＜八＞

 

 

〔こうして―――この女教師と、一生徒の間のわだかまりは解けた・・・のですが、

一方の、この部の主将と、その他の部員達の肚の中はいかが―――な、ものか・・・〕

 

 

部：ナスのやろう・・・大人しく隅の方でやってりゃいいのに―――

部：『全国』もうすぐなのに、竜次さん投げたりして・・・メンタル面に傷が行くじゃねェか―――

部：ゆるさねぇぞ―――・・・

 

直：・・・・・。

　　（あの・・・パシリのモヤシ野郎が、うちのエースを投げた？？！

　　こいつは一度、このオレも直に肌で感じたいもんだな―――・・・）

 

 

〔やはり―――タダ事ではすまなくなってきたようです・・・。

（それでも、陣は普段どおり、ここでの雑用をしているようです・・・・が）

 

そこへ、ここの主将である、直江秋次が、陣に近付いてきたのです――――〕

 

 

直：おい那須野―――

陣：あ・・・っ、しゅ、主将、な・・・なんでしよう―――

 

直：このオレも・・・一つもんでもらえんかな―――

陣：え・・・っ、主将とですか―――む、無理です、そんな・・・・ボクなんかが―――

 

直：そんなコト言わずになぁ―――。

　　おまえ・・・竜のヤツとやるのに当たり、なんかの秘密の特訓でもしたんだろ？

　　このオレにも、それを教えてくれよ―――

 

陣：（えぇ〜――ッ・・・）うぅ・・・いや―――そのぅ―――

 

部：おい、ナスビ・・・折角の主将のお願い・・・お断りするつもりなのか―――

部：生意気だぞ・・・てめぇ―――

部：なんなら・・・このオレら全員で、〆てやろうか―――

部：ああ・・・そうだなぁ、竜さんの敵討ちだ―――

 

陣：（そ―――そんな・・・）い・・・言いがかりですッ―――

第一、ボクと竜次さんの対戦は、純粋な勝負だったじゃないですか・・・

　　それなのに・・・・こんなのは私闘（リンチ）と変わりはないじゃないですか？？！

 

部：ナニをぉ〜〜――？

部：ンの野郎・・・ナスビのクセしやがッて・・・・

部：いっちょ前に小生意気な口、利くじゃねェか・・・・

 

直：おい・・・止めとけ―――

　　どうだ、那須野・・・こいつらをいっぺんに相手にするのがいいのか―――

　　それとも、オレ一人を相手にするのがいいのか・・・・どっちなんだ？

 

陣：うっ―――うう・・・。

　　（ど・・・どっちも選べないよ―――だって、ボクは“燕返し”と“空中巴投げ”しか知らないし―――

　　しかも、それも竜次君を焦らせて勝ったようなもんだし―――・・・）

 

 

〔それは――――やはり、このパシリの一部員の、今の“勝ち”を、妥当ではない・・・と、している、

いわば『やっかみ』のようなものでした・・・。

 

しかも、陣にしても、今回の『勝ち』は、あの婀娜那や慈瑠華の影の特訓のおかげで勝てたようなものだ・・・とも思っていたので、

それを、今度は一度に部員達と？？　部の主将と？？

 

でも・・・一向に返事をしない陣に、この連中は、別の解釈をして捉えたのです。〕

 

 

直：ほう・・・返事がない―――と、いうことは、『両方とも』・・・と、いうことか。

　　欲張りだなァ、お前―――（ククク・・・）

 

陣：えッ―――ええっ？？　そ・・・そんな―――

 

部：ひっひっヒッ―――なぁンだ・・・主将、そういうことだったンすか・・・

部：オぅ・・・ナスビ、お前も肚ァ括れや―――

部：さぁて・・・オレはどういう風にして、料理してやろっかなぁ―――

部：オイオイ―――オレの番がくるまで・・・もたしといてくれよ？

 

直：まあ―――待て・・・まづはオレからだ・・・。悪く思うなよ、お前等・・・

 

部：は―――はぁ・・・まあ、主将の直江さんスからねぇ〜〜・・・

部：そっかぁ――――仕方ねェな・・・

 

 

直：（フッフッ―――）さぁ・・・開始といこうか―――

ガッシ―――

　　そぅぅ・・・・ら―――！

ズバ――――ン☆

 

陣：う・・・わっ―――！　ぐっ・・・・ぅぅ―――

 

 

部：オオッ！出たっ！直江さんの『隅落とし』！！

部：ハハハ―――見ろよ、ナスビのヤツ・・・後頭部、強（したた）かに打って、モロ痛がってるぜ？？！

部：オイオイ、お芝居はいいから、さっきの凄いヤツ見せてくれよ―――！

 

陣：（む・・・ムチャだ！！だって―――ボクは・・・）

 

直：まだまだぁ〜〜！そらぁっ―――！

ズダダ〜〜―――ン！☆

 

陣：ぐッ―――ァあ・・・っ！！

 

部：オッほぅ―――次は裏投げと来たね！！

 

直：（なんなんだ？こいつは―――さっきの“隅落とし”にしろ、今の“裏投げ”にしろ・・・『受け身』の方は、全くのド素人じゃないか・・・）

　　全く―――わけわからんぜ・・・

 

部：えっ？！主将・・・今、何か？？

 

直：いや―――なんでもない・・・。

　　（それに―――こいつの今の目は、明らかな“負け犬”のモノだ・・・）

 

　　―――そんな奴に・・・竜のやつは、負けたのか・・・むぅんっ―――！！

 

部：いやったぁ〜〜――！お得意の体落とし―――！！

部：そこから仕上げの片羽締めだぁ〜〜―――！！

 

 

〔この部の顧問代理の、婀娜那がいない間に・・・ここの主将と部員達は、かわるがわるに陣をいたぶったのです。

 

しかし―――そんなこととは露ほども知らない婀娜那は、更衣室で竜次とニ・三言葉を交わして、

また道場の方へ―――と、戻るようなのです。

（でも、竜次はそのまま帰宅・・・やはり相当なショックは隠せないようデス。）〕

 

 

 

 

 

 

 

 

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