます。  婀:どうも・・・済みませぬな・・・・ (よいしょ・・・・と・・・・)
阿:(ふぅ・・・さて・・・と) これでいかがです? 見ておられたのでしょう? “ステラーバスター”さん?!
婀:な・・・・何? 今何と? “ステラーバスター”ですとな??

阿:申し訳ありません公主様、実は今回わたくしが、この決闘まがいの事をお受けしたのも、ひとえにこの者の執り成しがあったればこそ・・・だったのです。

 

 

 

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