<伍>

 

ナ:(っっ・・・たく、呑気なんだからなぁ、人の気も知らないで―――

  って、よく考えてみれば、役得・・・なんだよな? これ――・・・って。)

  ま――― 臾魅のやつには、ちょっと悪い気がしないこともないけど・・・な。(キシシ―――・・・)

 

ス:あり―――? なにニヤついてんの?ナオちゃん。

 

ナ:えっ――?! あ・・・・あぁ、いや、べ・・・・別に??

 

  そ――・・・そいえばさぁ、こ、こんな風に、二人っきりになれたの―――って、久しぶり・・・だよね?(ぽ

 

ス:へ――――??? そうだっけ?

 

ナ:あぁ―――そうだよ。

  いいよねぇ〜、満天の星空の下で、アタシら、ふ・・・二人っきり・・・だ、なんて・・・ロマンチック―――だよね??(赤面)

 

ス:・・・・今日、星なんか出てないけど―――

ナオちゃん? 具合悪いんだったら、病院いこか?

 

ナ:あ―――あははは、そ、そいえば―――今日の予報・・・曇り・・・だったね―――

  (て、敵は本能寺にあり・・・)

 

 

〔ナオミ―――― 千載一遇のチャンスと、あらん限りのボキャブラで、幼馴染の気を引こうとするんですが・・・・

なんとも、いかんともしがたいことには、あらぬ方向へ勘違いをおこし、話の腰を折らん―――とするニブチンヤローが・・・・

(ガンバレ―――! そんなニブチンヤローに負けんな!ナオミ!!)

 

しかし――― ここで、この淡くも甘美な雰囲気に浸っていた二人の背後に、静かに忍び寄る影を・・・・

ジィルガが目撃してしまったのです――――〕

 

 

ジ:(はあっ―――はあっ―――)

あぁ―――・・・やはり驍ちゃん・・・・それに、ナオミ――――

(はっ!)あ・・・あれは!!

 

 

〔そこで彼女が目撃したもの・・・とは。

影から実態に移行していくラーゲル

と・・・・

幼馴染の気を引こうと、現(うつ)つをぬかしていたナオミ

 

そう―――・・・そのことに、気が付かず、反応が遅れてしまった者がいたのです。〕

 

 

ナ:(えっ?!はっ――!!)し―――しまっ・・・

ス:(ナ、ナニ?!)

 

ラ:ぐははぁ――― 死ねぇ〜!

 

ジ:(ダメ――・・・今から叫んでいたのでは・・・間に合わないっ!!)

  (く・・・)仕方が・・・・ないっ!!

 

 

〔ここで、ジィルガがとった行動とは―――

彼女本来の持てる能力(ちから)の開放

彼女自身が“影”となり、ラーゲルが彼らに襲い掛かるよりも速く―――!

 

そして、ジィルガの影からは、無数の“闇の手”と呼ばれる物体が、ナオミとステラの二人を包み込み、

自分の影へと誘い込んだのです。

 

ですが、しかし―――それは・・・・

 

そう、それは、特定の上位魔族でないと、扱う事ができない『闇引き』と呼ばれる技だったのです。〕

 

 

ナ:う・・・うわ!! な、なんだ・・・これ!?

ス:(か、影からの・・・手!!?)

 

ラ:ナニ?!・・・これは!!

 

 

ナ:あぁ・・・っ・・・・か、影に・・・引きずられていく―――!!

ス:(この技は―――!!)

 

ラ:ん、な・・・っ!

っ・・・く、誰だぁ!オレ様の獲物を横取りしやがったヤツは!!

 

 

〔あと・・・一歩のところで、獲物を奪われてしまい、歯噛みをするラーゲル。

しかし、この者のすぐ背後には・・・・〕

 

 

ジ:煩(うるさ)い――― お前・・・少し・・・黙れ!!(クワッ!)

ラ:(う・・・っ!)お、お前・・・何者!!?

 

 

〔たった今、二人を救助し、その二人に牙を剥かんとしていた者に対する、怒りに煮えたぎっていた『魔女』の姿が・・・

そこにはあったのです。〕

 

 

ジ:フン――― お前のように、お安い連中は、これだから困る・・・・

  相手の正体など、その者を殺して、徹底的に調べ上げれば・・・いづれ分かることだ・・・。

 

ラ:い―――いや、ちょっと待て?! しかし・・・お前・・・今の“闇引き”を使ったのは―――

ジ:だ―――と、したなら・・・・どうするのだ・・・

 

ラ:う・・・いや・・・まさか―――あれは・・・あれは、特定の上位魔族でないと・・・・

 

ジ:黙れ―――!! もういい・・・ゴタクは沢山だわ、そろそろ―――死ね!!!

 

 

〔自身の武器―――“エルブ”で、標的を微塵に粉砕してしまうジィルガ―――

ですが・・・〕

 

 

ス:姉・・・・ちゃん・・・・

 

ジ:(クル)

 

ナ:あ・・・っ、ああ・・・・。(ジィルガ=ウイッチ・・・)

 

 

〔振り返ったその身には、余程に頭に血が上っていたのでしょうか・・・

日頃、沈着冷静な彼女からは想像もできない姿―――相手の返り血がびっとりと、こびりついていたのを見て、

ステラとナオミは、殊更に驚くしかなかったのです。

 

しかも―――まだ驚いたことには・・・〕

 

 

ジ:・・・・ばか、どうしてこんな・・・危険な処に・・・・

ス:――――・・・。

 

ジ:(フッ―――)でも・・・良かった・・・驍ちゃんが無事でいてくれて―――・・・

 

ナ:(えっ??)あ―――・・・。

 

 

〔そう――― そこに奇妙なものを、ナオミは見ていたのです。

 

いつもは、目の前にいる幼馴染みを―――からかい、いじめ続けていた者が・・・

今、その者が彼に投げかけた言葉とは、今までとは全く裏腹な、優しい笑みで、彼の身を無事に安堵するモノだったから―――

 

そして、同時に気づいてしまったのです。

たった今―――始末した敵の返り血を、その身に浴びながらも、自分の幼馴染みの前に立っている女性が、

常日頃、どんな眼で彼の事を見ているのか―――を・・・。〕

 

 

ジ:それより・・・早くお帰りなさい、ここはまだまだ危険なのよ―――

  ナオミ、彼の事・・・お願いね。

 

ナ:(あ―――・・・)あっ・・・は、はい。

  さ――― 早くこちらへ・・・

 

 

〔一段落が付き、ステラをここから退去させるよう、指示を出すジィルガ―――

そして、その意思を汲み、颯爽と行動を起こすナオミ――――

 

ですが―――・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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