<五>
〔しかし―――婀娜奈女史、ジルたちと一緒に下校をしようなんて・・・どうして今更思ったのでしょうか。
それもどうやら―――・・・〕
婀:実はさ―――・・・今、海外へ行ってる私の知人から、私宛てのエア・メールが届いてね。
慈:え―――・・・っ、海外? ―――って、どこからなんですか?! アメリカ?それとも・・・ヨーロッパ??
婀:(フフ・・・)現金だねぇ〜〜ジルちゃんも―――
そうだねぇ・・・ちょっと今日の目的地着くまで時間があるから・・・そのエア・メール、
どこから来たのか当てっこしようか―――
慈:え・・・?(今日の・・・目的地?)
いい―――ですけど・・・それじゃあイタリア!
婀:ブッブ〜〜―――
慈:それじゃあ―――フランス?ドイツ? それとも・・・情熱の国スペインとか??
婀:ブッブッブ〜〜―――いづれもハズレえぇ〜〜
慈:ええぇ〜〜―――っ・・・ねぇ・・・陣クンも何か云ってよぉ・・・
陣:えっ―――ボクがですか? そうですねェ・・・じゃあ、紳士の国イギリスとか?
婀:み゛――――
陣:うぅ〜ん・・・それじゃあオーソドックスなところで、アメリカ・カナダ―――
ちょっとマイナー入って、メキシコ・ブラジル・アルゼンチンにペルーとか・・・?
婀:はあ゛〜あ゛・・・ちみたち、なぜに海外―――っつったら、欧米諸国しか出てこんかね?
慈:えぇ〜〜―――っ、でもぉ・・・・
婀:まあ―――ね、そりゃあたしかに、私は 海外 とも云ったけれども・・・
何も、海外・・・って、欧米諸国だけじゃないッしょ?
慈:え―――っ・・・それじゃあどこなんです?
〔昔の知己と会うため―――もしくは、その知己にジルたちを面通しするため・・・ともとれなくはなかったのですが、
そこで婀娜奈は、ある目的地へと向かうため、刻烽フ弟子二人を引き連れたようですが・・・
年頃のジルにしてみれば、そんなことより、婀娜奈宛てに来たエア・メールがどこからの発信なのか、興味は尽きぬようです。
―――と、そこで、婀娜奈はその目的地まで、そのエア・メールがどこから来たものなのか・・・を当てっこするようなのですが、
やはりジルや陣たちの年代には、ヨーロッパやアメリカ諸国に集中するようで・・・
でも、それは全くの当て外れ―――だったようデス。
――――と、いうことは・・・そう、少なくとも『欧米諸国』ではない・・・と、云う事。〕
婀:フフ〜〜ン、それじゃあ第一ヒント―――欧米諸国ではありません・・・
慈:(ガク・・・)それ―――って・・・今まで私たちが外した事を云ってるだけじゃないですかぁ〜〜
陣:でも―――他に、ロシアだとかポーランド・スイスなんかは云ってませんよねぇ・・・
慈:あ・・・っ、そっか―――
婀:陣クンのほうが偉っらぁ〜〜―――い、ジルちゃんダメダメぢゃあ〜ん。
慈:・・・悪かったですね―――
陣:〜〜―――と、いうことは・・・アジア諸国?
婀:フフ〜ン―――どことなく近付いてきたね・・・
慈:じゃあ―――中国?
婀:ブッブ〜〜――
慈:(う〜ん・・・)韓国?ヴェトナム?フィリピン??
婀:いづれもハズレぇ〜〜―――
陣:じゃあ―――タイ・台湾・シンガポール・ラオス・ミャンマーとか・・・?
婀:・・・・・・。
慈:えっ―――? どこか当たってたのがあったんですか??
婀:・・・いいや、ハズレ―――でもね、今のはものすごく近くなのがあったわよ・・・。
陣:へえぇ〜〜―――それじゃあどこなんです?
婀:じゃ・・・第二ヒント―――その地域は『中近東』です。
慈:『中近東』・・・・って、ここ最近話題の国々じゃあないですか!!
陣:・・・ですよねぇ―――つい数年前に“戦争”があっただけでなく・・・未だに治安が収まらないって云う―――
婀:(フフ〜ン♪)それじゃあ―――改めて・・・どこなんでしよう?
慈:サウジアラビア?
陣:イスラエル―――
慈:イラン―――
陣:イラク―――
婀:ビンゴぉ―――!!
慈:(・・・って)ぇえ〜〜―――っ?! まさに・・・あの戦争の・・・もう一つの当事国ですぅ?!!
婀:その通ぉ〜り♪
しかもその人ね―――元はスポーツ雑誌の記者やってたんだけど、元々血の気の多い人でねぇ〜
編集長とおおもめして、その会社辞めちゃったんだってさぁ―――
そぉ〜れが・・・どこでどぉ―――間違えたのか・・・今じゃフリーで戦場を股に掛けてる・・・って話しなのよ。
慈:せ・・・“戦場”??(また、よりによって―――)
陣:か・・・過激なんですねェ・・・怖くないんでしょうか??
婀:ンフフ―――怖くないんじゃない? 何しろその人も―――・・・
慈:その人―――“も”??
婀:・・・っと、その前に―――ついたわよ、目的地。
〔そこで婀娜奈は、二人が分かりやすくするために地域を特定して絞り込んでやったのです。
すると二人は、今度は『アジア諸国』を列挙してみるのですが・・・それでもダメ。
そしてここで―――最終ヒントとなる、もう少し地域特定をしてみたら、それはなんと今話題の『中近東』なのだそうで・・・
するとついに当たることとなってしまったのですが―――その国名を知るに及び、ジルも陣も思わず息をのんだのです。
なぜならば・・・ほんの少し前に―――その地域で大国とその国とが大規模な戦闘に入った・・・
兵士のみならず、その国の国民の老若男女問わず、他国のジャーナリストたちまでが戦火の犠牲になっていった・・・
そう―――そんな・・・最も危険な国、『イラク』から、その手紙は来た・・・と、いうのです。〕