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(それはさておき・・・・

ここでの、目的も無事果たし、呉興の都、興需(こうじゅ)に、帰ろうとしたところ・・・)

 

 

――ざわざわ・・・――

 

 

ア:うん?なんだか、騒がしいようだねぇ。 ああ、ちょいと、ナニがあったんだい?

操:ああ、あなたは―――

 

ア:ああ、私の事は、アダナでいいよ、で、ナニがあったんだい?

操:え・・・っ、いえ・・・実は、この城砦に忍び込んでいた、敵方の乱波を捕まえたところ、

  今夜半に、敵の大軍が攻め寄せてくる・・・との、情報を掴んだのです。

 

ア:ふぅん・・・それで、この、大騒ぎ・・・ってかい。

 

操:でも・・・・。

ア:(う・・・ん?)

 

操:でも・・・この、乱波の言っている事が、もし我等の裏をかく事・・・に、なりはしないか・・・と・・・

ア:まっ、心配すんな・・・って、あんた達の大将が、んなヘマをやらかすはずが・・・・

 

操:でも、近年、敵方の丞相に就いたのが、――司馬亮――と、言う者でして、

  此度の、将軍閣下の失脚の裏には、彼が画策したもの・・・と、言う噂が立つくらい・・・

  だから・・・非常に、不安なのです・・・。

 

ア:(・・・この、兵卒・・・もう、こんなところまでの読みを? それとも、この国、全ての兵卒が・・・?

  いや・・・それはありえない、もし、全ての兵卒が、そうなのだとしたなら、国が二つに分かれてまでの争いは、すでに終わっているだろうに・・・)

 

操:あの、アダナさん・・・?

 

ア:(・・・・と、いうことは・・・だ、この者が、飛びぬけてできる―――と、しか、いいようが・・・

  だとしたなら、この国は、大きな損をしている・・・と、いう事になるな。

 

  フフ―――っ、ここは、お節介やきがてら、あいつに教えてやるか。)

 

  ああ、なんだい。

 

操:どうかしたのですか?なにやら、思案顔をされて・・・

 

ア:いや、なんでもないよ・・・ところで、あいつは、今、どこにいるか、分かるかい・・・。

操:え―――、ああ、将軍閣下なら、今、軍儀の最中だと思いますが―――

 

ア:ふふぅ―――ん、軍儀・・・ねぇ、悪いが、ちょいと案内してくんない?

操:ええ―――っ、だ、ダメですよ。

 

ア:ヘへへ、そんな、かったぁ――い事、言わないのっ!(ぺちん―――っ!☆)

操:あぁ・・・は、はい。(いてて・・・)

 

 

(どうやら陸操、アダナの、強い押しの一手に、根負けしたようで、普通なら、入られ(せ)ない軍儀の場に、アダナを連れてきたようです。

 

そして、この城の一室においては、まさに、この先の状況を、いかにすべきか・・・の、討論がなされている最中だったのです。)

 

 

翼:(黄翼漢升:62歳:年寄り扱いされるのが大嫌い)

  フンッ!魏蜀の連中め・・・アレだけ痛い目に、遭わされておきながら、まだ懲りぬと見える。

 

孟:まあ、待たれい、そうは言っても、ここは、やつらとの国境も近くだし、

  ここを取るのと、取られるのとでは、ワケが違ってくる。

 

  今、我等が護りに徹していられるうちはよいが、これが、逆の立場なら、どうする・・・?

 

奉:うぅ・・・む。

統:・・・・・。

翼:む・・・・むうぅ・・・。

 

孟:それに、敵の間者のこれが、ワシ等をおびき出すための策・・・だったなら?

 

奉:閣下・・・!

統:もう、すでに、そこまでお読みに・・・?

翼:・・・・・。

 

 

(すると、その時・・・・)

 

 

ア:だったのなら、敵さんの策に、乗ってみちまえばいいじゃあないか。

 

翼:う・・・ん?だ、誰じゃ! 今は、軍儀の最中なのじゃぞ?!

 

操:あ・・・っ、申し訳ありません・・・・実は、私が・・・・あぅ。

ア:私だよ。

 

孟:あんたは・・・・アダナ・・・・。

  ・・・・アルディナ殿、そなた・・・“学者”・・・では、なかったか・・・?

