第八話;過去の確執
<一>
――そこは・・・その街にある、特異な場所でした・・・――
清:すいませ―――ん! ごめんくださぁ〜〜---い!!
――その家構えは、まさに時代劇に出てくる武家屋敷そのものであり・・・――
清:あの・・・どなたかいらっしゃいませんか――――?!
――また・・・羅刹(オニ)たちの棲まう処でも、あったのです・・・――
清:・・・誰も―――いないのかなぁ・・・
母:はいはいはい――――・・・ちょっと待ってくださいな・・・。
あら?あなたは―――?
清:あ・・・は、はい―――! ボクは青木清秀というものです。
ある人からここの住所を聞いてやってきました。
母:あら、そう?! じゃ、ちょっと待ってくださいね、道場の人呼んできますから。
清:えっ・・・道場??
〔当時、清秀の相手をしたのは、ほかならぬジルの母でありました。
(まあ・・・そのことは、清秀自身後々になって判ってくる事なんですが―――)
その母も、清秀の出で立ちを見、この青少年が何の目的でこの家に来たのか―――を、察知したのであります。
このとき―――清秀・・・18歳の夏、未だ好きな女性のタイプも判らぬ、純情な刻でした・・・。
それからして―――母に呼ばれ、その場に現れたのが・・・〕
婀:はぁ〜〜〜い・・・なぁに――――(チョイ、ご機嫌斜め)
清:(えっ?あれっ??)じょ・・・女性??
婀:(ぁん?)ナニよ・・・悪い―――ふわぁ〜・・・(ポリポリ)
―――ンで・・・なんのようなの。
清:(は―――はは・・・な、なんかの間違いだよな? こんな女の人が、武道してるだなんて・・・
そ、そうだ―――きっとお手伝いさんか何か・・・)
あの―――とある記者の方から、ここの場所を教えてもらって・・・
婀:はあ゛? 汽車―――? ・・・って、煙を噴き出す・・・あの??
清:い―――いえ、乗り物の汽車ではなくて、新聞や雑誌の記者なんです。
婀:冗談よ―――知ってるわよ、ンな事・・・ちょっと面白半分にからかっただけよ―――
清:は―――はは・・・そうですか・・・
婀:――――んで?その・・・なんて記者なの?ここを教えたっての。
清:(え・・・)あっ!しまった―――その人の名前を聞いとくの忘れてました・・・
婀:はあ〜? 間抜けかい―――あんたは・・・
どれ、その―――住所を書いたメモ見せて・・・
清:あ、はい―――これです。
婀:――――・・・・はぁ〜〜ん・・・なぁるほど・・・誰かと思いきや―――
いいわよ、あがんなさい―――
清:(え・・・?)は―――はい。
〔このとき――― 一青少年の相手をしたのが、当時をしてこの家に入り浸っていた、黒江崎婀娜奈だということは、想像に難くなかったでしょう。
それにしても、このときの婀娜奈さん、ちょいとご機嫌斜め―――で、しかも、胸元もちょっとはだけちゃって・・・
大胆―――と、いうべきか、そのことに気に掛けていない清秀も、陣と同じく朴念仁なのか・・・
―――と、そう思いきや??〕
清:(そ・・・それにしても―――恥ずかしくないのかなぁ・・・この女(ひと)。
少し・・・激しく動いたら、先っぽのほうが見えそうじゃないか・・・)
〔陣君ほど―――ではなかったようですな。(苦笑)
でも、目のやり場にはさすがに困っていたみたいで、余り胸元のほうへは、目線は行かせないようにはしていたようです。〕