<五>

 

 

〔その一方―――― セキュリティ・ルーム にて・・・

 

ここへは、我矛羅独りで、潜入しているようである。〕

 

 

我:・・・・・。(ひたひた・・・)   ―――ん?(僅かながら・・・人の気配・・・)

 

ジ:誰?こんなところに潜り込んでも、何もありはしないわよ・・・・

 

我:・・・・・。(スス・・・・ス――――)

ジ:どこへ行こうというの? あなたが、ここにいるということは、この建物に侵入している時から、分かっている事なのよ。

 

我:(な・・・ナニ?背後から声?? い、いつの間に―――)

 

ジ:・・・に、しても、妙なことよねぇ・・・。

  この、建物に入ったのは、三人・・・でも、ここには、お前の気配しか、感じられない・・・・なんて。

  他の者達は、どこへ行った。

 

我:(くっ―――!やっべぇ!!)

 

ジ:黙秘のつもりか?!この私の前で―――?(ククク――――)

  賢い選択かもしれないけれど―――それは、間違いだという事を、思い知らせてあげるわ・・・?

 

――――ッ!

 

我:く・・・っ!!(まぶし・・・)

 

ジ:ふぅぅ〜〜ン・・・黒い全身タイツに、黒い目出し帽・・・とは、念入りな。

  だが―――そんなもの、殺して引き剥がしてしまえば、簡単に分かる事だ。

ス――――           ジャキ・・ン!――

 

我:(な―――!なんて・・・バカでけえ得物・・・・)

 

ジ:ふふふ―――これを見て、固まったようね。

  いいわ、冥土の土産に教えてあげる・・・これは、この“ウイッチ”が、操る デス・スクレイパー『エルブ』 よ。

 

我:(死神の鎌―――どうにもやべぇや・・・兄ィに来てもらうしか・・・)

 

ジ:フフフフ、あなたの血はぁ―――何色なのかしらァ? 私好みの――スカーレット――なら、いいんだけどぉ―――

 

我:・・・・!!(ゾクッ!!)

カキ―――ッ!――☆ クキ・・・ッ クキッ カチッ      クキッ

 

ジ:あらァ? 余りの怖さに、歯をカチカチ鳴らしてるのね? 可愛いったら―――(クス・・・)

 

 

〔しかし、そこで待ち受けていたのは、ジィルガ=アィゼナッハ嬢。

しかも、この女史・・・暗闇でも目が利くのか、素早く―――そして的確に、我矛羅の背後に回りこんだ後、

行動権≪イニシアチブ≫を取ったのです。

 

それにしても、この彼女には、余り似つかわしくない、その―――痩身に、大振りな得物―――それも、“死神の鎌”を意味する不吉なモノ

デス・スクレイパー『エルブ』

とは・・・しかも、その際に放たれたセリフ―――『殺して引き剥がしてしまう』に、『血の色は、何色か―――』

この、どちらも、その容姿には似つかわしくないそれに―――さすがの我矛羅も、歯を打ち鳴らすしかなかったようです―――

 

 

彼は、怖くて、歯を鳴らしていたのではなく、とある者に連絡を入れていたのです、誰に―――?

それは―――〕

 

 

団:(ぅん?)

・・・・御前、たった今、我矛羅のところで、トラブルが発生しやした、どういたしやしょう・・・。

≪何?どういった―――≫

団:どうやら―――“ウイッチ”というヤツが、本星の処に、張っていたようでやす。

≪そうか―――だか、あいつに構っている暇などない、

欲しいモノだけ頂いて、早々にずらかれ――≫

 

団:へへ―――っ、りょ―――うかいッ!!

 

 

〔そう、それは、自分達を統べる――頭――加藤団蔵だったのです。

 

そして、団蔵も、自分の主上の“御前”に、意見を求めたところ―――厄介者には手を出さず、目的だけを遂行せよ―――とは・・・

 

それよりも―――〕

 

 

我:(こりゃ―――敵わんねぇな・・・こんなにも、すげぇプレッシャーを受けたのは・・・・初めてだ)(ゴク・・・)

 

ジ:(ふ―――) ねぇ・・・これから、死ぬ前に、一つだけ応えて頂戴―――

我:(う・・・ん?)

 

ジ:あの子―――こっちに来てるんでしょう? 素直に答えないと・・・・八つ裂きにしてあげるわよ。

我:(く・・・・っ!!)(ささ―――さ・・・・)

 

ジ:(たまらず、物陰に隠れたか―――) それで―――逃げおおせたつもりかぁ!!

