【其の禄;靡妖―――狐の怪】
≪壱;仏の顔も・・・≫
〔さても―――三者三様、蟠(わだかま)りも解けましたるところで、
いつも通りの下町長屋の、しのの間借り―――にてで、ございまする。〕
し:さぁ―――て・・・と、ちょいと―――朝餉できましたよ。
蝉:――――・・・・。
し:ちょいとっ――― 聞こえてんでしょうに・・・
もしかしてまァだむくれてるの?
蝉:(ムッス〜)――――ッたりめぇだろがよぅ。
こち虎、大いなる誤解だぁ〜〜ッつってんのに―――・・・おぉ〜イテ・・・(すりすり)
し:(うぎ・・・)それはわるぅございましたね―――
蝉:あぁ〜〜―――あ、そんなんぢゃ、こっちの気が晴れねぇや〜〜
し:・・・そ〜〜―――ですかっ! 判りました・・・。
では、こちらもそれなりの考えが御座います。
蝉:(ほぇ?)――――しの??
し:(うっふ〜ん♡)ご免―――勘弁して下さりませねぇ〜ン♡(しんなり)
このあたくし・・・これから蝉ちゃんにつくしますからぁ〜ん♡♡(いぢいぢ)
蝉:(呆ぅ〜っ)――――・・・。
し:(ふふ〜ん、左近様の云われの通りだわ―――斯くも、殿方を参らせるのには、色仕掛け・・・)
でぇっ――――??!
〜ひょいっ〜
〔朝餉の支度が整いましたので、同じ間借りに居候をしている 日暮蝉之介 に、それを云って聞かせたところ、
どうも昨晩なされた不当な仕打ちに、不貞腐れているようなので御座います。
―――と、まあ、そんなこんなで、一応の謝罪の言葉を尽くすしのなのではございまするが、
『そんな気の入っていないモノで、謝っているとでもいえるのか』―――と、いわんばかりの蝉之介の態度に言葉に・・・
さすがのしのも―――と、おもいきや、なんとも艶のある仕草に声で、許しを乞うたりなぞしたので御座います。
さりとて―――実はこの仕様、昨晩の帰り際に、宜しく左近定華より吹き込まれたところのようで御座いまして―――
其の事をどう捉えてしまったのか、蝉之介、ひょいとしのを軽々と抱えあげまして―――・・・〕
蝉:なんだよ―――しの・・・それならそうといってくれりゃあ、話しは早えぇのによ・・・
し:えっ―――やッ・・・なにすんの゛ぉ?!!
蝉:(へっ・・・)ヤボは云っちゃあいけねぇよ―――しのがそういう気だったとも知らねぇで・・・
し:え゛っ―――あ゛・・・はぁ〜〜?
蝉:ま―――そういうこったなら、早速奥の部屋で種ェ仕込ませ・・・・
〔あの日あの時より、わだかまりも解けました―――と、言うことで、
お互い素直になろうでわないか―――と、思いましたこの男は、先程のしのの弁を そういうこと で捉えまして、
未だ片付け終えられていない、奥の部屋の寝床に持ち込まんとしようとしたところ―――・・・〕
ど☆ げしぃ〜
蝉:り゛ゅっ―――?!
ぼ す
蝉:もふぅ〜〜・・・(またかよ―――ヲイ・・・)
し:ち―――ちょいとっ!! あ・・・あんたねぇ〜〜・・・
まだ陽も明るいうちから、ナニ不逞を働こうとしてんですかッ!!
蝉:ふ〜・・・不逞・・・って、そゆことでお誘いしたんでないのぉ〜〜?
し:(赤面)あ―――あたしは、そんなふしだらな女じゃありませんッ!!
(・・・に。しても―――ちょいとは雰囲気というものを考えなさいよ・・・)
〔なんとも、華麗なる連撃技―――延髄斬りをかましてから、着地をしての金的攻撃・・・と、
眼にも留まらぬ早業で、蝉之介またもや悶絶の談になるなぞ、
この二人の距離は、ちぃとも縮まっていないようで御座います―――。〕