<玖>
〔そして―――瞬く間に土曜が来・・・以前約束したように、ナオミがそのある場所に、サヤと臾魅を連れて行くようです。〕
臾:なあなぁ――――アミさん、うちらどこ連れてく気や?
ナ:もうちょいだよ・・・
ほれ、見えた来た・・・あそこさ――――
サ:(この道―――それにあの建物・・・)
まさか――― 異端審問会――――か。
臾:えっ? なんやてぇ―――?
ナ:知ってたのか――――
サ:ああ―――まあ・・・オレ自身、過去に一度・・・な。
ナ:――――と、いうことは・・・・
サ:その通り、無罪放免――――と、いうヤツよ。
臾:どゆことなんや??
サ:まあ・・・つまり・・・だな。
このオレがヴァンパイアで――― 奴さんが悪魔かなにか――― そういうことなんだろ?ナオ・・・
ナ:ああ――――だけど・・・アタシはあの人に助けられた――――ってのに、
あの人がバーディーさんに拘束されるとき・・・何もできなかったんだ。
サ:そうか――――そういうことだったのかい・・・
まぁ―――ここで四の五の言ってても始まらねぇ、中に入るぜ。
〔そう・・・ここに来て、ようやく話の大筋が分かってきたサヤと臾魅。
それにしても、サヤ自身、過去に異端審問にかけられたきたようですが・・・
サヤが今こうして無事でいられるというのは、総ての誰しもが『断罪』ではないということ・・・
これで、少しは期待も持てたというもの。
ところ一方変わって――― その建物にある地下牢にて―――〕
バ:そろそろ時間だ―――― 行こうか・・・・
ジ:・・・・・・・・はい。(コク)
バ:(哀れなものだな・・・
かつては“ウイッチ”として恐れられてきた人が・・・それが今はこうも萎縮して見える―――なんて・・・)
〔ここ数日――― 地下の薄暗い牢屋に押し込められている・・・とはいえ、
その罪人は、暴れることなく、大人しくしていた――――と、いうのです。
そして―――― 審議の場へと連れ出され、観衆の目に晒されるジィルガ・・・・〕
―――ザ ワ―――
サ:(アレが・・・・かつての華やかさも、明るさも、見る影もない・・・・)
ナ:(し、しかも――― 囚人服一枚だけ・・・・だ、なんて!)
臾:(それに――― あん人の傍におるんは、バーディはんやないか!??)
カンッ――――!☆ カンッ―――――!☆☆
判:静粛に―――!
―――・・・で、本件は?
バ:はい、『悪魔並びに、その能力者の審問』について・・・です。
判:そうか――― では、その前に・・・先程連絡があってな、この者を弁護したいという者がおるそうだが・・・その者は?
検:は―――まだのようです。
判:そうか・・・なら、しばらく待とう・・・。
臾:なんや? まだ始まらへんのかいな。
サ:どうやら・・・誰が弁護に付くようだな。
ナ:(・・・・まさか?!)
〔いよいよ審議が始まろうとするとき、この罪人を哀れんでか、何者かが弁護に立つ様子・・・
しかし――――九分通り 黒(有罪) が確定しているこの審議に、どこの物好きが弁護に立つのか――――と、思えば・・・・〕
マ:遅れて申し訳ない――――
サ:あっ――― あいつは!
臾:も、元締めやんかぁ?!
ナ:(やっぱり・・・・)
ジ:えっ・・・。(セイバーが・・・ナゼここに?)
バ:(来たか・・・)
臾:それにしても〜〜――― アミさん、元締めにも、ゆいはったんねや?
ナ:えっ?! アタシは・・・あの人には、今回の事は、何も言っちゃあいないぞ??
サ:おい――――静かにしろ・・・始まるぞ。
判:あなたが―――・・・この人の弁護をすると・・・・?
マ:はい・・・・今後の判決の参考になれば・・・・と、思い、馳せ参じました。
判:そうか――― では・・・・被疑者を前に――――
〔この審議の事を、どの経緯で知ったのか――――
その場に現れたのは、狩り手たちを束ねる シホ=マクドガル だったのです。
(これはやはりステラ経由で―――? それともJOKA経由で――――? とも、取れなくもないのですが・・・・
よく思い出していただきたい・・・彼女が一体何者であるか――――を・・・)
そして、審議の開始――――〕
判:あなたの本名は―――?
ジ:・・・・・はい。
ジィルガ=アィゼナッハです。
判:それは―――・・・現世において〜――の、仮の名ですね?
ジ:・・・・・はい。
判:では――――本名は?
ジ:―――――・・・・・。
判:ジィルガ・・・・さん?
ジ:・・・・・・はい・・・・申し訳、ありません・・・・。
判:(ふぅ・・・・ム。)(チラ)
バ:ジィルガ=ナハトミュンゼン=ナグゾスサール・・・・それで、間違いはないですね。
ジ:―――――・・・・はい。
判:つまり―――― あなたは、ご自身が、“悪魔”・・・・で、あると?
ジ:・・・・・はい。
判:それも――― 非常に位の高い・・・・
ジ:はい―――・・・おっしゃる通りです・・・
判:ふぅむ―――・・・つまり、このことを、あなたは全面的に認める――――と、いうのですね?
ジ:はい・・・・そうです。
〔それは実に淡々としたやり取り―――― そこのところをかいつまんでみれば、実に模範的ともいえるものだったのです。〕