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(その一方で、アダナは・・・・と、言うと。)

 

 

ア:(フゥ〜〜)あらかた、この地は、一通り見ることが出来た・・・・と。

  で・・・どんなモンなんだろう、実際・・・。

 

ソ:『・・・・・・・。』

 

ア:おい?!ちょっと?? ソロン!!?

ソ:『うん?ああ・・・いや、すまん・・・。』

 

ア:・・・・どうかしたのかい?

ソ:『いや、なに・・・それよりも、お前、先程のあやつ・・・何も感じなかったか・・・?』

 

ア:ええ?あの・・・釣り人が・・・かい?         いや・・・別に・・・。

ソ:『そうか・・・・』

 

ア:・・・・何か、あったのかい。

ソ:『いや、単なる気のせいだろう・・・。』

 

ア:(変なヤツ・・・・)

 

 

(こうして、アダナも、この庸亭の地を一通り見終わり、この地勢を、あらかた識る事が出来たようです。

そして・・・呉興にある、呂孟の家にて・・・)

 

 

孟:どうだったかね、アルディナさん。

ア:え?ああ、私の事は、アダナでいいよ。

 

孟:おお、これはどうも・・・それで、あの地に、見たいものはありましたかね。

ア:ああ・・・お陰さまでね・・・。 じっくりと見させてもらったよ・・・。(あそこの地勢を・・・ね)

 

孟:・・・・・・・・。

ア:ありゃあ、護りには、適しているが・・・・攻める方には、向いちゃあいない・・・

 

孟:・・・・・・。

ア:あそこが・・・今まで持っていた・・・っていうのも、それは即時決戦だったためであり、持久戦ともになると、物資の補給、確保が難しい・・・

  だから、わざとあの狭い端を下ろして、限られた空間でしか、敵を戦わせなかった・・・違うかい?

 

孟:アダナさん・・・あんたぁ・・・・

ア:おおっと、酒が進むと、ついつい口が軽くなっちまう。 何、今のは、単なる酔いどれの戯れ言さね、聞き流してくんな・・・。

 

 

(たとえ・・・・酔っているとはいえ、その的確なまでの指摘に、内心うならざるを得ない 元・大将軍 ・・・・)

 

 

孟:(ううむ・・・こうまで、見抜くとは・・・この御仁、いったい何者・・・?)

 

 

(そして、呂孟が悩んでいる最中(さなか)、娘の麗姫から、来客の報がなされたのです。)

 

 

麗:あの・・・お父様・・・。

孟:おお、麗姫か・・・どうしたね?

 

麗:はい・・・あの、お客様でございます・・・。

孟:そうか、分かった・・・。 ここに、通しなさい。

 

麗:はい。

 

 

ア:おおっと、お客かい? それじゃあ、この酔っ払いは不必要・・・ってなモンだね? どれ・・・・ずらかるとしよう・・・。

孟:アダナ殿・・・

 

ア:いいって、そう気にすることはないよ。 また、あんたんとこの書庫に行って、のんびりしてる事にするよ・・・。

孟:・・・・・かたじけない。

 

 

(酔いどれのアダナは、退室して書庫へ・・・(でも、彼女には、別の思惑もあったようで―――)

それにしても、この時分に、訪ねてきた客とは、一体誰なのでしょうか・・・・

 

それは・・・件(くだん)のあの二人・・・そう、凌統に、丁奉だったのです。

一体、この夜更けに、二人して、何のようなのか・・・いずれにしても、二人共、衣冠・束帯・・・と、いう、官吏のそれを着込み、

てには、煌(きら)びやかなまでの、筐(はこ)を携えていたのです。)

 

 

孟:卿らか・・・・それにしても、その出で立ちとは・・・・。

  しばし待たれるがよい・・・。

 

 

(その、恭しいまでの、彼等の出で立ちに、何らかのいを悟り、一度奥に下がる呂孟・・・。

そして、再び出てきた時には、彼等ほどではないにしろ、接客用の、衣服に着替えてきたのです。

それから、この二人の使者は・・・ここの主人の足元に跪(ひざまず)き、自分達の主の意を伝えたのです。)

 

 

奉:この度は―――、一介の客ではなく、陛下の命により、参じた由・・・に、ございます。

統:この筐には―――、我らのみならず・・・陛下のお心が、したためております。

 

統・奉:どうか、一つ、お目通しを―――。

 

孟:うむ・・・・。(ガサ・・・・)

 

 

(呉興を統治する者の下知、それは、何者も、逆らえないものではあるにしろ、

その書状には、下心のない、まさに、赤心あるがままのものが―――書き記されていたのです。

 

では、そこには何と、書かれていたのでしょうか――――。)

 

 

―――貴下ヲ、再ビ、大将軍 元帥ニ、任ズ―――

呉興・王  孫鳳仲謀

 

 

 

 

 

 

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