<十二>

 

陣:スミマセ――――ん、おじゃましま――――す

 

慈:あれ?こんな時分にお客?? もしかして、道場破りかしら・・・?

婀:まっさか―――ちょっと私が見てきてあげるよ。

 

  はぁ〜〜い何かご用――――(あっ!)那須野君!!

 

陣:あっ―――あの・・・お邪魔します。

 

≪ゴゴゴゴ・・・・≫

 

婀:ああ〜〜―――よかったあ・・・君あんなにされてタから、私心配しちゃったんだよ。

  うんうん、そかそか、よしよし―――――・・・・

(つか、なんだか『ゴゴゴ・・・』って、雰囲気が悪そうなエフェクトかかってんだけど??)

 

 

〔なんとそれは、『お客』や『道場破り』ではなく、那須野陣なのでした。(・・・・と、もう一人―――)

でも・・・そのもう一人は、上背がないせいか、陣の陰に隠れて見えなかったみたいなのですが〜〜・・・・

 

その人の持つ、ある特有な『波動』を感じ、婀娜那がそちらに眼を向けてみれば――――!!〕

 

 

婀:ほぉお゛お゛っ――――!!??(びっくぅ!)

慈:アレっ?!どうしたんですか?婀娜那さん・・・入り口付近で固まっちゃっ―――――

てえっ?!!(ドッキリ)

 

 

陣:あの―――・・・婀娜那先生に高坂さん?

どうしたんですか、ボク達を見るなり・・・・驚い――――

 

慈/婀:(パクパク)し――――師範!!

 

陣:えっ?!『師範』?誰が――――・・・・

 

 

綺:ヤぁ〜〜れヤレ・・・このド阿呆共が・・・。

  敵に勝つ事だけを教えよって、その後のフォローも儘ならんとは・・・。

 

  特に――――黒江崎・・・

 

婀:はっ―――はひゃいっ!

 

綺:お前・・・一番近くにいときながら、この坊やをほったらかしにしとくとは何事かね。

  部一番の実力者が破られたら、おのずと坊やに被害が行くのは判らなかったか―――?

 

婀:いっ――――いいえ・・・わ、私は敗れた方のメンタル面をぉ〜〜―――・・・

 

綺:ふん・・・まあ、いいだろう――――

  ときに・・・・師範代―――

 

慈:えっ・・・はっはいぃ――――

 

綺:お前―――この坊やになんと諭した・・・『弱者は武をするに能(あた)はず』―――と、ワシは聞き及んだが・・・?

 

慈:いっ―――いいえ・・・そ、それは言葉の“あや”というものでありまして・・・・

 

綺:この期に及んでいいわけか・・・はッ!見苦しい――――そうはおもわんか?んん〜〜??

 

慈:お・・・おっしゃらりるとほりで・・・

 

 

陣:(ええっ―――?!こっ・・・この綺璃惠ちゃんが・・・ここの師範??

  そ・・・それに―――婀娜那先生と、高坂さんがこうまで萎縮して・・・本当なのか??)

 

 

〔彼女達が、陣の背後に立つ存在を見て驚いた理由・・・

それは、鬼もその名を聞いただけで、裸足で逃げ出すという―――刻燉ャ・師範;塚原綺璃惠がいたのですから・・・。

(しかも?上の説明宜しく、鬼よりこわぁ〜〜い形相して立ってたようでして・・・)

 

それからは――――“お灸”の如くの説教の開始・・・なのですが、どうにも陣にはその様子に得心がいってないようです。

だって・・・それはそうでしょう、いい大人(教師)と、いわば上級生(高1)が、下級生(中三)からお叱り受けてんですから。〕

 

 

綺:(ふぅ・・・)全く――――なあ、陣君・・・ここはこのワシが謝るから、この二人の不徳を許してはもらえんだろうか?

 

陣:えっ――――?い・・・いや、とんでもない・・・。

  この二人には、ボクに『燕返し』や『空中巴投げ』を教えてもらったんだし・・・

  それに、むしろ今回の非は、竜次さんに勝って、少しばかり浮かれていた自分にもあって・・・・

 

 

綺:おぉ〜〜〜―――――い、聞いたかい?全く・・・どこぞの誰やらとは大違いだよ。

慈/婀:め・・・面目ない・・・。

 

 

綺:(ふっ・・・)なあ―――陣君・・・もし君でさえよければ、ここで総ての“伎”を習得したいとはおもわないかね?

陣:え・・・・ッええっ??!そ・・・それ――――って『入門』のお誘いなんですか??

 

綺:ああ・・・・そうだよ、せめてもの“罪滅ぼし”のつもり――――だよ。

 

  それに・・・君も言ってたじゃないか、『力』と『勇気』が欲しい・・・と。

  これは、それのせめてもの後押しだよ。

 

  それにな、人生には出来るも出来ないもない―――ようは『やるかやらないか』だよ。

 

陣:―――――・・・・わかりました。

  ボクも一応“男”です、やれるだけやってみます。

 

 

慈:(え゛っ・・・うぞ――――)ね・・・ねえ?陣君??

綺:しぃ〜〜はぁ〜〜ん〜〜だぁ〜〜いぃ〜〜?!

 

慈:(う゛ぃぃ・・・)は・・・・はい。

綺:余計な口出しはせんでよろしい。

  それより、『基礎』の方は終わったのかね?

 

慈:はいっ、ちゃんと終わりました。

  腹筋1,000x4本/片足あげのスクワット500x4本/腕立てと指立て1,000x3本づつ・・・。

 

陣:ええっ――― 一度にそんなに??(部でもそんなには・・・)

 

慈:・・・・そうだよ、ここはそんな風なの、だから――――ね?よく考えて・・・

 

陣:――――・・・でも、ボク頑張ります!女の高坂さんでさえ出来てるんですから。

 

慈:あっ――――そ・・・。(逆効果だよ・・・)

 

 

婀:(うぷぷっ♡)が〜〜んばってね? ジ〜ルちゃん

慈:婀娜那さん―――・・・。

 

婀:でも・・・よかった、綺璃惠さんのお蔭で、あの子立ち直ってくれて―――・・・。

  あのまま、イジメを苦に自殺考えてたらどうしようかとおもっちゃった。

 

  それに、あのままじゃちょっともったいなかったかな〜〜―――なんてね?

 

慈:はあぁ〜〜〜―――(いいよなぁ・・・この人は、完全に他人事で―――)

 

 

〔折角―――折角ジルは、ここの本当の修練が、余所のところよりも厳しいから・・・と伝えようとしたのです。

――――が・・・今、やる気満々になっている陣には届かぬといったところか・・・

 

さても、なんとも奇妙なる経緯で、この『刻焉xの門を叩く事となった=那須野 陣=

果たして、彼の運命やいかに??!〕

 

 

 

 

 

 

―――了―――

 

 

 

 

 

 

 

 

あと