第六話;訪問者
<一>
〔自分を助けるために、まるで“疾風”のように現れ、“疾風”のように去っていった、麗しの人がいる・・・
その女性の事が気になり、授業中も―――況(ま)してや部活も―――家の道場の稽古もままにならない、
そんな女子高生がここにいる。
その女子高生とは、橋川財閥のご令嬢・・・橋川小夜(はしかわさや)。〕
小:(黒江崎―――婀娜那さん・・・かぁ。)
〔しかし―――去り際に、その人の財布と、その中に入っていた免許証のおかげで、
自分を寸でのところで、救ってくれた麗しの人の名が・・・知れたのです。〕
小:(一体、どこにすんでいるんだろう・・・。
免許の住所には“東京”―――ってあるけど・・・)
ちょっと―――調べてみる必要がありそう・・・かな。
〔どうやら彼女は、自分を救ってくれた・・・そのお礼に、何としてでも婀娜那を探し出し、
彼女が落としたこの財布と免許証を返した上で、どこであの素晴らしい“武術”を修めたのか、
もし、婀娜那でさえ良かったら、自分の家にある剣道場で、自分の師でもある青木清秀とともに教えて欲しい・・・
そうも思っていたようです。
では、その一方で―――ご本人さんは・・・と、いいますと。〕
婀:(はあ゛あ゛あ゛〜〜・・・)つ、ついてないよねぇ〜〜、まさかダブルでこんな事になっちまうなんてぇ―――・・・
〔一体―――ナニが“ついて”いなかったのでしょうか。
それは―――・・・〕