<捌>
〔そんな折―――― 婀陀那が、一服をするために給湯室に入ったところ・・・
それを見計らったか―――・・・の、ように、同じくしてステラが・・・〕
婀:(ふぅむ・・・アィゼナッハのお嬢様も、また本国に帰られたか・・・・)(ズズ―――・・・)
ま・・・これで少しは大人しくなるというものよ。
カチャ――――
婀:(ぅん?)・・・社主殿ではないですか・・・。
いかがされたのですか?
ス:うん・・・あの、婀陀那っち、ちょっと頼みたい事があるんだけど・・・・いいかな?
婀:ええ―――かまいませぬが・・・
ス:じゃあ―――ちょっとの間だけ、ここを次元隔離して・・・・・
婀:次元――――隔離・・・どうしてまたそのような?
ス:ちょっと・・・他人に聞かれたくない話なんだ・・・
婀:然様ですか・・・・――――――――――――
どうぞ?
ス:うん、すまない・・・・実は―――
〔ここでステラは、昨晩あったことの一部始終を、包み隠さず、神の一員である婀陀那に話したのです。
彼女―――ジィルガが、悪魔の能力で、ナオミと自分を救ってくれたこと・・・
そして、それを異端審問官であった、バーディーに見られ、その身柄を拘束されていること・・・〕
―――そして―――
婀:何ですと――― あの者の“真の名”が・・・ジィルガ=ナハトミュンゼン=ナグゾスサール・・・だ、と??
ス:ああ―――・・・どうやら、そうらしい・・・。
婀:(そんな・・・バカな?!!)
ス:(ン?)婀陀那っち・・・どうかしたのかい?
婀:いえ―――・・・なんでも・・・
(まさか・・・その名を、6,000年を隔てた今、聞くことになろうとは・・・・)
そうですか・・・・・分かりました、あなた様のその願い―――聞き届けましょう。
ス:申し訳ない――― ワシは、姉ェちゃんに、二度も救われながらも、その事をすっかりと忘れてしまってて・・・・
どの面下げて会っていいか・・・・分からないんだ。
婀:(フフ―――)ご心配めさるるな、そのようなことで、あの方の気は、少しも変わりませぬよ。
ス:え?? 婀陀那――――っち?
〔そう――― ジィルガ女史の“真の名”を聞いた辺りから・・・もう一つの“縁”の輪が、動き出さんとしていたのです。
そして、それは、婀陀那自身の言った通り、実に6,000年に及ぶ、ある 因縁 だったのです。
こうして、一通りの事を話し終え・・・・給湯室から出てくる二人、
と、そこへ――――〕
J:≪ねぇ―――婀陀那ちゃん・・・≫
婀:(この・・・パルス・・・女禍様?)
≪いかが・・・なされたので?≫
J:≪聞いてたわよ、あの人・・・あなたの―――――――――なんでしょう?≫
婀:≪ふふ・・・・さすがは。
いくら妾が策を弄したところで、所詮あなた様には、ムダな事でしたな。
ええ―――そうです、それで?≫
J:≪ちょっと待って―――誰か来たわ。≫
〔唐突に、婀陀那の精神に呼びかける声――― それこそ、この世の頂神の一人、女禍様だったのです。
―――――が、どうやら女禍様、給湯室を次元隔離し、なにやらこそこそ話をしているこの二人を訝しみ、聞き耳を立てていたようです。
と、すると――――蓋を明けてみれば、自分のかわいい部下の、ある因縁めいた事を知り、
早急に婀陀那とコンタクトを取った――――ところのようです。
ところで――――ステラに相談を持ちかけられた、当の婀陀那は、
他の誰にも聞かれていなかったのを良い事に、またも単独で解決しよう―――と、した矢先、
直属の上司よりの沙汰があり、“これは隠し事はムダか―――”と、観念し、ことの詳細を話したところ・・・
どうやらギルドに来客があったようです。
しかもその来客というのも、『狩り手』の一員であり、昨夜の当事者の一人でもある―――――ナオミ・・・だったのです。
(しかも今日は、バーディーと一緒ではないようで・・・)〕
ナ:ちょいと――――失礼するよ・・・
サ:おう――――どうしたんだ、お前一人とは・・・・珍しいじゃあないか。
臾:そやんなぁ――― バーディーはんと、なんぞあったんでっか?
