≪陸;添い寝―――・・・≫
〔そうしましたると、すっかりと話し込んだことにより、陽もとっぷりと暮れまして、
また―――左近のことを不憫に感じましたしのは、鷹山本家に泊まることを決意したようでございます。
それは―――・・・
月のない―――・・・
朔 の 夜
―――の、ことで、ございましたそうな・・・〕
し:あの・・・左近様、しのも―――左近様のお部屋にて、寝ても構いませんか・・・?
左:(しの・・・)――――仕方がないの・・・しのも何も知らずというわけには行かなくなったのじゃからな。
じゃが―――添い寝だけはまかりならぬが・・・それでも構わぬな。
し:――――はい・・・。
〔実を申しますと―――このとき、しのも知らなかった・・・イヤ、知らされていなかった事実が一つ・・・
それは、“この日”になると、その屋敷にいる使用人・奉公人、警護などに詰めるお侍の類は、
一時(いっとき)の暇(いとま)を出され、この屋敷にいつかないようにしている・・・と、いうこと―――
では、“この日”と言いますのは・・・?
左様―――朔の夜―――のこと・・・
それではどうして、使用人の類が、この日ばかりはたった一日だけの暇を出される・・・?
だとしたなら―――ナゼにしのだけはこの屋敷内に・・・??
それも、左近の近くにいようと・・・またはいさせようとしていたのでありましょうか――――
それは・・・しのにも、左近にも、とある深いかかわりがある=因縁=がありましたから・・・
では、その=因縁=とはなんぞや――――???
それこそは―――忌々しき とある者の名 を通して語られ・・・また、識り行くので御座います―――〕