<弐>
ザック・・・ザック・・・・ザック・・・・!!
ス:(はあ・・・・ふぅ・・・・ふぅ・・・っ!)
爺:・・・・・・。
ス:(はあっ!はあっ!・・・・) あ・・・あの、どうしたんです?
爺:え?いや・・・何、あんた、ズイ分と手つきがわるぅなっとると思うてのぅ。
いつもは、畑を耕すのを手伝うてもろうとるが・・・・どしたんかのぅ。
ス:(え゛っ??!・・・って、そりゃあ、わたくしではありませんもの・・・・) い・・・いやぁ、ちょっと体調悪くて・・・。
爺:ほ・・・う、そうじゃったか、それじゃあこれでも飲んでみたらどうかね?
ス:あ、ありがとう・・・。(ゴク・・・) ぶっへ! な・・・なに?これ・・・にっがぁぁ〜〜い。
爺:ははは、いつもは平気で飲みよるのにのう。 ワシ特製の『センブリ茶』じゃ。
ス:(セ・・・センブリ・・って、あの苦い事で有名な??) ど・・・どおりで・・・。
爺:(ふぅむ・・・)それも口に合わんとなると、相当体をわるぅしとるようじゃのう。
どれ・・・あんた帰って体を休ませちゃどうかね? 後はワシひとりでやるからよ。
ス:い、いえ・・・そんな、悪いです。 こっちから言い出したことを、途中で他人任せにするだなんて・・・。
爺:ほ・・・、そりゃあ済まんかったね。
いや、何ね?いつもあんた・・・朝もはようから、こっちに詰めてやってじゃったから、ワシも心配じゃったんよ?
『あんな調子じゃあ、長持ちせん』・・・ってのう。 いや、いらん気遣いじゃったようじゃな。
ス:あ・・・っ、いえ・・・。 こっちも急に怒鳴ったりして、申し訳ありませんでした・・・。
爺:ハハ、ええんじゃよ。 さて、もう少しやりましょうかいの・・・。
ス:は・・・・はい!!
(なんと!またもや発覚! ステラ(本人)、早朝(AM5:30頃)から畑へ来て・・・って、ひょっとして・・・・・
それから昼にギルドへ来て・・・・ってコトですかぁ??! そ、それじゃあ、この爺さんも懸念した通り、『長持ちしない・・・』
っていうのも強(あなが)ち・・・・。)
ス:よいしょ!・・・よいしょ! ・・・・・ぷぅ〜〜・・・。
(それにしても・・・今までに知られざるこの人の生き方が分かってくる・・・だ、なんて。 少し得した気分ね・・・。)
うふふ。
爺:さぁて、そろそろ肥料でも蒔きましょうかの?
ス:ふぅん・・・・で?何を使用すんの?
爺:これじゃよ。
ス:はぁ・・・牛糞に、鶏糞ねぇ。
爺:それを程よく混ぜて使うんじゃよ。
ス:はぁ・・・。
爺:まぁ、一番ええのは、人糞なんじゃがの?
ス:はぁ・・・(って???) え゛え?!じ・・・人糞・・・って??
爺:ワシらのガキん時にはなァ。 まだ水洗もなかったけぇの? 肥料といやあ、家畜のもんや、日頃ワシらの出しとるモンを使うとったんじゃよ。
まぁ、今頃じゃあ汲み取り式ものうなってきたしのう。 衛生上にもワリィってなもんで、下水が作られてからは、使っとりゃあせんのよ。
ス:は・・・・・はぁ・・・・。
(う、噂には聞いてましたけど・・・本当にそんなことがあったんですのねぇ・・・。)
(田舎の常識!(笑) 昔は、よく 汲み取り式 から、肥えを汲み出して、それを田なり畑の野菜なりにやってたんす。(ワシも小さい頃よく見てました。)
日本晴れのお陽さんを一杯浴び、栄養のある(野菜にとって・・・)肥えをやって、青々とした野菜の、なんとおいしいことか!!
化学肥料なんざ、土地の痩せる原因よ! と、痛感しておる次第にござります。
閑話休題(^^;;)。)
爺:そりゃそうと、あんた、大丈夫なんかいねェ?
ス:へ??
爺:ほれ、大体この時間じゃったかのう、途中で抜けたりすんのは。
ス:(あぁ、ギルドの・・・そういえば、だいたい決まってこの時間でしたわねぇ。)
いえ、いいんですよ。 今日はこっちのこの仕事をやってからってことで。
爺:ほ、そうかい。 んじゃ、久々にワシんとこで飯でも食うかね?
