<八>

 

 

〔すると、そこへ―――??〕

 

ガラ――――・・・

 

綺:・・・・失礼致します――――

 

 

〔おや、綺璃惠ちゃんではないですか―――ひょっとしてこの娘も、婀娜那を慰めに??

いえ・・・それはどうやら違ったようです、なぜならば―――大事そうに何かの本を抱えていたのですから・・・〕

 

 

綺:―――――・・・。(てくてく)

  あの・・・藤崎先生、これお借りしていた『史記』です。

  どうもありがとうございました。

 

藤:(藤崎;鷹翼高校歴史の担当)

  おや―――もうこの本を読破したというのかい。

  凄いねぇ――――・・・そういえば君、中等部の娘なんだろう? うちの娘とそんなに変わんないのに、いや―――大したもんだ。

 

綺:いえ・・・そんなに褒められましても―――

  ただ・・・わたくしは、古代の中国の歴史に関心が大であるのでして・・・

 

藤:ふぅ〜〜―――ん・・・・それで、まだなにか??

綺:あ、はい―――

  もしよろしければ、今度は『伯夷伝』をお貸し願えれば・・・と―――

 

藤:『伯夷伝』ねぇ・・・・・ああ、いいよ―――ほら・・・。

綺:有り難う御座います――――(ペコリ)

 

藤:ふふ・・・いや、それにしても『伯夷伝』とは―――

  君、もしかすると“列伝”モノも読破するつもりなのかい?

綺:出来れば――――と、思っております。(ニコ)

 

 

〔そう、彼女が訪れたのは、高等部の歴史の先生のところ―――

しかも、第一話より読み続けていた『史記』が、このほど読破できたから返しに着たようで、

そのついでにまた新たに一冊借りていくというのです。

 

――――と、ここで、職員室のもう一隅を見た彼女は・・・・〕

 

 

綺:――――ところで・・・あそこの机の上に、ダウンされておられるお方がいますようですけど・・・

藤:ああ――――古典の黒江崎先生ねぇ〜〜〜・・・・。

  彼女体調が悪いらしいんだ、それで今日の授業ままならないんだって。

 

  まあ―――気休めなんだけど、そんなに悪いんじゃあ家でゆっくりしてればいいのにねぇ・・・。

 

綺:・・・・それで、生徒のお二人さんが、彼女を励ましている―――だ、なんて・・・

  師弟とは斯くありたいものです―――よ、ね。

 

藤:(え?)あぁ・・・・うん、そうだね――――

綺:それでは―――これ、お借りいたしますね。

 

 

〔どうやら、婀娜那が自分の机の上で 真っ白ケ になっているのを確認したうえで、

彼女に早く元気になってもらおうと励ましている、ジルたち二人を褒め称えているようであります。

 

――――が・・・では、そこで綺璃惠は、職員室からの去り際に、何をしたか・・・と、いうと――――〕

 

 

慈:(はぁ〜〜〜・・・・こりゃ本格的にダメだわ・・・・)(つんつん―――)

  ――――ん?どうしたの、陣くん。

陣:こ―――高坂さん・・・あ、アレ―――(クイックイッ)

 

慈:(へ??)なに、アレ・・・って――――し、師範!!(ゴクゥ〜リ)

 

婀:(え?師範??)

  ――――――う゛っ!え゛っ!!

 

綺:黒江崎ィィ〜〜〜――――ワシは忘れてはおらんぞぅぅ〜〜〜

抹茶小豆の・・・・怨みをぉぉ〜〜〜!!!(呪怨)

 

婀:――――――・・・・。(ンガ・・・)

慈:――――――・・・・。(ひゅ〜)

陣:――――――・・・・。(ひゅ〜)

 

綺:――――・・・・・。(ぷいっ―――! てくてく・・・)

 

 

〔な・・・なにをするために、わざわざその近くまでいったのかと思いきや―――

と、いうか、忘れていませんでしたねぇ・・・自分の好物を忘れてくれた事を・・・。

(しかも、確実に“トドメ”を指す辺り――――・・・)

 

――――と、いうわけで、これをされてしまっては、さしもののジルでも打つ手がなく、

婀娜那に、二・三言葉をかけたあと、陣と一緒に、まるで逃げるようにして職員室を後にしたようです。

(このあと・・・婀娜那は、宜しく早引けをしたというのは、皆さんの想像に難くないことでして・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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