<十一>
陣:あっ―――もうこんな時間だ、帰らなきゃ・・・
有り難う、綺璃惠ちゃん、君に話したおかげで、少しは続ける自信がついたよ。
綺:そう―――ですか。
――――あの、もしよろしければ、もう一度あの道場へいってみません?
陣:ええっ??
綺:(ニコ)不肖・・・このわたくしめが、もっとよい『師』を、あなたに紹介して差し上げますので・・・
陣:へぇ―――綺璃惠ちゃんの師匠か・・・。
(でも、この子は知らないんだよな―――ボクが高坂さんや、婀娜那先生から教えられたコト・・・)
でも―――まあ、いいや・・・また今度にするよ。
綺:いえ、ご遠慮なさらずに―――折角のご縁なんですから・・・。
陣:うぅ〜〜ん・・・しようがないなぁ―――それじゃあ行ってみるだけだよ?
綺:はいっ――――!♡
〔・・・・と、まあ、何とか陣を言いくるめた感の綺璃惠ちゃんなんですが・・・
この人が、『勧誘』に積極的になったのは、後にも先にもこれしかなかったようでして―――
だとすると・・・綺璃惠は、陣になにをみていたのでしょうか―――?
一方そのころの、『練武館』では――――〕
慈:(ほっ―――ふっ―――はっ――――)・・・せぇ〜〜ん―――と・・・・
ふぅ〜・・・指立て千回三セットおーわりッと。
さて・・・あらかた基礎はこなしたし―――今日はなにしょっかなぁ〜〜―――
あ、そうだ・・・ねえ、婀娜那さん。
婀:ンあ゛〜〜――――?!(士気低下)
慈:(ンぶっ!)な―――なんて顔してんですか・・・婀娜那さん。
婀:え゛〜〜〜いやぁ、実はねぇ――――あの那須野くんや竜次って子に悪いコトしちゃったかなぁ〜・・・
なんてさ、今、自己嫌悪に陥ってんの―――
慈:ああ―――あの件ですか・・・。
でも、仕様がないと思いますよ、一応私たちは陣君を守崎君に勝たせるために、“伎”を教えただけなんだから・・・。
婀:でも――――さ、今考えると、それだけじゃダメだったんだよね。
そいつが敗れた後のことまで気が廻らなかったんだよ・・・・。(はぁ〜)
慈:(婀娜那さん―――・・・)でも・・・もう陣君はここには来ないんだし―――そんなこといっても・・・ね?
婀:(ふふ・・・)それも、そうだね―――じゃ、久々に組み手でもしよっか。
慈:えへヘッ、実はそのつもりでお願いしようとおもっていたんです。
婀:(ふふっ―――)そう・・・じゃ初めよっか―――
〔ジルは、既定の“基礎”を須らくこなし、今日はナニをしようか・・・と、同じ武の求道者である婀娜那に意見を求めようとしたところ・・・・
どうやら婀娜那は、今回の事が余程応えたようでして、少しゲンナリとはしていたようす・・・
でも、ジルにしてみれば、そんなことは関係ないので、何とかして奮い立たせるために説得を続けたのです。
すると、果たしてそれが効いたのか、婀娜那が乗り気になったところで―――――〕