<四>
〔それはさておき――― アレから数刻して、おひぃさんが登社するのですが、実はここでもちょっとした異変が――――・・・
それというのも、普段は無駄話をしない彼女が、なにやら親しげに、誰か・・・・と、おしゃべりをしながら――――・・・・
ここの階段を、登ってきているから・・・・。
では、そのご様子をちょっと――――〕
お:あら――― まあ――― すると、あなた様は、驍様の幼い頃を、よく存じていらっしゃると―――。
誰:ええ――――そうです。
あの子はァ・・・こォんな、ちっちゃかった頃から、私が可愛がってきたようなものですからァ・・・。
お:(ふぅん・・・)そうなのですか・・・。
あ、ここが、今、わたくしが働いている、職場なんですのよ?
誰:へェえ〜〜〜“ギルド”・・・ですかァ・・・。
お:さ、お入りになさって下さいまし――― お茶でも、淹れますので―――
誰:それではァ、お邪魔しまァす――――。
婀:おお――― これは姐上、お早うございま・・・ああっ!!
お:はい、お早う――― えっ?!どうかしたの?
誰:あ・・・っ、あなた様は、あの時のォ・・・。
お:あら・・・もうお二人は、お知り合いなの?
婀:え・・・・ええ、今朝方、光苑寺で・・・
どうも、先程は、紹介もままならず、ご無礼をいたしまして・・・・。
妾は、森野婀陀那と申す者です、アィゼナッハ殿・・・・。(ペコリ)
誰:私の名を――― もう既にご存知でいらっしゃるとはァ・・・。
そうですかァ――― あなた様が、柾木さんの、唯一無二のご親友でいらっしゃる―――。
ではァ、改めまして・・・私が、リヒャルトの養女、
ジィルガ=アィゼナッハ
と、申す者ですゥ。
婀:(成る程・・・この方、名をジィルガと・・・ん??以前に――― どこぞかで聞いたような???)
そうでありますか・・・ところで、ジィルガ殿、先程光苑寺で会われた時に、どなたかのお墓をお探しでいらっしゃいましたな・・・
もしかすると、松元様のお墓――― では?
ジ:ええ――― そうです。
しかし・・・ハナコの事を、ご存知でいらっしゃいましたかァ・・・・。
婀:どうも――― あの時は、気が利きませんで―――・・・・
ジ:いえ・・・こちらこそォ。
〔おひぃさんとおしゃべりしながらやってきた、誰か・・・とは、
ご多分に漏れず、婀陀那がお寺で会ってきた、あのドイツ語を話す美女だったのです。
しかして、その実態は―――
なんと、ステラ=驍の“悪友”でもある、アイゼンおぢさんの『養女』、その名を
ジィルガ=アィゼナッハ
と、いうのでありました。
そして、ジィルガさんが、お寺に来た理由の一つ――― 『自分の知り合いの墓参り』も、どうやら、松元ハナコ女史のものだったようであります。
それからそれから――――?〕
お:はい・・・お待たせをしました、粗茶ですが、どうぞ・・・
ジ:あァ、これはどうも・・・お構いなくゥ。
婀:そういえば・・・ジィルガ殿、そなた、あの時は、母国語を話しておられましたが・・・こちらの言葉も?
ジ:ええ――― 父が、外交のお仕事をしてたものでェ。
その関係上で、こちらには長くいた事もありましたのでェ―――・・・
婀:そうでございましたか・・・。
お:それはそうと・・・ねぇ〜〜〜?婀陀那ちゃあぁ〜ん? あんのバカ、今日はいつになったら、来るのでございましょうかしらねぇぇ〜〜?
婀:え゛っ?!あっ・・・あぁ・・・そう・・・で、ありますなぁ・・・・
ひ、ひょっとすると・・・今日は、ずるして来ないかも・・・・(−フ−;;A)
お:ほっほぉぉ〜〜〜う・・・・ズル・・・ですか・・・##
ジ:あらぁ?どうかされたのですかァ? 柾木さん。
お:いぃぃいえ、なぁんでもごじゃいませんのよほぉぉお?#(おっほっほっほっ・・・)
あぁ、それから・・・わたくしの事は、柾木さん―――とかでなく、おひぃさんと呼んで下さいな?
ここの皆は、そう呼んでおりますので。
ジ:おひぃさん――― なんだか、とっても砕けた方でいらっしゃるのですねェ―――。
婀:そうそう・・・妾のことも、森野様ではなく、婀陀那でけっこうですぞ。
ジ:はァい――― かしこまりましたァ―――。
婀:(はて・・・この方、人格者とも思えるのじゃが―――・・・やはり、何か隠しておるのかのぅ??)
〔まァ・・・・いつもの事ながら、時間通りに姿を現さない、ここの代表に、ご立腹のご様子のおひぃさん。
でも・・・ホントの事いうと、もう既にここには現れて、それでトンずらぶっこいてんですがね?
婀陀那さんも、そのことをフォローするのに、『今日は来ないかも?』って・・・
逆にそのことが、おひぃさんをぷちギレ寸前まで行かしてしまふのですが・・・・
なんと、ジィルガさんのお蔭で、何とか怒りはいさめられたようです。〕