 

ア:ああ〜、いかにも、 学者 さ。

  でも、色々モノを調べるにしろ、その身は、常に危険にさらされているんでねぇ・・・

あんた方が思っているところの、キレ――なヤツ等とは、ちょいとワケが違うのさ・・・。

 

孟:(ふ・・・・)そうか・・・・そういうことであったか・・・翼よ、かまわん、お通しして差し上げろ。

 

翼:だ・・・っ、だが・・・将軍?

 

孟:ところで―――アダナさん、あんた先程、わざと敵の策略に乗ってはどうか・・・と、言っていたようだが?

ア:言ってた・・・じゃあなくて、言ったんだよ。

  それに、こっから、だいぶ離れたところに、陣張ってる敵さんが、わざわざこの新月の夜に、事を起こそう・・・ってんだ、

  まさに、夜襲にぴったりじゃあねえか?

 

奉:アダナ・・・・殿?

統:そなた・・・一体・・・

翼:(なんなのだ・・・この、女子(おなご)は・・・)

 

ア:それに・・・こっちは、それを分かって、出向いてやろう・・・ってんだ。

  それなのに、あんた等は、そんな敵に、尻込みするたぁ・・・自分とこの兵隊が、弱い・・って事を、自認する事になるんだぜ?!!

 

翼:このぉ――――っ!言わせておけば!!

孟:待て!翼!!

 

翼:しっ―――しかし・・・!!  (・・・チッ!)ええい!

 

孟:・・・・のう、アダナさん、あんた、向こうの、軍の最高責任者の事を、知っておいでか?

ア:・・・・いいや?

 

孟:・・・だろうてな。 ヤツこそは・・・不世出の傑物・・・と、まで言われた者で、姓は司馬、名を亮、そして字(あざな)を、孔明という・・・

  そして、先年、あと一歩のところで、大勝を収めておったところを、彼の者の策略によって、軍を興需まで、戻さなくてはならなくなってしまい、

  ワシが気付いた時には、時すでに遅し・・・まんまと、敵の偽情報に踊らされた廉(かど)で、ワシは、大将軍の任を解かれてしまったのだ・・・。

 

奉:し、しかし、将軍!あなたは、あの情報を

―――呉興内部に、謀反人がおり、陛下のお命を狙っている―――

との事を、一番に疑っていたではなかったですか!!

 

統:そうですとも―――! あの時は、我等が、事の正誤を質(ただ)さずに・・・ただ陛下のおん為を思って―――

 

孟:いや―――それでよいのだ、もし、あの情報が真だったのなら、ワシは、それをほう助しかねなかった、壱の謀反人・・・と、いうことになる。

 

ア:ふぅん―――なぁるほどねぇ〜〜〜。 つまり、あんた達は、そろいも揃って、そいつの 智 に踊らされた・・・ってわけだ。

 

奉:ア、アルディナ殿!!?

統:何もそこまで言わずとも・・・

翼:なんと、無礼な・・・

 

ア:でも、まあ、それはそれでいいじゃあないか。

  “武”で勝る“智”でやり込められたのなら、今度は、“智”で勝る“武”で対抗すれば・・・。

 

奉:な・・・なんと?

統:そうは簡単に言うが・・・

翼:・・・・・・。

 

ア:おぉや?!なんだい、ここには、一騎当千の兵(つわもの)はいない―――ってかい? なッさけないねぇ―――

 

翼:ヌっ!何を言うか! この、黄漢升、老いたりとは云えど、まだまだ若輩者には、遅れは取らぬわ!!

ア:フン―――ッ!ジジイはすっこんでな! これから、大事な一戦の時に、戦場で発作でも起こされたんじゃあ、敵わないからね!!

 

翼:くぅおの――――っ!# 人を年寄り扱いしおって―――っ!#  抜けいッ!一刀の下に、バッサリと叩き斬ってくれる!!

 

孟:これ!もうよさんか!翼!!

ア:いいんだよ、やらせときな・・・。

 

孟:ア、アルディナ殿・・・。

ア:・・・・・。

 

 

 

 

 

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