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〔そんな折―――― 婀陀那が、一服をするために給湯室に入ったところ・・・

それを見計らったか―――・・・の、ように、同じくしてステラが・・・〕

 

 

婀:(ふぅむ・・・アィゼナッハのお嬢様も、また本国に帰られたか・・・・)(ズズ―――・・・)

  ま・・・これで少しは大人しくなるというものよ。

 

カチャ――――

 

婀:(ぅん?)・・・社主殿ではないですか・・・。

  いかがされたのですか?

 

ス:うん・・・あの、婀陀那っち、ちょっと頼みたい事があるんだけど・・・・いいかな?

婀:ええ―――かまいませぬが・・・

 

ス:じゃあ―――ちょっとの間だけ、ここを次元隔離して・・・・・

婀:次元――――隔離・・・どうしてまたそのような?

 

ス:ちょっと・・・他人に聞かれたくない話なんだ・・・

婀:然様ですか・・・・――――――――――――

  どうぞ?

 

ス:うん、すまない・・・・実は―――

 

 

〔ここでステラは、昨晩あったことの一部始終を、包み隠さず、神の一員である婀陀那に話したのです。

 

彼女―――ジィルガが、悪魔の能力で、ナオミと自分を救ってくれたこと・・・

そして、それを異端審問官であった、バーディーに見られ、その身柄を拘束されていること・・・〕

 

―――そして―――

 

婀:何ですと――― あの者の“真の名”が・・・ジィルガ=ナハトミュンゼン=ナグゾスサール・・・だ、と??

ス:ああ―――・・・どうやら、そうらしい・・・。

 

婀:(そんな・・・バカな?!!)

ス:(ン?)婀陀那っち・・・どうかしたのかい?

 

婀:いえ―――・・・なんでも・・・

  (まさか・・・その名を、6,000年を隔てた今、聞くことになろうとは・・・・)

 

  そうですか・・・・・分かりました、あなた様のその願い―――聞き届けましょう。

 

ス:申し訳ない――― ワシは、姉ェちゃんに、二度も救われながらも、その事をすっかりと忘れてしまってて・・・・

  どの面下げて会っていいか・・・・分からないんだ。

 

婀:(フフ―――)ご心配めさるるな、そのようなことで、あの方の気は、少しも変わりませぬよ。

ス:え?? 婀陀那――――っち?

 

 

〔そう――― ジィルガ女史の“真の名”を聞いた辺りから・・・もう一つの“縁”の輪が、動き出さんとしていたのです。

そして、それは、婀陀那自身の言った通り、実に6,000年に及ぶ、ある 因縁 だったのです。

 

こうして、一通りの事を話し終え・・・・給湯室から出てくる二人、

と、そこへ――――〕

 

 

J:≪ねぇ―――婀陀那ちゃん・・・≫

 

婀:(この・・・パルス・・・女禍様?)

  ≪いかが・・・なされたので?≫

 

J:≪聞いてたわよ、あの人・・・あなたの―――――――――なんでしょう?≫

 

婀:≪ふふ・・・・さすがは。

いくら妾が策を弄したところで、所詮あなた様には、ムダな事でしたな。

 

ええ―――そうです、それで?≫

 

J:≪ちょっと待って―――誰か来たわ。≫

 

 

〔唐突に、婀陀那の精神に呼びかける声――― それこそ、この世の頂神の一人、女禍様だったのです。

 

―――――が、どうやら女禍様、給湯室を次元隔離し、なにやらこそこそ話をしているこの二人を訝しみ、聞き耳を立てていたようです。

 

と、すると――――蓋を明けてみれば、自分のかわいい部下の、ある因縁めいた事を知り、

早急に婀陀那とコンタクトを取った――――ところのようです。

 

 

ところで――――ステラに相談を持ちかけられた、当の婀陀那は、

他の誰にも聞かれていなかったのを良い事に、またも単独で解決しよう―――と、した矢先、

直属の上司よりの沙汰があり、“これは隠し事はムダか―――”と、観念し、ことの詳細を話したところ・・・

 

どうやらギルドに来客があったようです。

 

しかもその来客というのも、『狩り手』の一員であり、昨夜の当事者の一人でもある―――――ナオミ・・・だったのです。

(しかも今日は、バーディーと一緒ではないようで・・・)

 

 

ナ:ちょいと――――失礼するよ・・・

 

サ:おう――――どうしたんだ、お前一人とは・・・・珍しいじゃあないか。

臾:そやんなぁ――― バーディーはんと、なんぞあったんでっか?

