<陸>
〔ですが、ここで、それを遮ろうとする者が現れたのです・・・。
と、いうことは、『狩り』の手から漏れた、はぐれ魔物たち? いいえ―――
その者は、この地点から発せられた、あるモノに反応をし――― 急遽、この地点まで駆けつけた・・・・〕
バ:待て――――
ナ:(えっ?!)あ・・・バーディーさん、でも・・・“待て”ってどういう事なんですか?!
一刻も早く、タケ方・・・いや、この人を連れ出さないと―――・・・・
バ:彼の事は―――・・・・心配は要らない。
それよりも・・・私が聞きたいのはあなたの事だ、ジィルガ=アィゼナッハさん・・・。
ジ:(ピ・ク・・・)
ス:ちょ―――ちょっと待って、バーディーさん!
姉ちゃんは―――この人は、ナオちゃんとワシを・・・・・
バ:“悪魔”・・・・の能力(ちから)で、助けていただいた―――・・・と?
ナ:(え・・・)ええっ?!い、今なんだって―――?
バ:ジィルガ=アィゼナッハ・・・・いや、ジィルガ=ナハトミュンゼン〜ナグゾスサール・・・・
あなたを、悪魔である容疑で逮捕いたします・・・ご同行――――願えますか?
ザ ワ
ナ:ちょ―――ちょっ・・・ええ?? 今、ナニ・・・ナグゾスサール・・・って、魔将の家系じゃあ・・・
な、何かの・・・何かの間違いなんじゃあないんですか?!!
ジ:フ――――・・・フフフフフ・・・・この・・・私の『真の名』を知っているなんて・・・・
あなた一体何者―――?
バ:私か―――― 私は・・・こういう者さ―――・・・・(スチャ――)
〔ナオミとステラの前で、ジィルガの正体を暴いて見せたバーディーの手には・・・・
ヘキサグラムの中にある十字架
が、燦然と輝いていたのです。
でも、そのエンブレムが同時に意味する事とは――――〕
ジ:“インクィジター”<異端審問官>・・・・。
そう―――あなたが・・・“ウォーロック”(人形遣い)
ナ:ええっ? インクィジター・・・って、異端審問官?? バーディーさんが??
バ:・・・・いかが―――です? 二・三質問したい事がございますので・・・一緒に来ていただけませんか?
ジ:・・・・フッ、そうね、今更ジタバタしていても仕方のない事だし・・・・いいわ。
〔なんとも――― 以外に素直に、バーディーの縛に付くジィルガ・・・・。
しかし―――これは、彼女達があとから聞いたことだったのですが、『異端審問官』に睨まれた者は、
たとえそれが、現社会的に身分の高い者であろうとも、逃げおおせる事は不可能―――だというのです。
そして、ジィルガが、とある場所へ連行されていった後で―――〕
ス:(ふぅ―――・・・)また・・・だ。
ナ:え??
ス:また・・・ワシは、姉ちゃんに救われながらも・・・・結局何も出来ずじまいになってしまった―――
ナ:ど・・・どういう事?
ス:ワシが・・・あの人に、救ってもらったの・・・・今回で二度目なんだ―――・・・
ナ:でも・・・・一度目は―――・・・
ス:それも、悪魔の能力(ちから)で・・・ね。
ナ:な―――なんだって?!
バ:それじゃあ・・・あなたは、彼女が『悪魔』であったことを・・・・
ス:『知っていた』・・・と、いうよりも、忘れかけていたのさ・・・。
何しろ、一度目は幼かった事だしね。
それが・・・こんな形で思い出すことになるなんて・・・申し訳ないったら・・・ないね。
ナ:(タケ坊―――)
バ:そうでしたか・・・。
それでは―――もしよければ・・・・
ス:ああ―――証言台に上がってもいいよ。
“悪魔に生命を救われた人間”――――と、して・・・
ナ:じ・・・じゃあアタシも―――
バ:いや――― お前は止めておけ・・・
ナ:ど―――どうして??
バ:一応――― お前や臾魅、サヤはあの人の“同僚”―――という形だ・・・
私だけならまだしも、他の審問官に、妙な疑いをもたれたくもないし・・・な。
〔そして――― 後に合流した、サヤと臾魅には、ジィルガが、諸事情で本国に帰った―――
と、いうことにしておいたのです。
ですが――― このお話は、まだ、これだけには終わらなかったのです。〕