≪肆;刀を帯びぬ士(さむらい)≫
〔それと―――・・・この秋定なるお侍、他のお侍連中とはどこか雰囲気が違っていたようですが、
では、一体どこが違っていたのでありましょうか。〕
同:おや? 秋定様、今回の出動でも、刀を帯びていらっしゃらないようで―――・・・?
秋:うん? ああ―――・・・
当然さね、このおいらが刀を帯びる時・・・それは、もう一つの“お役目”のときだけさ。
同:は・・・はあ―――もう一つの・・・
秋:うんっ―――
このおいらの剣技は、人様に使うには破壊力がありすぎる・・・
だから、専らもう一つ、この世に蔓延(はびこ)りつつある勢力に抗うときにのみ限り、
使うことを許されてんのさ―――・・・
同:し、しかし―――その鉄の指揮鞭だけでは・・・
秋:なぁんなら―――あんた、今からこのおいらと闘(や)りあってみるかい。
同:いっ・・・いえ―――それだけは・・・
秋:だぁったら、余計な事を喋くんじゃあねぇ。
とっとと―――仕事に取り掛かりな。
〔そう―――それは・・・お侍なのに、“帯刀”をしていなかった―――と、いうこと。
でもそれは、今、彼が言っていたように、わけありだったようなのです。
―――と、いうのも、彼、秋定が会得した剣法というのが、
その・・・余りもの圧倒的な破壊力―――そして、それを操るために使われる膂力・・・
そのどれを取っても、誰しもが習得不能といわれていたある剣技・・・
=穀蔵院一刀流=
かの・・・“天下の大傾奇者”・“大武辺者”として畏れられた、『前田慶次郎利益』が創始したという剣技―――だったのでございます。
それ故に、お上からも“対人にして、扱うること能はず、されど人外の者にては、その範疇を越えず”
とまでお達しされた、曰くつきのものだったのであります。〕