 

 

団:なぁ―――るほど・・・こういうことだったんかい・・・。

ジ:(何?もう一人―――) 誰―――?

 

団:ほっほぉ―――う、確かに・・・聞いていたように、えっれぇベッピンさんじゃが・・・・中身は、恐ろしく、コワぁ〜〜いお人のようじゃのぅ。

  =ウイッチ=こと・・・ジィルガ=アィゼナッハさん・・・。

 

ジ:ふ・・・・この、私の名が、すんなり出てくるようだとは・・・やはり、あの子が来ている事には、間違いないようねぇ・・・。

団:さぁ―――てねぇ・・・一体誰の事やら・・・・

 

ジ:だが――――容赦はしないッ!!

                 ・・・・

 

フ――・           ・・――             ひゅぅぅ〜〜〜・・・〜〜ん

 

ジ:(んな―――) げ・・・幻影・・・

団:有無を言わさず、斬りつけなさいやすかい・・・こいつぁ、聞いてた以上ですなぁ・・・・

 

ジ:そうか・・・お前があの子の・・・と、いうことは――― お前が 団蔵 で・・・・先程のが 我矛羅 か・・・

 

団:(ワシ等の名が、割れてやがる・・・・) ん〜〜〜〜まぁ・・・・そういうことに、しときやしょうか・・・・

ジ:それで―――お前の主、『杜下驍』は、どこへいる―――

 

団:そぉ―――れを聞いて、どうしようってんでぇ〜〜〜? 御前も―――あの方も、何かと忙しい身・・・なんでしてねぇ。

  何なら・・・・言伝(ことづて)をしときやしょうか―――?

 

ジ:いや―――いい。 自分の要件は、自分で済ませる―――。 それが、私の流儀だ・・・・。

  

  それに、こうやってお喋りをして、少しでも時間を稼ごうと、しているつもりなんだろうけど・・・・そうは行かないわよ・・・・。

 

団:・・・・!!(見抜かれた!!?)

 

ジ:お前と―――後、三人・・・我矛羅に、真沙螺・紫苑・・・・いづれ、引導を渡さねば、いけないのだからぁ・・・

団:ク・・・・・ッ!!

 

ジ:(多重の―――幻影!!) だが・・・・逃しはしないッ!!           =コール・ハーケン=

 

団:ぅ―――ぐぅお!!

ジ:ナニっ―――?!

 

フ―――――・・            ・・ひゅう    ぅ・・ ・・             ・・  

 

ジ:総て――――消えた・・・。

  (・・・・と、いうことは、本体は、ここではなかったのか?)  ん―――?・・・・これは・・・(ヌル・・・)  ・・・・血。

 

  (それにしても・・・・あの男の他に、仲間がいたはずだけど・・・・今では、その気配も全くない・・・・)

  ま、まさか?!!

 

 

〔眼前の、敵の幻影を、自己の武器『エルブ』にて、総てを打ち払うジィルガ。

しかし・・・・その総てを打ち払ったものの―――それと、ほぼ同じくして消えた―――侵入者達、全員の気配・・・・。

 

その事実に突き当たり、よぎってしまった不安―――そのまま、セキュリティ・ルームへと足を運ぶジィルガ・・・・

すると―――〕

 

 

ジ:(おかしい・・・どこにも、変化は――――ない? どうして――――だと、したなら、ここへ一体何をしに―――?

  わざわざその身を、危険に晒す事もないだろうに――――)

  う・・・・ん??

 

 

〔そう・・・・そこにあったのは、いつも見慣れた光景・・・。

しかし、ある異常を目撃してしまうのです、その異常とは―――? その部屋の端末にある、接続部付近の―――ホコリ――――

なぜか、そこだけが、不自然にも、一部なくなっていたのです。〕

 

 

ジ:ま・・・・まさか(カチ―――・・) “パス・ワード”・・・・“履歴”・・・・

 

  は――――っ!   そう・・・・既に・・・・してやられた後・・・・。

  だから、ここには、もうとどまっておく必要もなくなった―――と、いうわけ・・・。(フ――・・・っ、負けたわ)

 

 

〔そして―――もしやと思い、急いでその端末を立ち上げ、自分のパス・ワードを入れるジィルガ・・・・・

その履歴を見るにあたり、自分の負けを認めたようです。

 

では―――その画面には、ナニが?それは・・・・〕

 

■P・コピー終了―――25:40―――ジィルガ・アィゼナッハ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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