<四>
〔それはそれとして―――今、まさに・・・ジルが、バッター・ボックスに立つようです・・・。〕
慈:―――よろしくお願いします・・・。
審:プレイ―――!
投:(フン―――・・・鷹翼め・・・今更になって代打とは―――
相当に追い詰められている証拠ね。
一打逆転のつもりだろうけど―――こいつを打ち取れば、もう反撃は出来ないはず・・・。)
慈:――――・・・。
〔色々な思惑が交錯し、互いに対峙する両者―――
そして、ジルがバットを構えた・・・その時―――〕
小:(ふぅ〜〜ん・・・あれっ―――?)あの・・・構え―――
まるで、刀を構えているように見える―――・・・
〔小夜が、ジルの打席の構えを見たとき、とても奇妙に感じたのです。
―――と、いうのも、まるでバットを・・・武士が刀を構えているときのように―――・・・そう見えたから・・・。〕
投:(ザ―――・・・ッ)(むんっ―――!!)
ピッ―――・・・―――――・・・・
(ほっ―――!):慈
ズ パァ〜〜―――ン☆
審:スッタラァ〜―――イク!
瑠:ぁあ〜〜―――っ! ジルさま早ぁ〜〜い! もっとよく球、見てくださぁ〜〜―――い!!
小:(こ―――これは?!! 違う・・・今のは決して早くなんかはない、寧ろ振り始めは遅いほう・・・。
なのに、そう見えるのは、振り切るのが異様に早いんだ!!)
投:(な―――何なの・・・今の・・・完全に振り遅れだと思っていたのに―――)
慈:(フフフッ―――・・・)中々・・・いい球だったよ。
けど・・・次こそは―――当てる!!
投:(なんてヤツ―――・・・えっ?一球見送れ??
イヤ・・・ダメよ、今ここでこいつを打ち取らないと・・・)
捕:(いや―――・・・一球見送るだけよ・・・焦らないで―――。)
投:(・・・判った―――)
ザ―――・・・ ピシュッ――――・・・
(むんっ―――!):慈
キ ィ ン ―――
審:ファ〜〜・・・ル
瑠:ああ―――っ!だめですよう!ジル様ぁ〜! あんなクソ球振っちゃあ!!
小:(あんな―――・・・敬遠バレバレのまでも、当てた・・・なんという動体視力―――)
投:(ま―――まさか・・・今のを当てるなんて・・・こいつには逃げも通用しないの??!)
慈:(フフッ―――)今ので・・・逃げたつもり? らしくなんかないよね。
もっとさぁ―――・・・堂々と勝負しようよ。
投:(くぅっ・・・こうなったら――― アレ で勝負するしか、ないようね。)
捕:(“アレ”・・・仕方ないわね、全国まで温存しておきたかったけど・・・
ここで、これほどのヤツが出てくるなんて―――・・・いいわ、 アレ でいきましょう!!)
〔たった―――・・・たった 二球 で、相手校のバッテリーを本気にさせたジルのスイング・・・。
そして、そのバッテリーは、全国大会までの秘密兵器にしておきたかった、ある球を使うことにしたのです。
その球―――とは・・・打者の手元で急激に沈む球・・・野球でも、多くの投手が“決め球”としてよく使用しているという・・・〕
=フォークボール=
投:(全国に行くのは―――・・・)
捕:(私たち―――!!)
ザッ――― ピシュッ―――――
慈:(あの回転―――・・・落ちる!!)