≪拾;妖シ改メ方の最低条件≫
左:あの時のあの日の晩・・・当時拾弐であったワシは、外に出ることを許されず、
この屋敷のこのワシの部屋にて幽閉されておった・・・
秋:しかも―――その時分にゃ 妖シ のお役目にも就いていたのにもかかわらず〜〜だ。
左:確かに―――ワシは幼い頃より、他人には見えぬ者達が、見えていたり話したりすることが出来た童子であった・・・
じゃが―――それであるにもかかわらず、父上や秋定は、ワシを普通の娘子と同じように取り扱うてくれた・・・
し:(え・・・?)そ、それじゃあ―――秋定様は左近様の事を・・・
秋:―――ま、こいつがその身に、あの瑰艶を封(おさ)えていやがるのを知ったのは、
あの九年前の事―――だったがな。
それに―――・・・周囲りの連中がやいのやいのというほど、こいつは可笑しかねぇさ。
事実・・・おいらだって見えてたもんなァ・・・“大人”にゃあ見えねえ連中が―――
左:(フッ・・・)まあ―――それが偏えには、“妖シ改メ”を勤められる最低条件ではあるのだがなぁ・・・
秋:それによっ―――!(パシン☆)
“霊”という連中も、強ち悪い奴らばかりじゃあねぇのよ―――
しの・・・お前も知ってるだろう『座敷童子』の事を―――・・・
し:えっ―――?ああ・・・はい。
確か〜〜―――三・四才くらいの男の子か女の子で、その子達がいる家は大層榮えるけれど・・・
愛想を尽かされて出て行っちゃったり―――気まぐれに不意にいなくなったりした家は・・・
秋:余すことなく没落しちまう―――人形町にあった『上野屋』(こうずけや)のようになぁ・・・。
し:ぇえっ―――?! あの大店(おおだな)が?!!
急に店を畳んだのには、そんな理由があったんですか―――・・・(次・・・決めてたのにぃ〜)
秋:ああ―――その通り・・・そうだよなぁ、『坊』。
し:(・・・ほえ?)『坊』? な―――なんのことを・・・
秋:・・・確かお前ェ―――上野屋にいた 童子 ・・・だよなぁ。
し:(え゛? ―――え゛え゛??)
い―――・・・・いるん・・・です・・・か??
どこ・・・・・どこに??
秋:・・・・お前ェの隣り―――(ニヤソ)
ひぃぇえ〜〜――――!!
しがみつきっ!
し:(ひいぃ・・・)あ―――あたし・・・昔っからそぉゆうの苦手なんですぅ〜〜―――!!
秋:・・・だとさ――― 『瑰艶』 。(ニヤニヤ)
左:お前も―――人が悪いのぅ・・・秋定。
秋:(へへっ―――)でもよぉ・・・しの、お前ェがしがみついてんの・・・って、一体誰なんだ?
し:(へっ??)――――あ・・・瑰・・・じゃなかった、左近様―――
左:まあ・・・そういうことではあるが―――な。(照)
〔しかし―――そのまえに・・・左近・秋定両名からは、“妖シ”を取り締まる上での最低条件―――
“霊魂の見える者”―――つまるところ、常人の眼では見えない者達が見えること・・・が、最低条件である―――と、語られたのです。
そうはいいましても、子供の時分には皆が見えるモノでも、兎角大人になると見え辛くなるから、
そのお勤めには不適任であるのではありますが―――・・・
今ある“妖シ改メ方”の連中のように、大人になっても〜〜と、いうのは、未だ“それ”が強く残っているから―――
と、いうことのようでございます。〕