<九>
婀:ふふ・・・ヤレヤレ、あの子はどうやらわかってくれた―――と、
これで後は、那須野君の意識の問題ね。
ん〜〜―――・・・?おや?道場の方が騒がしい様だけど・・・どうしたのかな?
部:へっ―――なぁんでぇ!からっきし弱いじゃねえか!!
部:そんなお前が―――竜次さんを・・・あやまれっ!!
部:お前みたいな、ナスビ野郎が武術する資格なんかないんだよ―――こんちきしょう!!
陣:ううっ―――・・・ゴメン・・・ゴメンなさぁ〜〜・・・
部:今更謝って済む問題か!!
〔そこで繰り広げられていたのは、紛れもなき『私闘』(リンチ)でした・・・。
もはや戦闘意欲など、とうに失せた陣を、部員達はかわるがわるに足蹴にしたり、殴りつけていたのです。
―――と、そこへ・・・この柔道場の中が騒がしくなったのを認めた婀娜那が、何事?と思いながら入ってみれば・・・〕
婀:あっ―――!なにやってるの!!君達!
部:あっ・・・(ヤベ)
婀:大丈夫?!那須野君!!
――――・・・ナゼ、どうしてこういう酷い事をしたの・・・それに、部長の君がいながら、どうしてこういうことを許したの?!!
直:・・・・こいつも悪いが―――あんたも悪いんだよ・・・。
婀:なんだってっ―――?!!
直:(チッ―――・・・)できもしねえクセに、少し“秘伝”をかじっただけで強くなれる・・・
そんなことされたらなぁ、今まで10年間、汗水たらしてきたおれ達はガマンならないんだよ!
婀:・・・・・そう、それがお前の言い分か―――(ゆらぁ〜・・・)
たった―――たったそれしきの理由で!お前達はこの子に、ここまでの事をして来たのか・・・・(ふぅぅぅ・・・・)
直:(・・・なんだ?この先公―――急に瞳の奥の色が・・・・変わりやがったぞ?!)
陣:(ピク!)あっ・・・あぁ―――
婀:(はっ!!)き―――気がついたのね?那須野君・・・
陣:あぁ・・・セ、先生〜・・・ぐっ――――くううぅっ!!(タダッ―――)
婀:ああっ―――那須野くん!!(わ・・・私、余計な事をしちゃったのかなァ・・・)
〔そこで婀娜那が見た光景は、皆からの仕返し(リンチ)を受け、半ばぐったりとしている陣が・・・
それを見て、急遽陣の元に駆けつけ、事の次第を改めるのですが―――・・・想いも寄らぬ反論に、婀娜那は自分の本性を危うく出しそうになったのです。
そして、婀娜那の・・・その“殺気”にも似たような『気』に、眼を覚ましてしまう陣。
このあと―――彼は、まるで逃げるようにして、その柔道場を去ったのです。
(・・・が、やはりその心情のウラには、この美人教師に対し、後ろめたい気持ちがあったから・・・
つまりそれは、自分を柔道部のエースを投げれるまでにしてくれたのに、他の連中に難なくしてやられたことや―――
“女には見せられない顔”を見られてしまったからに違いはなかったようデス。)〕