<弐>
〔そして、事後処理も滞りなく終わり、コトの報告をするために、教会に来た、臾魅とナオミ。〕
バ:ぅん?もう片付いたのか、案外早かったな。
サ:あァ、こっちは、もう少しかかると思ってたのにな。
ナ:あ・・・・いえ・・・。
バ:うん?どうした・・・? 冴えない返事だな、何かあったのか・・・?
マ:おう、どうした、お前達にしては、早かったじゃあないか。
ナ:あ・・・元締め、ちょっといいですか・・・。
マ:ん?なんだ―――・・・・
ナ:今回の仕手・・・本当に、臾魅とアタシだけだったんですか―――?
サ:ナニおかしなこと言ってんだ?ナオ・・・こいつが、他のヤツらに情報を漏らすなど・・・・
まさか――― お前、他のもんにとられちまった――― ッてぇのか?
ナ:・・・・・・。(ギュッ――!)
バ:誰――― なんだ?
ナ:分かりません―――。
が、その前に・・・端末か何か・・・アタシに接続(つな)げられるモノ、ないですかね―――・・・
マ:だったなら、私のノートを使いなさい。
ナ:ありがとぅ――――・・・・
カチ――――・・・ カチ――――・・・・
ウィイイイ・・・・
〔この・・・・臾魅とナオミからなされた、余りもの不可解な報告に、焦りを覚えるサヤとバーディー。
しかし、ここでナオミが、自身の身に搭載されている『ノヴァ・ハーツ』のメモリに、予め撮っておいた あるモノ を見てもらおう・・・と、
シホの、ノート・パソコンを使い、それを見せたのです。
すると―――〕
ナ:(カタ・・・カタカタカタ・・・)(あった―――・・・)
これです―――! アタシと臾魅が、現場に着いた時には、ヤツの姿はなく・・・代わりに、これがこの現場に―――!!
サ:(な・・・ッ!!) こ・・・これは!!
バ:“血”の・・・・“ハング・ド・クロス”(『逆十字』)・・・・(なんて悪趣味な・・・)
マ:いや―――・・・そいつは、ちょっと違うな・・・
バ:なんだって? これほどはっきりした『十字架』が―――・・・
マ:バーディー、ちゃんと下の方まで見たか・・・?
バ:(下――?) どういうことだ・・・それは・・・
マ:いいか、よく見ろ―――・・・。
この・・・“十字”の縦棒の最後のところ・・・ここのところが、僅かながら、横に跳ね上がっているだろう・・・。
臾:あ―――・・・・ホンマや。
マ:ゆえに、これは『十字架』ではない。
サ:だったらなんなんだ―――?
マ:そうだな―――・・・あえて言うとしたなら、『鎌』と言ったところか?
バ:(“鎌”・・・だと??) ま――― まさか?!!
サ:ん―――? どうした?バーディー、お前知ってるのか?
バ:いや・・・直接は、よくは知らないんだが・・・
ただ、向こう(米)で、支部局長やってた時に、たった一人だけ、それに該当する者の噂を、耳にしたことがあってな・・・。(チラ・・・)
マ:・・・・続けろ・・・。
バ:(ふぅ・・・) そいつは、その身には、余り似つかわしくないものを、得物として使っていたようだ・・・
そう・・・別称
デス・スクレイパー
『死神の大鎌』
―――と、呼ばれるな・・・。
〔その画像を見たとき、思わず戦慄がその場に走ったのです―――
なぜなら・・・
壁に浮き上がる
血の
逆さ十字
それが、そこにあったのだから・・・。
でも、ただ一人、それを否定した人物が――― それは、シホだったのです。
それが、どうも、彼女の言(ごん)によると、
『これは、十字の縦棒が横に跳ねているから、“十字架”ではなく、“鎌”である・・・』
と、いうのです。
そして、今度は、バーディーが、その『鎌』についての反応を・・・
(しかも、そのことを話していいのか、どうか・・・を、目配せでシホにしてみれば・・・“続けろ”とは・・・。)
そこで、深呼吸を一つ入れ、バーディーの口から出たこととは・・・
“死神の鎌を操る、畏るるべき者”
の、存在・・・。
しかし――― それは――――〕
ナ:え・・・っ?! それじゃあ・・・バーディーさん、そいつの事を知ってるんじゃ・・・・
バ:いや、私が知っているのは、ここまでだ―――・・・そいつが、誰であるかは、分からない・・・がな。
マ:フッ―――・・・・フフフ・・・・成る程な・・・。
サ:お前―――また、ナニを隠してんだ??
