<拾弐>

 

ジ:ああッ――――あぁァ・・・・(そ・・・んな・・・神人・女禍まで・・・?!!)

バ:こっ―――これは・・・

 

 

女:》異端審問の皆様・・・もし、あなた方に“ココロ”と、いうものがあるのなら、

  もう一度、この審議の見直しをしてみる・・・と、いうのはできないものでしょうか・・・《

 

判:(ゴク・・・ッ)

 

女:》確かに―――・・・そこな者は、“悪魔”であるに相違ないことでしょう・・・

  しかし、今回の辞令は、己の能力を、己の慾に行使したというのではなく、他人の・・・人助けに役立てたとのこと・・・

 

  永き間、この地を鑑みていて、そのようなこと、私は始めて耳にいたします。《

 

 

マ:確かに――― それはそうですな。

 

バ:(ぅん??)

検:(ナニ??)

 

マ:私も―――・・・聖職に就いていて分かるのだが・・・悪魔が人の命を助けた―――例など初めて聞く・・・

  それに、強ち、自分が悪魔であると認めるのは・・・・どうもきな臭くありませんかね―――?

 

検:な―――ナニを今更・・・そんなことを・・・大体あなたは――――

 

マ:んん―――?私・・・かね?

  私は、今、この人の弁護をしているだけだよ、言っただろう? 何も弁護するのは、審議のときばかりではない・・・・と。

  今が、その時――――なのだよ。

 

女:》(ふふ・・・)だ・・・・そうですよ、いかがいたしますか? 審問委員長殿・・・《

 

判:う・・・・むむぅ・・・分かった。

  私自身未だに信じられぬが、あなた様が真の女禍様ならば、いたし方ありますまい・・・・

  もう一度、審議を見直すこととしよう。

 

女:》(ニコ・・・)ありがとう・・・それでは、失礼いたしますよ――――《

 

                             

 

 

バ:え・・・ええっ?!(消え・・・た?!)

ジ:(あの・・・方々・・・)

 

―――                 ―――

 

ジ:(この・・・匂い!)戦場で・・・いつもあの方がつけていらした・・・

=シャンタージュ=

 

判:わ・・・我々は、今、夢でも見ていたのか?

検:それよりも――― 早速、判決の続きを・・・

 

判:ああ―――うむ・・・そうであったな・・・では、気を取り直して――――

  右の者、ジィルガ=アィゼナッハ、証拠不十分により―――――

『ノット・ギルティ』

 

検:はい?? なんですとぉ―――?!

バ:(えっ? そんな―――あの時は、私一人が・・・)

 

判:だが・・・ほら――――

検:あ―――・・・っ、いつの間に??

 

判:では、そういうことで―――― この審問会を閉廷する・・・解散―――

 

カンッ――――☆                   カンッ――――☆

 

〔そう、そこには―――既に神の形をしていた者などおらず・・・床にも、突き立っていたであろうはずの大剣すら、跡形もなく消えていたのです。

 

ただ・・・そこには、ジィルガ自身、昔よく戦場で嗅いでいた、なつかしの匂い・・・=シャンタージュ=の、残り香がしている以外は・・・

 

 

そして、曲げられようのない事実がここにも一つ・・・それは、ジィルガ女史の無罪放免―――だ、と言うこと・・・〕

 

 

バ:すまなかったことをしたな――― たとえ一時でも異端者の名を着せたりして・・・

 

ジ:いえ――― それは、あなたも任務に忠実に従ったまでのこと・・・謝る筋合いなどありません。

  かくいう私のほうこそ――― 異端審問官であるあなたがいるのを知らないで、能力を開放してしまうなんて・・・なってませんよね。

 

マ:(フ・・・ッ)おや―――お前達、傍聴に来ていたのか?

 

 

臾:ああ〜〜当然やがな、何しろ、ウイッチはんには、まだまだおせーてもらわなあかんコトが、ようさんあるさかいに・・・・な?

ナ:それもそうだな・・・それに―――あの時のお礼・・・まだだったね、ありがとう――――(照)

 

ジ:いえ―――それは別に・・・・(キョロキョロ)

 

サ:あレ―――? どうした・・・あんた、落ち着きがないようだけど?

ジ:ぇ――――いえ・・・あの人達は、どこに・・・・と、思って・・・・

 

マ:あの人――――“達”? とは・・・一体誰の事かね?

 

ジ:誰―――って・・・ほら、私の横に二人・・・いたではありませんか・・・・・。

  一人は―――大剣を使う、あの人・・・・・・と―――――

 

―――                 ―――

 

〔すると・・・また、その時、あのなつかしの香り=シャンタージュ=の、爽やかな芳香(かお)りが、漂ってきたのです。〕

 

 

ジ:ああっ―――や、やはり・・・あなた方は!!

 

婀:ふふ―――・・・中々に遅かったようじゃが・・・まだあの者共・・・ごねておったのですかな?

 

サ:なぁ―――んだ・・・やっぱり〜だと思ってたが・・・あそこに来てたのか。

J:あり? バレちってた??

 

臾:あったりまえやがな〜〜 そこにおるのに、次の瞬間おらへんやった〜〜―――なんて、あんさんぐらいにしか、出来るこっちゃないデスで?

ナ:えっ――――・・・そ、それじゃあ・・・

 

婀:うむ・・・総てはこの方のお能力、『記憶封鎖』なのじゃよ。

 

 

ジ:ああッ・・・や、やはりあなたは・・・・

婀:(フ・・・)それにしてもしばらくぶり・・・実に6,000年ぶりというところですかのぅ。

  我がよき戦友(とも)、ジィルガ=ナハトミュンゼン=ナグゾスサール殿・・・。

 

臾:は―――はぁあ?! と、戦友(とも)ゆぅ〜〜て、どういうことなんや??

 

婀:読んで字の如し―――じゃよ。

  妾とジィルガ殿とは、互いに属していた陣営は違(たが)えども、その実力を認めおうた仲なのじゃ。

 

  それが―――よもや、こういう形で、またあい見(まみ)えることになろうとは・・・・。

 

ジ:それは―――こちらとて同じこと・・・。

  まさか、あなたほどの上位神が、どうして地上などに・・・・

 

臾:へっ―――??? ち、ちょいまち! じ、上位神・・・って、どういうことやの?

ナ:そ、そうだよ―――いつも元締めは、この人の事を低級神・・・って。

 

ジ:なんて失礼な―――!!

  本来ならば、この方とは同席することすら、あいままならないものを―――!!

 

婀:ははは――――よいよい・・・。

それに・・・確かに、その者達の言うように、今の妾は位が低いのですからなぁ・・・。

 

ジ:ナゼっ―――どうして・・・かつては、神界第一軍の総司令官でありながら、征魔大将軍として、前線を闘っていたあなたが―――・・・

 

 

「そう―――そこには、余り聞きなれない事実・・・・今は低級な婀陀那が、その昔は位も高かったということが・・・

しかも、それをよろしく示唆することには、彼女達自身、お互いが認め合った好敵手同士―――でもあったようです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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