ス:(え?) い・・・いえ、悪いです。 ただでさえ、手伝ってもらっているのに、この上にご飯まで・・・(ぐうぅ・・・)
あ゛・・・
爺:ハッハッハ!どうやら、体のほうは正直なようじゃな?
ス:ス・・・済みませんお言葉に甘えます・・・。
(たった2・3時間の肉体労働で、お腹がすいてしまうとは・・・・しかも、おまけによそ様のお膳に上がらせてもらう・・・だ、なんて・・・なってませんねぇ・・・。)
爺:さぁさ、おあがんなさい。
ス:(しつれぇしま・・・) はぁ・・・・なんてシンプルな・・・このお味噌汁に入っているのは?
爺:ゴボウにニンジン・・・それに大根じゃが?
ス:(は・・・ぁ・・・・)(パク) お、おいしい・・・これどこのお店で・・・?
爺:ハッハッハハ!そいつは、ワシんとこの畑と、あんたのとこで取れたものをつこうとるだけじゃが?
ス:(ええ?!こ・・・これが??!) (きゅっ・・・きゅっ・・・・) (し、信じられない・・・噛めば噛む程、味がよく染み出てくるだなんて・・・)
(パリン・・・もぐもぐ・・・)この・・・きゅうりの浅漬けも・・・おいしい・・・。
爺:あぁ、それはとあるところからもろうたのを、『これ、なんなら使ってみん?』ゆうて、あんたからもろうたんを使うただけじゃがね。
ス:(はぁ?)な・・・何を??!
爺:塩の麹(こうじ)じゃよ。
ス:(こ・・・麹・・・って・・・) そっ、それじゃあ、ズイ分と漬け込んだんですよねぇ?これ・・・・って。
爺:いやァ?昨日一晩漬けただけじゃが?
ス:(え・・・・っ、そ、そんな・・・一晩漬けただけでこの味??)
爺:なぁ・・・・・あんた?
ス:は、はい?!
爺:ホンマにあんた・・・体調悪いようじゃのう。
ス:(い゛っ?!!) ど・・・どうしてです??(アセ・・・っ!)
爺:大体、今あんたが聞きよること、ワシがあんたから教えてもろうた事じゃしなぁ?
ス:(でぇ・・・)ぜ、全部??
爺:いやぁ、全部じゃあないが。 こんの浅漬けにしたってはァ、あんたから直接漬け方を教えてもろうたんじゃしなァ??
(なんとも!!またしても、意外なところで、知識をひけらかしているようです・・・・が、
これ以上驚いてばかりで、相手のこの老人の警戒を強めてしまうのも得策ではないので、これ以降は大人しく食事を摂るステラ(おひぃ)。
そして、昼食が終わったところで・・・?)
爺:さぁて、あともうヒト踏ん張りしましょうかいね。
ス:はい。
(なんと・・・この爺さん、さんざ不可解な事をされたのに、まだステラ(おひぃ)を疑うことはなかったようです。
そして、またあの続き・・・・畑仕事に戻って行ったのです。)
ス:よいしょ・・・・よいしょ! ふぅ・・・(ガッッ・・・・)
(だいぶ・・・コツがつかめてきましたわ。 この鍬を、思いっきり打ち付けるんじゃあなくて・・・
先の方を投げるようにして引けば・・・・やり易いんですわ・・・・)
ふふ・・・・やりなれてみますと、農作業というのも、存外愉しいものですわね・・・。
(なんと・・・おひぃさん、 モノづくりの悦び を知ったようです。 そして、そうこうしているうちに、畑仕事も終わり・・・。)
爺:あんちゃん、ゴクローさんじゃったの。 ほれ、これは約束のもんじゃて、持って帰り。
ス:え・・・っ?!で、でも・・・そんなのワルかないですか?
爺:なぁにを言うとるか、わけぇもんが。 遠慮なんかすんじゃねぇべ。 それに、こいつはぁ、あんたとの約束じゃなかったかね。
ス:へっ?!
爺:ほれ・・・互いの畑の手伝いっこをして、その日の取り分の1割をそれぞれが出し合う・・・ってなぁ?
なぁに、お前さんとこのは、来るまでに頂いたきになぁ。
ス:はぁ・・・・で、ではありがたく・・・・
(しかし、まぁ・・・・至れり尽くせりとはまさにこの事でして、作業のノウハウを教えてもらったばかりではなく、おみやまで・・・とは。
今更ながら、感服するばかりなのであります。)
ス:(それより・・・どうしましょ? このお野菜持ってギルドへ行けば、なんだか変におもわれますし・・・・
あっ!そぅだ! 一旦アパートに帰る事に致しましょう! それが・・・いいですわね?)