<肆>
(そして、午後の紅茶を愉しむためか、婀陀那が一人、ティー・サーバーのある給湯室に来たようです。
そして・・・・・この人物も、そこへ・・・・)
コポコポコポ・・・・・・
す・・・っ
婀:(うん?)おお、Joka殿、そなたも、紅茶をお飲みになりますかの?
J:それよりも・・・ねぇ、婀陀那・・・どうしてあんな事をしてくれたの・・・?
婀:どうして・・・あんな事・・・と言われましても。
あの仔猫、近くの電柱にて ビショビショになりながら、打ち震えていたのですぞ?
それを、みすみす見過ごすわけにも参りますまい。(ズズ・・・・)
J:当然よ・・・・そう・・・・私が仕向けたのだから・・・・。
婀:(ピク)・・・・・今・・・・何と、おっしゃられた?
J:それより・・・・あなた、先程 『縁』(えにし) と、いう言葉、使ったわね・・・。
婀:ええ、まぁ・・・・確かに。 それがなにか?
J:意味・・・・・分かって使ったの?
婀:それは・・・・まあ・・・・分からずには使えますまい?(ズズ・・・・・)
J:・・・・・・そう・・・・・。
婀:それより・・・・先程の、妾の質問には答えてもらってはいないようですが・・・? 女禍様。
J:・・・・・じゃあ、私も決定的な事を言ってあげるわ。
婀:(・・・うん?)
J:あの仔猫の 『因縁』 今日までなのよ・・・。
婀:な・・・っ!?なんですと??! い、今、何と??
J:あの仔猫・・・ 実は、一週間前に、この世からいなくなっていたハズなのよ・・・。
それが、どこをどう間違えたのか、今まで生き永らえていた・・・という事なの。
婀:不死??? いや・・・に、しても、確かに生のぬくもりは・・・
J:違う・・・違うのよ、婀陀那。 不死なんかではないの。
ただ、死するべき存在が、死なずに生き永らえている・・・・という事なのよ。
婀:なんと・・・・し、しかしそれは・・・・。
J:そう・・・・これは極めて稀(まれ)な事。
それに、『因縁』に外れているからとて、あの仔は、見てくれの通り、小さな存在・・・。
直接、手を下しては悪かろうと思い、自然に衰弱死させる法を択(えら)んだのだけれど・・・
まさか、こんな事になるなんて・・・。
(そう・・・あの仔猫を再び見た瞬間(とき)と、婀陀那のあの一言で過敏になった彼女の真意には、実はこんなワケがあったのです。)
婀:し、しかし・・・コみゅ殿も、あんなに喜ばれておって・・・何かの間違いなのでは??
J:じゃあ・・・・あなた、今日という時機(とき)が過ぎ、
“妖”(あやかし)
になったあの仔猫を、コみゅや乃亜の目の前で、バッサリやれる??
婀:(うう・・・っ!!)
J:出来ないでしょ?
そんなむごい事になるくらいなら・・・体も衰弱しきっていたあの時機(とき)を於いて他にはなかったのよ・・・・
それなのに・・・。
婀:そんなこととは・・・・露ほども知らず・・・・申し訳ございませぬ!!
J:・・・・・・・・・。
(それよりも、女禍が一番に焦っていた理由、それは、
“因縁を外れし者の末路・・・”
この仔猫の場合、真の命日より、一週間を過ぎると、『妖』(あやかし)に転化してしまう・・・と、いった事に心を痛めていたようです。)