ナ:いや―――その―――・・・実は、アタシ・・・今、あの人の目を盗んできてるんだ・・・
臾:は?? アミさん・・・そりゃーサボりやないか??
ナ:違うよ――― そんなことより、あんた達二人に話があるんだけど・・・今、ダメ?
サ:ああ、いいぜ――― 話せよ。
ナ:あ―――・・・ち、ちょっと・・・場所・・・・いいか?
サ:(あん?)ここじゃダメなのか?
ナ:ぁ――――ああ・・・・。
サ:そっか――――
おい、おひぃ、ちょっとすまねぇが・・・・オレら二人、ちょッくら出てくるわ。
お:はあ?? どうして――――ですの?
サ:なぁに――― 別に、こいつのようにサボりじゃあねぇよ・・・こっち(狩り手)の話なんだ・・・。
お:そうですか――― 分かりました、でも、なるべくなら・・・
サ:ああ―――よぅく分かってるさ、終わればすっ飛んで帰ってくるよ。
〔どうやらナオミも、同じくメンバーの二人に、何か相談を持ちかけてきたのですが・・・・
先のステラよろしく、他人には聴かれたくはなかった様子――――
そこで、神ではないナオミが講じた手は・・・サヤと臾魅の二人を、外に連れ出すことだったのです。
(ここで注目は、おひぃさん・・・どうやら彼女は、ギルドの勤務時間中に、他の仕事の事・・・例えばバイトとか・・・の話をされるのを、異様に嫌っていたみたいです。
現に、職員の二人を外に連れ出すにしても、渋い返事・・・してますよねぇ。)
そして――――ナオミたち三人は・・・この町の一角にある、喫茶店にて――――〕
サ:で―――― なんだ・・・話ってのは。
ナ:いや――――その・・・あの、実は・・・ジィルガさんな?
本国・・・に、帰ったんではなくて・・・まだ、この町のどこか―――――に、いるみたいなんだ。
サ:ハァ?なんだ?そいつは・・・・
臾:まさか―――・・・あのウイッチはんを拐(かどわか)したやつがおる〜〜っちゅうんですか??
ナ:いや・・・そうじゃなくて――― 実は・・・とある経緯で、あの人がいる場所は特定できてるんだ・・・
臾:はぁ〜〜ん・・・ほなら、今から救いにいこか―――・・・ちゅうことか?
ナ:いや、そうでもないんだ・・・実は・・・この土曜、ちょっとアタシに付き合ってもらえないだろうか―――・・・
サ:あンだぁ〜? らしくもねぇ・・・・ちゃんとしたわけをいいな。
ナ:そっ・・・それが・・・今は心の整理がついてない――――ってゅうか・・・
だから、その日にきちんとするから―――待っててもらえないか?
臾:はぁ〜〜〜―――― 何ぞ・・・ややこしそうな話―――でんなぁ?
サ:そのようだな――――・・・
〔ナオミ―――どう話を切り出していいかも分からず、結局『土曜日に、予定を空けててもらいたい』という、要点だけを言い、
改めて二人の同意を得た上で、その場所を後にしたようです。
そして、こちらでは―――〕
J:≪・・・・どうやら、彼女達も動くようね・・・≫
婀:≪成る程・・・昨夜の当事者でもあるナオミ殿が・・・
どうやら、責の一端は感じておられるようですな。≫
J:≪そのようだね。
でも・・・いいんじゃない? 別に、私たちの計画には支障はきたさない事だし・・・≫
婀:≪そうですな―――・・・では、土曜に・・・≫
〔どうやら、『狩り手』のメンバーと同じくして、『神』側でも動きがあるようです。〕