第十一話;老舗『大黒堂』
<一>
〔今の今まで―――凄まじいまでの剣撃が交わされ、その勝負がついたあとでも、
新たなる“寝技”での展開がなされようとしていた中―――その途中で邪魔者が入ってきて、
仕方なく諦めた者・・・と、そのもう一方は――――〕
小:・・・・ねえ、清秀―――あの女(ひと)って、清秀のなんなの?
清:・・・ただの―――オレの究武の道を邪魔するだけの小悪党だ。
小:・・・・本当にそうなの? そういう風には見えなかったんだけど―――
清:・・・・本当なんです・・・信じてください〜〜。
(だから―――だからなんだ!! こんな風に誤解されるからぁ〜〜・・・)
〔どうやら―――小夜は、女としての鋭い直感が働き、否が応でも婀娜奈と清秀が、本当は『はなもはぢらう』関係なのでは・・・
と、思ってしまっていたようデス。
(でも?清秀は激しく否定をしているようですが・・・)
さて―――それから一夜が明け、またいつもの通りの普通の朝が向かえられまして・・・
今、ジルと綺璃惠が、元気よく高坂家から出て行くようです。〕
慈:行ってきま――――す!
綺:・・・・行ってきます。
〔――――さて・・・いつもの通りなら、登校する時間帯は違うのですが・・・
どうやらこの日は、ジルのほうからなにやら聞きたいところがあるらしく、
少しばかり登校の時間を繰り上げて、綺璃惠と一緒に・・・・ということのようです。
これは、そんな彼女達の登校風景――――〕
綺:・・・どうした、珍しいじゃあないか、お前がワシに時間を併せるなど・・・
何か―――訊きたい事でもあるのか。
慈:えへへ〜〜―――。
あの〜〜―――もしかして婀娜奈さん・・・って、あの男の人の事好きなんじゃないかなぁ〜〜なんて。
綺:やはりそうきたか―――まあ・・・あやつらは過去にも同じくして刃を交わしておる。
当時全寮制の小・中学校に通っておった、お前には初耳だった事だろうが・・・な。
その時に一方ならぬ感情も芽生えてもおかしからぬ―――と、云ったところだ。
慈:へえぇ〜〜―――やっぱそうなんだぁ・・・
それじゃあ、これで私への負担も、なくなるのかな。
綺:・・・・そんなことより―――ナゼに真に訊きたいことを訊かぬ。
慈:あっ――――・・・・ははは・・・ばれちゃってました?
〔ジルがわざわざ綺璃惠の時間に併せてまで聞こうとしていたこと・・・
それはやはり―――あの、婀娜奈と清秀の『子供は聞いてはいけないよぉ〜ん♡』な関係で、
清秀には申し訳ないけど、これで自分へのちょっかいも減る事だろう・・・・
―――と、いうことのようではないようで、そのことを・・・
ジルが本当に訊きたいことではないだろう―――と、綺璃惠より指摘を受けたところ、
そこで思い切って訊いてみる事としたようです。
では―――そのあること・・・とは??
それから暫らくが経ち―――自分の友人たちとの待ち合わせのために綺璃惠と別れる慈瑠華・・・
その・・・元気よく走っていく若キ獅子の後姿を見る綺璃惠は・・・
『あやつもまた―――修羅道を征く者か・・・血は、争えぬものよ』
―――と、嘯くのでした。〕