≪弐;見知らぬ女児≫
〔それはさておきまして―――しのの開いております、寺子屋におきましては・・・〕
し:はぁ〜〜―――い、入りましたね。
それではこの前のおさらいから・・・・
子:・・・あのぉ〜〜―――先生!!
し:どうしたの、ゴン太―――
子:知らない・・・女の子が―――
し:えっ―――?!
〔さても―――前日よりからのおさらいを初めんとしようとしたところ、
手習いの子供の一人からは、見知らぬ女の子供がここにきているとのこと―――
そこでしのが見ましたらば―――・・・
朱の着物を羽織り、しかし髪の毛色を見ましたらば、色素がすっぽりと抜け落ち、
強ち白―――にも見えるし、陽光の加減によっては金色(こんじき)のようにも見えたる・・・
しかも―――双眸のそれも、どこか僅かながらに緋色を宿したか・・・の、ような、そんなお子が、
部屋の隅のほうにちょこんと座り、実に愛らしくも円らなる眸を綺羅綺羅と輝かせて、
これまた、まっつぐにしののほうを見つめていたというので御座います。〕
し:・・・・ねぇ、どこから来たの?
児:・・・ぇ? わ―――妾のことぞよ?
し:(“妾”・・・? どこかの高家の娘さんかしら―――)
そうよ? あなた・・・どこから来たの?お名前は??
児:わ―――妾は・・・(ふるふるカタカタ)
〜脱ッ〜
し:あ・・・・(出てっちゃった―――なんなんだろう、あの児。)
〔それにしましても―――其の女児の容貌は、この界隈に住まう者達の、誰にも似てはおらず、
なれば―――新しくこの界隈に住まう事となった家族の子供か・・・とも思えなくもないのですが、
しのが改めてこの女児の家族のところに挨拶にあがるため、名前から今居住んでいるところを訊こうとしたところ・・・
一体ナニに怯えてしまったのか、其の女児は、急に泣き出しそうな面(おもて)になり、
其の部屋から飛び出していってしまったので御座います。〕