マ:―――・・・まあ、よかろう。
おい、ナオミ、私宛に来ているメールを開いてみろ。
ナ:分かった――――。(カタカタカタ・・・・)
マ:そこの―――― そう、そいつだ・・・
ナ:あっ―――! こ、これは!!
臾:ン〜〜〜――――と、ナニナニ・・・本文が・・・『気をつけろ』だけやてぇ〜〜?!!
サ:(チッ――・・・)ふざけたマネを・・・・
マ:だが、『送信者』は、どうなっている―――?
サ:(ん―――?) ペルソナ・・・・ノン・グラ−タ・・・・
バ:『好ましからざる人物』―――から・・・だと?!!
マ:その通りだ・・・。
臾:(あへ?)〜〜〜――――ゅうて・・・どゆことですのんや???
マ:実はな、この二・三日前、欧州の本部から、“特別派遣員”が、こちらに来る・・・・と、いう通達があったのだ。
そして、その者は、今日の午後の 『欧州官僚特別便』<ユーロ・クラット・スペシャル> で、この地に降り立ったそうだ・・・・
サ:(ぅん??) ちょ、ちょっと待て―――?! 今日の午後の便・・・ってことは、もうここにいても、不思議じゃあないじゃないか???
マ:そうだ――― だが、その者は、入管すると同時に、行方をくらましたそうだ・・・。
そう、機関の者も言っていた・・・その、連絡を受けたのが、この一時間前だ。
バ:誰なんだ――― そいつの名は・・・・
マ:聞かなかったほうが――― 知らなかったほうが、いいと思ったのだがな・・・私としては。
だが、まぁ・・・ここまで来てしまったのなら、仕方あるまい・・・その者の通り名は・・・
ウイッチ
だ・・・。
バ:な―――っ!!ナニ??!! あ、あの―――?!!
ナ:ど、どうしたんですか?バーディーさん・・・
サ:『魔女』・・・そうか・・・とんでもないヤツが、こちらに見舞いに来た―――ってぇのか・・・・
臾:へっ?!! “とんでもない・・・”って・・・ドン、そいつの事、知ってんのでっか??
サ:あァ・・・噂くらいはな・・・。
何でも、そいつの仕事ッぷりは、冷酷非情を極め、相手には、ひとかけらの憐憫も、持ち合わせないそうだ―――・・・。
成る程な・・・ヤツなら、このくらいの事を、しかねん・・・・
マ:ナオミよ・・・お前、始めにそいつを見て、どう思ったね―――?
ナ:え・・・あ、ああ、この・・『血の逆さ十字』の事だろ・・・。
正直、こんな事をするのは、人間業じゃあないね・・・思わず、総毛立っちまったよ・・・
バ:気をつけろよ・・・なんでも、その“ウイッチ”―――・・・味方のヘマをも、赦しちゃくれないそうだぞ・・・
ナ:い゛い゛っ?!! ば・・・バーディーさん、脅かしッこなしですよ・・・?
ハ:そのくらい、気を引き締めろということだよ―――! これ以上、私の仕事を増やされても、かなわんからな!!
ナ:は・・・はァい・・・・。
〔そして・・・・シホのメールからは、また、畏るるべき者の存在が、明らかに・・・(恐らく、先程の者と、同一なのであろう・・・)
その者の二ツ名は――――・・・
ウイッチ
この・・・冷酷非情を極めた、恐怖の仕事人が、この地に・・・しかも、欧州から、来てしまった―――・・・と、いうのです。〕