≪伍;下町光景≫
〔明けて―――翌朝・・・
下町と呼ばれる処の、ある長屋に、この界隈の子供たちを集めて、読み書きなどを教えている『寺子屋』
を経営している女性が―――・・・名を、=しの=と申しているようです。〕
し:(しの;気立てもよく、面倒見がいい、心優しい女性―――
斯くも、その濃い紫色の髪の毛と、真紅の眸が印象的・・・)
(ふわぁぁ〜〜・・・)うふ♡いい朝ですこと―――
おはようございます―――いい天気ですね。
町:(町人;この下町のおカミさん連中・・・)
ああ―――お早う、女先生。
ところで―――・・・また昨晩でたようですよ?? 噂の『紫電』って言う=義賊=。
し:えっ?!あら、まあ・・・そうなんですか―――(にっこり)
町:ええ〜〜―――今朝方起きてみれば・・・枕元に小判が一枚―――落ちてたんだよぉ〜。
し:それは、うらやましい限りですね。
あたしのところにも出てくれないものかしら―――・・・
町:えっ―――女先生のところには出なかったのかい??
町:そうなんだってさぁ―――おキヌさん・・・
町:でもさあ〜――おかしな事もあったもんだよねぇ?
町:どうしてなんだい―――?
町:だって―――ほら・・・ここにいる皆は、何かしらあの『紫電』サマの恩恵に授かっている―――
っていうのにさあ―――・・・?
あたしらと、おんなじところに住んでいる、女先生のところだけ、出ない〜〜―――なんてねぇ・・・
し:(うぐっ――――しぃまったぁ〜〜・・・)(たじ・・・)
〔これは―――ご存知である、井戸の端に集って交わされた、下町のおカミさん連中の四方山話―――
すると、どうやら各ご家庭に、昨晩の金銭がばら撒かれたようであります。
――――が??
どうやら、しのさんのお家には、この恩恵はなかったご様子・・・・
しかも、その後の彼女のこのうろたえようは―――・・・??〕
し:(こ・・・これはイタイところをつかれたわね――― それにしても、語り手もうるさすぎよっ!!)
―――とは言っても・・・今更“一朱”や“一分”落とすといってもねぇ・・・しかも、そゆことすると、良心といふモノが・・・(ズキズキ)
〔おやっ―――?? 今のしのさんの言、明らかにおかしすぎる箇所がありますよねぇ・・・
一体これはどういうことなんでありましょうか??〕