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(そして・・・場面は変わって、庸亭城・・・)
兵:大将軍様、お着きの模様です!!
奉:おお!そうか!!
統:すぐに、お通ししろ!!
兵:ははっ―――!!
孟:おお―――、皆の者、出迎えご苦労!
奉:将軍―――!
孟:む・・・、それで、敵方はどうなっておる。
統:はい、ここより、約数十里先に、陣取っておりますが・・・。
奉:それより、後にも、先にも、動くような気配は見せてはおりませぬ。
孟:ふぅむ・・・そうか・・・。
(もう、すでに、ヤツらも、ワシらが感付いている事など・・・・百も承知なのだろうになぁ・・・)
奉:あの、いかがされましたか?
孟:うん?ああ・・・いや、なんでもない。
(ふぅむ・・・)よし・・・誰か、斥候を向かわせろ、そして、敵の陣中がどのようになっているか、調べるのだ。
(まず・・・軍(いくさ)において、“敵を識らずんば”とは、基本中の基本・・・なのですが、その、最も基本の事を怠っては、
勝てる戦も勝てなくなる・・・と、いうもの。
そして、この大将軍も、それに倣(なら)うが如く、敵陣営内に、斥候を放つ準備をしていた矢先に・・・・)
見:ん・・・?あ―――っ!お、お前は誰だ!?
誰:なぁ―――に、別に怪しいモンじゃあないさ・・・。 それよりさ、ちょいとここにいる・・・呂孟・・・ってヤツに、用があるんだけどねぇ?
見:んな―――キ、キサマ・・・女の形(なり)をして、大将軍様に近付くつもりか!! ならん!それはならんぞ!!?
ア:おおや―――随分と、物騒なコトを言うもんだねぇ。
なぁ・・・あいつは、ここに来ているんだろう? 呂孟子明 ・・・ってヤツがさぁ・・・。
見:う・・ヌヌヌ・・・おのれ、閣下を呼び捨てにするとは、怪しからんヤツだ!! 今すぐここから引き返せ!!(ガッ・・・!!)
ア:(おや・・・) はいはい、それでは、今すぐに、ひっくり返しましよう。(ひょい・・・・ バッ!)
見:(え??) う、うわっ!(どさっ!)
―――っく、お、おのれ・・・・で、出会えー!出会え―! 狼藉者だ――!!
(なんと・・・そこに突如として現れたのは、いずこかへ去った・・・と、思われた者、―――アダナ―――だったのです。
その彼女が、その身に、呉興の着物を身に纏い、この城に来た・・・・とは・・・。
でも、見張り役の兵士に見つかり、直ちに引き返すよう促されたのですが、そんなことには耳にも貸さず、その兵士を放り投げだして、
城内に入るアダナ・・・・。
そして、この彼女を見た、かの二将の反応は・・・・)
奉:なんだ・・・・狼藉とは・・・只事ではない・・・な、な―――っ?!
統:そ、そなたは、あの時の・・・
ア:やあ、お二人さん。 こいつら、どうにかしておくれよ。
こうも付きまとわれたんじゃあ、動きにくくて仕様がない・・・。(ズリズリ・・・・)
統:(だ、大の男・・・四人を引きずるとは・・・)
そ、それより、足下のような女性(にょしょう)が、どうしてこのようなところに・・・・
ア:うん?ワケを知りたい・・・ってかい?そいつは簡単さね・・・。
私は、ここに用があって、来たんだから・・・・さ。
孟:どうした、皆の者・・・・(おっ?!)あ、あんた・・・・
ア:いよっ!来たぜ、ここに。
孟:フ・・・っ、成る程な、そう言う事であったか・・・
奉:あの・・・閣下?
孟:ん?ああ、いや・・・・申し遅れたが、この御仁は、ワシのところに住んでおる、食客殿だ。
呉々も、粗相のないようにな・・・。
見:えっ?!あ・・・っ!そ、そうでありましたか! そうとは知らず・・・とんだご無礼を・・・
ア:いいや、別にかまわないよ。 任務に忠実なのは、いい事さ。 名は―――?
見:え―――?わ、私・・・ですか?私は・・・ ――陸操伯言―― と、申す者ですが・・・
ア:ふぅん・・・いい名だ。
なあ、あんた達、この人に非はない、むしろ、無断でここに入ってきてしまった、私の方が悪いのさ・・・
だから、決して責めたりしちゃあ、いけないよ。
統:(ほう―――)
奉:(これは―――)
操:(な、なんと・・・心の広い御仁なのだ・・・)
(この―――今は一介の見張り役の兵士、陸操伯言―――
この者が、アダナを引き止めたことを、彼女自身は不問に付した・・・見咎めなかったようです。
それにしても、なぜアダナがここに?それは・・・)
孟:ところで・・・アダナさん、あんた、どうしてこんな処に・・・?
ア:ん?ああ、いやナニ――ちょいと、ここの書庫に、用があってね・・・それで、出向いたのさ。
孟:(ほう・・・)それにしても、よくここに書庫があるのを、知っておりましたなぁ。
ここに、逗留しているワシらでさえ、その存在を忘れかけていたものを・・・
ア:そこは、それ。 ほれ・・・あんたんとこに着てた、気さくなオヤジがいただろ?あいつに、ちょいとばかし、尋ねてみたのさ。
孟:ほほう、そうであったか。 粛兄も中々に・・・(フフフ・・・)なれば、ワシがそこに案内してやろう。
ア:そいつは、ありがたいねぇ〜。
(そう・・・アダナが、突然に、ここに現れたというのは、ここに駐屯していた、呂孟ですら久しく忘れかけていたという、
ここの書庫に、用があってきた・・・と、いうのです。
しかも、その存在も、以前呂孟の家にふらりと訪ねてきた、風流人――魯粛子敬――そう・・・呉興都督から、聞き出した・・・と、いうのです。
そして、今は誰も入らず、使われる事のない、この城の書庫へと、足を運ぶアダナと、呂孟・・・)
孟:ほれ、ここだ・・・。
ア:うっひゃア〜〜、さあっすがに、使われていないだけあって、ホコリだらけだねぇ。
孟:いや、なんとも、お恥ずかしい・・・。 あんたのような、他人に言われて、ここの存在を思い出すようであってはな・・・。
ここも、一度、総てのものを、蒸し干しにせにゃあならんなぁ・・・・。
ア:あぁ〜〜〜蒸し干しねぇ〜〜〜。 あれほど、めんどくせぇ事、ありゃあしなかったねぇ〜〜。
孟:ハハ、確かに。 だが、一度・・・に、でなくて、少しづつすれば、そんなに面倒ではないものよ。
ア:・・・・だね。 ああ、ありがとう、ここから先は、じっくりと腰を据えて、探すことにするよ。
孟:そうかね・・・それじゃあ、鍵はそのままでいいから、探し物が見つかったなら、一言かけて帰りなされよ・・・。
ア:ヘへ―――どうも・・・・さて・・・・と。
(さすがに、今まで使われていなかっただけあって、違う意味での修羅場・・・のようです。
それにしても、こんなホコリまみれの処に、アダナが探しているモノは、あるのでしょうか――――?)