<拾壱>
判:それでは―――― 被疑者を前に・・・
ジ:・・・・・・。
判:右の者――― ジィルガ=ナハトミュンゼン=ナグゾスサール は、自身を“悪魔”である・・・と、認めたことにより、
当審問委員会は、彼の者を“有罪”であると認めるものである・・・。
サ:ナニ―――?!
臾:何ですやてぇ〜〜―――?
ナ:そ・・・・そんな!!
判:但し――― この一件に関して、一票の無効票があったことを告げる。
よって、被疑者は・・・
『ギルティ・ブレイ・・・・』
―――お待ち下されい!―――
〔淡々と読まれる判決文・・・そして、被疑者ジィルガを『断罪』―――と、言いかけたその時・・・
それをまるで引き止めるかのような、徹(とお)る声が――――〕
サ:今の・・・声―――!
ナ:どこか・・・・聞き覚えのある・・・
臾:誰やねん―――?!!
―――ザッ―――
臾:ああっ――――あん人は・・・・
サ:来てやがったのか・・・・あいつ。
ナ:(でも・・・それにしても、あの衣装は、まるで・・・・)
〔今の、この―――― まさに判決を引き止めさせた声の主は、
神殿騎士のような衣装を身に纏った婀陀那・・・・その人なのでした。〕
判:な――――何者かね!君は・・・神聖なるこの場を穢すなど・・・・
婀:妾か―――? 妾は、この審議の決議に、納得しかねる者でございまするよ・・・・
ジ:(え・・・?)あ、あなた―――――は・・・
バ:(この人が・・・今、ナゼここに??)
マ:(フ・・・ようやく来おったか・・・)
検:な―――納得しかねるとはどういう事か!?
こちらは、厳正に厳正を重ねた上に出た結論なのだぞ?!
それを―――・・・一介の誰とも分からぬ者が遮りおるとは・・・・ええい―――!何をしておる! 早くこの者をつまみ出せい!!
婀:ほほう―――― 妾をつまみ出す・・・・とな?
ならば問う―――! この者が『断罪』になる理由がどこにござる―――! ただ、“悪魔”である・・・その一点だけでありましょうが!!
陪:な―――ナニィ?! ナゼ・・・そのことを・・・
婀:(フッ・・・)なぁに、おおよその検討くらい付いておる・・・・そなたらのやましい考え方など・・・・なぁ。(ニヤリ)
検:ええい―――! ここに来てまだ我らを愚弄する気か―――! きさま・・・何様のつもりだ!!
婀:・・・・妾か・・・・妾こそ、“神”そのものよ・・・
ジ:(えっ?!)
検:なんともお笑い種(ぐさ)な――― ならば、神だというのなら、鳥のような翼がないではないか!!
婀:(ふふ―――・・・)確かに・・・今は、ない・・・・
検:フン―――それ見たことか・・・・
婀:なら―――さすれば・・・この者が“悪魔”である証拠は?
検:な――――ナニ??
婀:悪魔であるということの証拠よ・・・牛のような角は――――コウモリのような羽は―――― 一体どこにござる・・・
そなたらが、この者を悪魔である――――と、決め付けた第一の理由のは、この者からの自白、それだけでありましようが―――!!
〔正論・・・まさに正論で、相手を真っ向から突き崩していく婀陀那・・・
そして、それには黙らざるを得なくなった、検察官が・・・・
しかも――――〕
婀:それに――――お主・・・そういえば先程、妾に対し“翼がない”と申し立てておったな―――・・・
ならば、良い機会じゃ・・・・そなたらにも見せてつかわそう、“神”のおるということを―――!!!
『神気発生』―――!!
〔彼女が・・・婀陀那が、己の神力を開放したその瞬間―――― その場に居合わせた全員が、目撃することとなったのです。
背中からは、薄っすらと光り輝く一対の翼に・・・・胸元には、腕組みをしたもう一対の腕・・・・
そう、その婀陀那の姿こそ・・・〕
ジ:ああ―――ッ・・・あ、あなた・・・・は!!
サ:婀陀那・・・・
臾:あ・・・婀陀那はん・・・なんもこんな時に神さんにならいでも・・・・
ナ:そ・・・それにしても、ここにいるアタシらより・・・むしろジィルガさんのほうが、驚いて見えるような・・・
婀:・・・・さぁ――― これで・・・いかがか?!
検:そ―――そんなバカな・・・か、神がこの世に実在する・・・など・・・・
婀:ほう――― これでも未だに信じられぬか・・・・ヤレヤレ、 ジーザス・クライスト も、お嘆きであらせられる・・・。
検:ナ――――なんと??
婀:よいか―――! 今より起こりうることを、刮目してみるが良い!!
出でよジグムンドよ! 大地に突き立ちて、結界の礎とならん―――!!
〔突如として現れた、婀陀那の聖大剣ジグムンド――――
そしてそれは、床に突き立つなり、その場の時間と外との時間のリンクを、瞬時にして遮断してしまったのです。
それは・・・・ナゼ――――?
それは、彼女――――婀陀那より、上位の者が出現しやすいように・・・・〕
婀:妾が―――神であると、信じるにたらぬなら・・・この世の頂神様に、お出でになっていただくまで―――!
さあ――― 各々方の『記憶の世界』よ・・・今こそ思い出すのじゃ! 二大頂神様のお一人にして、我が主―――女禍―――様を!!
サ:ナニっ?! あいつも来てやがったのかぁ?!!
臾:ホイでも・・・あの場には婀陀那はんしかいてまへんでぇ?
ナ:(ん―――?)おや・・・あれは?!!
〔『記憶の世界』・・・それは、“モノ”が“ある”という・・・で、あろうとされる世界。
当然、『主物質界』には、幽霊や神様などは実在せず、それらは皆、存在はしていても、目には見えない物体、あるいは現象として捉えられているのです。
そして・・・・今―――その空間には、扉など開いていないのに、紛れもなくそこにいた人物が・・・・
身には古代中国皇帝の服――――
頭上には、羽飾りつきの冠―――
そう・・・それこそが、この世界での二大頂神様のお一人である―――女禍様―――その人なのです・・・。〕