 

ナ:いや―――その―――・・・実は、アタシ・・・今、あの人の目を盗んできてるんだ・・・

 

臾:は?? アミさん・・・そりゃーサボりやないか??

 

ナ:違うよ――― そんなことより、あんた達二人に話があるんだけど・・・今、ダメ?

 

 

サ:ああ、いいぜ――― 話せよ。

ナ:あ―――・・・ち、ちょっと・・・場所・・・・いいか?

 

サ:(あん?)ここじゃダメなのか?

ナ:ぁ――――ああ・・・・。

 

サ:そっか――――

  おい、おひぃ、ちょっとすまねぇが・・・・オレら二人、ちょッくら出てくるわ。

 

お:はあ?? どうして――――ですの?

 

サ:なぁに――― 別に、こいつのようにサボりじゃあねぇよ・・・こっち(狩り手)の話なんだ・・・。

お:そうですか――― 分かりました、でも、なるべくなら・・・

 

サ:ああ―――よぅく分かってるさ、終わればすっ飛んで帰ってくるよ。

 

 

〔どうやらナオミも、同じくメンバーの二人に、何か相談を持ちかけてきたのですが・・・・

先のステラよろしく、他人には聴かれたくはなかった様子――――

 

そこで、神ではないナオミが講じた手は・・・サヤと臾魅の二人を、外に連れ出すことだったのです。

(ここで注目は、おひぃさん・・・どうやら彼女は、ギルドの勤務時間中に、他の仕事の事・・・例えばバイトとか・・・の話をされるのを、異様に嫌っていたみたいです。

現に、職員の二人を外に連れ出すにしても、渋い返事・・・してますよねぇ。)

 

 

そして――――ナオミたち三人は・・・この町の一角にある、喫茶店にて――――〕

 

 

サ:で―――― なんだ・・・話ってのは。

 

ナ:いや――――その・・・あの、実は・・・ジィルガさんな?

  本国・・・に、帰ったんではなくて・・・まだ、この町のどこか―――――に、いるみたいなんだ。

 

サ:ハァ?なんだ?そいつは・・・・

臾:まさか―――・・・あのウイッチはんを拐(かどわか)したやつがおる〜〜っちゅうんですか??

 

ナ:いや・・・そうじゃなくて――― 実は・・・とある経緯で、あの人がいる場所は特定できてるんだ・・・

 

臾:はぁ〜〜ん・・・ほなら、今から救いにいこか―――・・・ちゅうことか?

 

ナ:いや、そうでもないんだ・・・実は・・・この土曜、ちょっとアタシに付き合ってもらえないだろうか―――・・・

 

サ:あンだぁ〜? らしくもねぇ・・・・ちゃんとしたわけをいいな。

 

ナ:そっ・・・それが・・・今は心の整理がついてない――――ってゅうか・・・

  だから、その日にきちんとするから―――待っててもらえないか?

 

臾:はぁ〜〜〜―――― 何ぞ・・・ややこしそうな話―――でんなぁ?

サ:そのようだな――――・・・

 

 

〔ナオミ―――どう話を切り出していいかも分からず、結局『土曜日に、予定を空けててもらいたい』という、要点だけを言い、

改めて二人の同意を得た上で、その場所を後にしたようです。

 

そして、こちらでは―――〕

 

 

J:≪・・・・どうやら、彼女達も動くようね・・・≫

婀:≪成る程・・・昨夜の当事者でもあるナオミ殿が・・・

  どうやら、責の一端は感じておられるようですな。≫

 

J:≪そのようだね。

  でも・・・いいんじゃない? 別に、私たちの計画には支障はきたさない事だし・・・≫

 

婀:≪そうですな―――・・・では、土曜に・・・≫

 

 

〔どうやら、『狩り手』のメンバーと同じくして、『神』側でも動きがあるようです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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