四話;若き・・・・の悩み
<一>
〔学校の放課後、柔道部の部室にて―――互いに向かい合っている、二人の部員ありき・・・
一方は―――この部のエースである、守崎竜次。
方や一方は――――この部の“パシリ”君、那須野陣。
この・・・何もかも対照的な二人が、対決する破目になったのはナゼ?
その謎を解く鍵は、今、この試合の審判をしている者・・・・黒江崎婀娜那、その人だったのであります。〕
婀:始めっ―――!
陣:・・・・・。(じり・・・) 竜:・・・・・・。(じり・・・)
部:オイオイ―――冗談半分かと思ったけど・・・・
部:ついに、始まっちまったぜ―――?
部:あんのパシリも、身の程知らず〜〜―――ッつぅか・・・
部:でも・・・だったら、何で竜ちゃん、さっさと片してしまわないんだ?!
部:それも―――・・・そうだよなァ・・・。
直:(あの・・・パシリのヤツ、ここ二週間で“何か”を身につけやがったな?!
竜のヤツが、懐に入りにくがっているとは――――)
竜:(何だ―――・・・こいつは、一体ナニを教わりやがった。
このオレが、衿を取りに行くのを、こんなにも難しいと思ったのは―――これが初めてだ・・・。)
婀:(ふっふっ―――なぁ〜かなか・・・どうして。)
待てっ―――! 注意! 注意!
部:ああ―――ッ・・・注意だぜ?!
部:でも・・・なんでだ?さして変わりもしないのに・・・
婀:両者、中央によって―――始めっ!
陣:(高坂さん・・・)
慈:<いい? とにかく“間合い”だけは気を付けて―――・・・>
〔なんと―――・・・以外に苦戦を強いられているのは、エースの竜次の方のようで、
本来の陣の実力なら、開始10秒と経たずに、竜次に投げられて“お終い”―――
と、そう思っていたなら。
竜次が、陣の道着の衿を取りに行く、その僅かな動きを察知し、武術には必要な“間合い”というのを、微妙に開けていたのです。
(しかも・・・このときの陣の動作も、事前に、ジルに言って聞かされていた節もあったようで・・・)〕
陣:・・・・・。(じり・・・) 竜:・・・・・。(じり・・・)
竜:――――・・・・。
くっ・・・そぉお―――っ!!
ダダ――――ッ・・・・
陣:(あ――――・・・っ!?)
ド ド ド ドド・・・・ ズッデェェ〜ン!☆
婀:場外―――待てッ! 指導! 指導!
部:あぁ〜ッ・・・ついに指導だぜ??
部:流持参も、早くあいつをブン投げちまえばいいのに―――・・・
直:(バカ共が・・・そう簡単に行けれるものなら、もうとっくにケリは着いている。
それにしても・・・・追い込まれたもんだな。)
陣:ふぅ・・・ふぅ・・・。(よし、これからっ―――!)
竜:(な・・・に?! こいつの、目の色が・・・一変した??!)
〔そして―――今度も、また・・・陣は同じ動作。
そのことに相当苛立っていた竜次は、溜まらず猛突進し、陣ともども場外へ弾き跳んだようです。
それを見た婀娜那は、竜次のこの危険な行為に・・・そして、消極的な陣に、それぞれ――指導――を与えたのです。
ですが・・・陣の、本当の“闘い”は、これから・・・・それを、中央線までの去り際に見た竜次は、
今まで“パシリ”としてこき使われていた、しかも下っ端のこの柔道部員の“眼”が・・・
明らかに違うと感じてしまったのです。〕