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ア:さぁ――――来な、女・・・だからって、遠慮なんかしなくても、いいんだぜ・・・・
翼:ぅぅ―――おのれい!どこまでも嬲るかぁ!!
ア:ちょいと、これ借りるぜ・・・(シュ・・・)
奉:あ・・・っ?!
翼:ちぃえィやアァァっ!!
ガキ―――ン!――☆
統:な、なんと・・?
奉:ご老体と、五分?いや――僅かながら、押している・・・だと?
翼:(ナ・・・ナニ?ワシの斬撃を受けても・・・だと?)
ア:おいおい・・・あんた、ちゃんと本気を出してんのかい?こっちは、思いっきり手抜きをして、片手でやってやる・・・ってのにさ。
翼:グ・・・くっ!ならば・・・これでどうだッ!!
(敵の策略に、わざとはまってはどうか―――と、主張するアダナに、皆はどことなく思案顔。
確かに、兵力の差は、あまりないにしても、それを束ねる、将の質があったのです。
それでも、ここを魏蜀が陥とせなかったのは、将に勝る、地の利があったからに、他ならなかったのです。
しかし―――他の者に、アダナに・・・ましてや、女性に、今の軍の急所を指摘され、沈んでしまうも、
どうやら、老いた一匹の狼は違ったようで―――しかも、自分を年寄り扱いしたこの女に腹を立て、猛烈に斬りかかって行ったのです。
・・・が、しかし・・・
それを受けるアダナは、身じろぎ一つせず、ましてや、片手で、彼の放った斬撃を、受け止めたのです。
それに驚く、周囲の者と、老将・・・そして、またまたアダナの無礼な一言に、憤慨をし、百合ちかく打ち合うも、勝負は未だ決せず・・・・
いえ、決していない・・・とは、その言葉通りではなく、当事者の女性のほうは、汗の一つもかかず・・・しかも息一つ乱していない・・・
のに対し、もう一人の老将は、鎧の下の着物までも、しとどに濡れ、肩で息をしており・・・
とは、もうすでに、大方の勝負は見えていたのです。)
翼:(ガク・・・)ふぅ――――ふぅ――――・・・・。
ア:(フ・・・) これで、どうやらはっきりしたようだねぇ!
ここには、こんなお姉さん如きに、跪(ひざまず)く連中しかいない・・・って事がさあ!!
奉:く・・・・っ!!
統:むぅ・・・っ!!
孟:・・・・・のう、アダナさん、あんた、本当は何をしにここへ?
ア:・・・・調べものだよ、ただのな・・・。
だがねぇ・・・私も、あんたには、恩のある身だ、ここでみすみす・・・・ってワケには、行かなくなっちまったのさ。
孟:(ふぅ・・・・む)そうか・・・・しかしなぁ・・・・
ア:ヘっ、いいじゃんかよ、ンな細かい事は、どうでも・・・。
ところで、どうだい?無礼ついでに、この私の話に、耳を傾ける気には、ならないかい?
(そう・・・今までの無礼は、百をも承知・・・でも、その無礼に、果たして憤慨できるものがいるのか・・・。
今回のアダナの行動には、こんな裏があったのです。(まぁ・・・・その結果は、言わずもがな・・・の、ようですが・・・)
そして、もう一つ、無礼を承知で、献策をしてみる事にしたのです。
その・・・策・・と、いうのが・・・?)
孟:なんと・・・?隊を二つに?
奉:む、無茶な!ただでさえ、向こうの、 あの二将 には手を焼いているというのに・・・
統:そ、そうだ、それに・・・・しかも、軍を二つに分けるなど・・・
ア:はぁ〜〜〜〜ア! 情けないったら、ありゃあしないねぇ! これだったら、さっきの爺さんのほうが、まだよっぽど、ましってなもんさね!
それに、大体、誰が軍を半分づつ・・・・って言ったよ!!
奉:な、なんと・・・
統:ち、違う・・・のか?
ア:当たり前さね! ただし・・・隊を二つ・・・に、ってのは本当さ。
孟:ま・・・・まさか・・・・あんた・・・。
ア:おおよ・・・敵さんも、この闇夜を利用する・・・ってのなら、私達も、それを利用しない手はないだろう?(フフ・・・・フフフ・・・)
(そう・・・・この時、アダナが提案した、策の中身・・・とは、
一方で、敵の夜襲を迎え撃ち、そのもう一方で、少ない人員をして、敵の本営に奇襲をかける・・・と、言った事だったのです。)
孟:(むむぅ・・・)そ、それは分かるにしても、その決死隊・・・・一体誰が・・・
翼:その任・・・・このワシが仰せつかろう・・・・
孟:翼!!し、しかし・・・・お主は・・・
翼:フンッ! どうせ・・・ここにおる中で、その大役をできうるのは、この老骨のみぢゃ、老い先短いワシにとっての、よい墓場となろうて・・・
ア:だ――とさ! ヤレヤレ・・・若いのが揃いも揃って・・・とは、恥ずかしくないのかい?!あんた等・・・
奉:面目・・・・ない・・・・。
統:されど・・・ここに、それだけの人材がいない・・・と、いうのも、確かなのだ・・・。
ア:はぁ〜〜―――あ(ヤレヤレ・・・こいつは、相当な重症だねぇ・・・)よし、わ―――かった。
おい、爺さん、あんた一人を死なせやしない、この私が、一緒についていってやるよ。
翼:ワシの名は、黄翼漢升ぢゃ!! だぁ〜〜〜れが爺さんかっ!!
ア:おやおや、そいつは悪かったねぇ。
翼:それに、みすみす、若いもんを犬死させとうはない!ワシ一人で十分だ。
ア:おやおや・・・こんな美人のおネーさんと死ねるのは、本望じゃあないってかい?爺さん・・・あっははは!
翼:な・・・っ!ま、また・・・フンッ!勝手にせいっ!!
(なんと・・・この奇襲の別働隊に、志願した者こそ、先程、アダナと凄絶なまでの打ち合いを披露した、かの老将だったのです。
そして、アダナも、かねてからの手筈通り、この別働隊に志願した模様です・・・。)