婀:おお、守衛殿、遅くまでご苦労、ところで・・・柾木様を見ませんでしたかな?

守:ああ、これは婀陀那様、ええ、柾木様でしたなら、何かお調べ物があるとかで、出られましたが・・・。

婀:何? 調べ物とな?                                                         守:ええ、左様で。

婀:いや、分かった、ありがとう (妙な話だな、今になって調べ物とは) 一応、あの者達にも聞いてみるか。

 

(楽屋にて)

サ:おや? どうした、おひぃのヤツ、便秘?                                     J:まったぁ〜、サヤちんたら、ちょ〜っとお下品!

サ:へヘ、わりィわりぃ。                                                       J:でも、どしたんですか? 婀陀那さん、深刻な顔しちって・・・。

 

婀:・・・・のう、お主らにちと物を尋ねるが。 包み隠さず答えてはもらえぬか?

サ:なんだ?                                                                   J:ほいほい、なんでしょ。

婀:昨日の仕事、つまり『イヴ』の日の仕事にやり残したものとかありはせなんだか? 特に、調べ物とか。

サ:別に・・・これといって重要なものは・・・、って言うか自分に与えられたものは完遂しちまったぜ?

J:それはあたしも同じにゃりん。

 

婀:そうか・・・・、やはりな。 いや実は、今しがた分かった事なのじゃが、姐上が調べ物があるとかで一人抜けられたようなのじゃ。

サ:ええっ?! おいおいそれって・・・・。                                     J:一体どゆことなのです?

婀:うむ、妾が推察するに、今のお主らの反応見ておると、『ギルド』の仕事関係ではなく、これは姐上自身の調べ物、

つまりは『プライベート』なものではありはしないか・・・とこう思うのじゃ。 ま、これはあくまで推察じゃがな。

 

J:成る程・・・、それじゃ                                                     サ:今からおひぃのやつ探しにいくか

婀:まぁまて、その気遣いは嬉しいが無用じゃ、第一妾だけならまだしも、お主らまで抜けたら後の進行、どうするつもりか?

J:あ・・・、そこまでは・・・・                                               サ:考えちゃいなかったな・・・。

婀:そうであろう、幸い姐上の行きそうな場所は限られておるでな、妾だけで十分じゃ。 何、今日中・・・いやこれが終わるまでには帰ってくるよ。

  では、後事滞りなく、頼みましたぞ?

 

(そういって、婀陀那はおひぃさんの行方を掴むべく、やむなく抜けたのです)

 

 

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(さて、おひぃさんの行方を掴むべく捜索を開始した婀陀那、でも今回に限り、当てにしていたところには顔すら見せていないようで・・・?)

婀:おかしいのう・・・、全て姐上の行きそうなところは虱潰しに行ったというに・・・。 どこかもれたところはありはせなんだか?

  まさか、また新しいところを見つけられたとか・・・?

 

  う゛〜〜ん・・・・。          うん? 待てよ、そういえば、姐上確かサヤ殿を・・・。 行ってみるか、その道筋を。

 

(婀陀那、最後の賭けとして、何かあったとすれば、昨日、今日サヤを送り迎えした道筋しかないと踏み、その道筋を徹底的に調べる・・・すると・・・)

ポロロン♪ポロン♪

(どこからともなく、風に乗ってピアノの音が・・・)

婀:この音色・・・・ピアノか! ・・・にしてもこの曲。

 

【杜下驍】

Merry christmas Mr,Laurence //戦場のメリークリスマスヨリ〕

 

婀:確か・・・『戦場のメリークリスマス』にかかっておった・・・。                     うっ! この道・・・、そうか、そうであったのか・・・・。

迂闊であったわ、よもや、この道が あれ につながっておったとは。

 

(そう、その道こそ、おひぃさんにしては初めて、しかし婀陀那にとっては幾度となく足を運んだ事のある店、『シャングリ・ラ』に続く道だったのです)

 

婀:やはり・・・姐上もついにここに・・・。(キラッ!)(ここで、近くの電柱にて何か光るものを見つける) うん? なんじゃ、あれは・・・。

  (パッパッ!)(婀陀那それについていた雪を払う) こっ、これは・・・姐上のストールについていた留め金!

紋は・・“六角に杜若”柾木の・・・姐上の紋ではないか!  ああ・・・なんという、妾がもう少し早くに気付いておれば・・・。

今の今まで、姐上はここに居られたものを・・・・、お労しい。

 

斯くなる上は・・・・!!                             おーい! 開けてはもらえぬか! (ドンドンドン!)

 

驍:・・・・、下に誰か来たようだね、入れてあげな。                            我:は、御前。

 

ガチャ・・・

 

我:あ・・・、これは、婀陀那様、何か御用で?  それにいいんですか? パーティあるんでしょうに。

婀:済まぬが、我矛羅、お主に聞いておきたい事がある。                          我:へぇ、なんでしょう。

婀:ここの主人は在宅か?                                                      我:へ? ここの主人・・・てオレの事っすけど。

婀:何もお主の事を聞いておるのではない、ここの実質的持ち主、杜下驍様は居られるか、とこう聞いておるのじゃ。

我:へ、へぇ、御前なら昨日からこちらに寝泊り・・・

(すると、我矛羅の言葉を皆まで聞かぬうちに、二階のスタジオに進んで行ったのです、そして、彼女がそこで見たのは・・・?)

