<七>
竜:(フン・・・二度も、まぐれは―――)通用せんッ!! ぅおりゃぁああ―――!
陣:(来た―――)ゃぁああっ!!
―――ガッシ
陣:・・・・・。(ホ、ホントだ―――高坂さんの言った通り、守崎君・・・ボクの“燕”を警戒して―――)
竜:(このまま・・・中央で決着をつけてやる!!)
陣:(今だッ―――!)はぁあああっ!
直:(ナニ?今度は那須野の方が先に仕掛けた―――・・・?)あ・・・あれは!
竜:(“巴”か!!)なら・・・“軸”を払ってやる!! そりゃ―――・・・
ス カッ
(な・・・・にぃ??!)
陣:空中―――(グッ・・・)
・・・巴投げ!!
竜:ぅ・・・・おっ!?(ふわ・・・)
ズドドォ―――ン!
部:空・・・・
部:中―――
直:巴投げ!!
婀:(よ・しッ―――)一本!それまで―――
部:そ・・・・ンな―――
部:竜次さんが―――・・・?
直:(まさか・・・あの体勢で、しかも空中で打った―――だと?!!)
それも、今度のは『場外』などではなく・・・中央で―――とは・・・
婀:ねぇ―――大丈夫?
竜:あ・・・・ああ―――大丈夫だ・・・
婀:(フフッ―――)そう・・・それじゃあ――― 両者中央に―――お互いに・・・“礼”ッ!
―――ありがとうございました―――
〔そう・・・これはもう、まぐれや偶然などではなく、今、自分たちの眼の前で、“非力な男”が、“剛の者”を『投げた』―――と、いう事実だったのです。
そして、この“伎”こそ、慈瑠華が陣に教えた“真”の切り札・・『空中巴投げ』。
でも、しかし―――“巴投げ”を『空中で打つ』・・・とは?
巴投げ―――とは、ご周知のように、片足を相手の腹部にあてがい、そこから自分が下になって投げを打つ・・・と、いう伎。
けれど、竜次が意趣返しに―――・・・と、仕掛けようとしたように、一瞬片足になってしまうので、そこを狙われてしまうとひとたまりもないのです・・・
―――が、そこが実はこちらの“狙い目”、竜次が陣の軸足を払おう・・・と、したその瞬間!
陣のもう一方の片足も、竜次の腹部に当て、投げを打ったなら―――・・・?
もうその結果を語るまでもなく、目の前には『投げた者』と『投げられた者』がいたのですから・・・。
そして―――部の更衣室では・・・・〕
婀:フフフ―――・・・どうだった・・・かな?
竜:オレの負けだ・・・あんたの好きなようにするがいいさ―――
婀:じゃさ―――分け隔てなく、部活を愉しんでいこうよ。
“パシリ”だの・・・なんだの・・・そんなの関係なく―――さ。
竜:・・・・ああ。