 

婀:ご免!                        は・・・・っ!! あ、あなたは・・・アィゼナッハ殿!!

アィ:おや、これは珍しいお客人が、おぅい驍、森野殿がお見えですぞ?              いつぞやはお世話になったね、お元気そうで何より。《独》

婀:いえ、こちらこそ・・・。《独》

 

驍:おや、誰かと思いきや、どうたんだい、公主さん、よりによって『クリスマス・パーティー』の当り日に抜けてくるなんて。

婀:驍様、これは一体どういう・・・。                                 驍:おや? 言ってなかったっけ?  ワシは『悪友』に会う・・・って。

婀:そうか・・・・・そうでしたな、これはつまらぬ事を。 どうも、申し訳ございませぬ。

 

アィ:おやおや、ワシは驍の『悪友』かね、ずいぶんと口が過ぎるのじゃないかね?《独》

驍:何か間違ったこと言ってるかい? アイゼン。《独》                      アィ:いいや、別に? 逆に当てはまりすぎて笑いがでてくるところだよ《独》

 

(そして、ここで婀陀那持っていた留め金を驍に見せる)

婀:驍様、これに見覚えは。                                               驍:うん? 見覚えも何も、これは柾木の紋じゃないか。

婀:そう、それを今しがた妾が、この近くの電柱の付近で見つけましたのじゃ。

驍:(近くの電柱―)おい、団蔵に真沙螺、お前達昨日近くの電柱で何を見た?

団:へえ、何・・・って、誰か人がいた・・・って言う痕跡ぐらいのもんでさ。                  驍:ふぅむ、他には?

団:指しあたって、怪しいものは何もございやせんでしたが?                                       驍:・・・・そうか。

 

婀:えっ?! すると昨晩も姐上はあの場所に?

驍:どうだろうかね、これは憶測なんかで言うべきものじゃないよ。 ただ、その可能性は限りなく“大”だけどね。

婀:な、なんと・・・・お労しや。 驍様、なぜにあなた様はかように酷う扱われるか・・・・、姐上のお気持ちは誰よりもお気付きでしょうに・・・。

 

驍:公主、あなた何か勘違いしてやしないかい?                             婀:な、何ですと?!

驍:では逆に聞くが、どうして彼女はここに入らなかった? 心に何も疚しい事がなければ、あなたのように堂々と入ってくるべきじゃあないのかい。

婀:そ、それは・・・。

驍:それにね、あの人の気持ちなら、4年前のあの日より痛いほど分かっているつもりさ。

あんな嫋やかな人に思われてる・・・って言うのはね、むしろ歓ぶべきだと思うよ。 だか、ワシにはその資格はない。

名を変え、居所、生活環境まで変えているワシには過ぎたお人なのさ。

 

婀:驍様・・・。

驍:それに、ワシの一番嫌いな事を知っているかい?                               婀:え・・・っ?!

驍:金や権力で、力ずくで物を言わせる、ワシの親父がやっている事さ。 だから、強制なんかは一切しない、でも、来るべき者は拒まないよ

  去ぬるも自由、来るも自由、縛り付けていたってろくな事にはなりはしないからね。それに・・・第二のハナちゃん作りたくないからね・・・。(ぼそ)

婀:今・・・、何か云われましたか?

驍:いや、別に、何も・・・。(ふぅ・・)  で、どうする、もう少し暖をとっていくかい、それとも、待たせてある連中のところに戻るかい。

婀:重ね重ね、お気遣い、お心遣い、感謝いたします。 どうか、今日のところは、この浅慮者の単なる戯言と・・・お聞き流し下さいますよう。

驍:もういい、何も言うな。 ワシも少し言いすぎた、だが、そんなに自分を貶めるもんじゃないよ、婀陀那っち。

婀:感謝の念・・・・痛み入ります。 それではお暇させて頂きます。 では・・・・。

 

団:よろしいんですかい? 御前・・・。

驍:見ろ・・・・団蔵、あの強い人が、声も上げずに、涙も流さずに、哭いている。 心の奥底で・・・背中で・・・。

  嫌なヤツだな、ワシという奴は。 二人の女性を袖にして平気でいられるのだから。 せめてもの償いだ・・・この曲で送ってあげよう。

 

【杜下驍】

We are all alone〕

 

(静かに『シャングリ・ラ』を出た婀陀那、そして、皆の待つパーティー会場へ一本の電話を入れているようです)

 

婀:(プルルル・・・ブツッ) “はィ、あっ、婀陀那様、今どこにいらっしゃるんですか?”  おお、丁度よかった、司会殿か・・・・・・。

 

 

 

 

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